第25話 それぞれの想い ~決戦前夜2~

「気持ちは嬉しいが、お前等、俺達がする事がわかってるのか?」

 ソルドが厳しい顔でデイブ達に言うとデイブはあっさりと答えた。

「ガイザスに攻め入るんですよね」

 デイブの答えを聞き、ソルドは更に顔を巌しくした。

「それがどういう事なのかだ。ロレンツ王の仇討ちという大義名分はあるものの、やる事は人殺しだ。もちろん返り討ちに合う事だって考えられる」

 ソルドはデイブ達に死んでも、殺しても欲しくは無かった。デイブは顔を少し歪めながら言い返した。

「正直言って怖いですよ。でも、行かなかったら俺達一生後悔すると思います」

「だが、もしもの事があったら俺はお前等の親御さんに合わせる顔が無い」

「大丈夫ですよ。危なくなったらシルフに逃がしてもらいますから」

 渋るソルドにステラが笑顔で言い、エディもそれに続いた。

「そうですよ。ステラ様だけで無くボクだって風使いなんですから」

「なるほど、空飛んで逃げたらガイザスの連中もどうしようもないか……だが、くれぐれも無理するんじゃないぞ。あと、攻撃は俺達に任せてお前等は防御に徹するんだ。いいな、お前等に人を殺して欲しくないんだ」

「俺は大丈夫ですよ。親衛隊に入ろうと思ってるんですから、いつかは人を殺める日がくるかもしれない。それが今日だってだけの事ですから」

 デイブ達の腹は決まっている。何を言ってもそれは覆る事は無い。ソルドはそれを認めざるを得なかった。

「わかった。決行は明日の夜だ。ルフトから援軍もこっちに向かってるからな。今日はゆっくり休んでくれ。宿代ぐらいは出させてもらうぜ」

 ソルドは宿屋の主人に空いている部屋を尋ねに部屋を出た。数刻後戻ったソルドの手にはルームキーが三つ握られていた。

「今、二人部屋しか空いてないんだそうだ。デイブ、エディ、一応聞いてやるぜ。人生最後の夜になるかもしれん、誰と一緒が良い?」

「俺は……ミレアと一緒が良い」

「ボクも……シーナと一緒に居たい」

 ソルドの問いにデイブとエディは言いにくそうにしながらもはっきり答えた。

「だよな。野暮な質問して悪かったな」

 ソルドはミレアとシーナに向き直ると真面目な顔で二人に言った。

「さて、お嬢さん方。コイツ等はストレートに自分の気持ちを口にしたぜ。もちろん嫌ならはっきり言わなきゃダメだ。どうする?」

「私もデイブと一緒に居たい」

「私もエディとなら……」

 二人は震える声で、しかしきっぱりと言い切った。

「デイブ、エディ。良かったな。だが、もしお嬢さん方を傷付ける様なマネをしたら……ガイザス殺る前にお前等殺っちまうからな」

 笑顔で言うソルドだったが、その言葉にぞっとして青ざめるデイブとエディ。

「そんな顔すんな。傷付けなきゃ良いだけの話だからよ。とりあえず、お前等だけでメシでも食ってこいよ」

 ソルドはルークにひと握りの金貨を渡した。

「兄さん、コレは?」

「ガイザスの金貨だよ。心配すんな、本物だ。こう見えても俺はちゃんと準備してたんだよ」

「ありがとう兄さん」

 金貨を受け取ったルークは宿屋の近くの食堂へとデイブ達と向かった。その道すがらルーク

がステラと話す。

「それにしても、よくゼクス様が許してくれたね」

「何の事ですか?」

「いや、ガイザスに攻め入る事だよ」

「お許しなんかもらってませんよ」

「へっ?」

「お父様が許して下さる訳無いじゃないですか。だから黙って来ちゃいました」

「本当に?」

「はい」

「うわあっ、こりゃお城は大騒ぎだよ……」

「大丈夫ですよ、ちゃんと置き手紙はしておきましたから。『ルークのところに行って来ます』って」

「ゼクス様、まさかボクがガイザスに居るとは思ってないんだろうな」

「おそらくは。ドルフにも話して無いんでしょう?」

「そりゃそうだよ。ルフトの人間だけで事を運ぶつもりだったのに……アルテナとガイザスの戦争に発展しちゃったらどうしよう」

「そうならない様に頑張りましょうね」

 ルークと一緒なら何も怖くない。そう言わんばかりの笑顔をステラは見せた。


 食後のコーヒーを口にしながらシーナがルークに詫びる。

「ごめんなさい、勝手な事しちゃったかしら……」

「何言ってんだよシーナ。ルークの方が先に勝手な事やりやがったんだぜ」

 怒った様なデイブ。だが、もっと怒った顔でミレアがルークに向かって言った。

「そもそもあなたたち無茶よ。攻撃ばっかりで、回復の事全然考えて無いでしょ」

「攻撃は最大の防御だって言うからね」

 あっけらかんと答えるルークに呆れるミレア。

「そういうのは自殺行為って言うのよ」

 ステラが心配そうな顔で言う。

「そうですよ。怪我したら手遅れになる前に治癒魔法受けて下さいね」

 ルークは聞こえるか聞こえないかぐらいの声で呟いた。


――そんな余裕があれば良いんだけどな――


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