第16話 デイブとミレアはバカップル? ~エディの告白2~
「お腹空いてきたわね。そろそろお弁当、いただきましょうか」
水から上がり、荷物を広げる。ステラの作ってきた弁当はサンドイッチ。
「あれっ このサンドイッチ、見た事がある様な……」
「そうね。何かしら、この既視感は」
「兄さんのサンドイッチだ!」
「あらっ わかっちゃいました? 以前のアレも実は私が作ったんですよ」
いたずらっぽく笑うステラ。
「やっぱり。兄さんが作ったにしちゃ、芸が細かいと思ったんだよな。ゴメンね、メイティ」
「いえいえ、ソルドさんには父がお世話になってますから」
「メイティのお父さんがソルドさんのお世話にって?」
デイブが不思議そうな声で聞く。
「ええ。私の父はお城に住み込みで働いているんですよ」
「それじゃメイティも?」
びっくりした顔のミレア。
「ええ。私の家族も一緒に住まわせてもらってます」
「凄~い!じゃあ、ステラ様の姿なんかもよく見るわけ?」
「ええ。しょっちゅう見てますよ」
「いいなぁ~~~~ 私もステラ様と会ってみたいなぁ」
今話をしている相手がステラ王女だとは知らずに、羨ましそうに言うミレア。
「あ、あの……私もお弁当作ってきたの。よかったらコレも……」
恥ずかしそうな声のシーナ。おずおずと差し出した弁当箱にはステラの作った豪華なサンドイッチとは対照的な、おにぎりと卵焼き、唐揚げにタコさんウィンナーといった家庭的な料理が詰められていた。
「わあ、嬉しいな。いただくよ!」
いち早く喰いついたのはもちろんエディ。
「私のと交換ですね」
ニコニコ顔のステラ。
「でも、メイティの綺麗なサンドイッチと並べられると恥ずかしい……」
「そんな事無いよ!とっても美味しいよ!」
おにぎりを頬張りながらエディが言うとデイブもおにぎりに手を伸ばす。
「どれ、んじゃ俺もひとつ……おっ本当に美味いな」
「そう言ってもらえると嬉しいな。じゃあ私はメイティのサンドイッチをいただきますね」
シーナはサンドイッチを手に取り口に運ぶ。
「美味しい! こんなサンドイッチ初めてだわ」
「この唐揚げも美味しいわよ。それにしてもシーナったら大袈裟ね。」
シーナの感嘆の声にステラが笑顔で返す。
右手にシーナのおにぎり、左手にステラのサンドイッチを持ったデイブがちらっとミレアを横目で見ながら言った。
「メイティもシーナも良い奥さんになれるなあ」
「な、なによ! 私だって作ろうと思えば作れるんだからね!」
ミレアがムキになって噛みついた。
「えっ、そうなの? ミレアが料理してるとこなんて見た事無いけど」
目を丸くしてが突っ込むエディ。
「うっさいわね。じゃあ今度は私もお弁当作ってくるわよ!」
「はっはっはっ 期待しないで待ってるぜ」
思わず口走ってしまったミレアにデイブは言った。もちろん言葉とは裏腹に少しは本当に期待しているのは言うまでも無い。
広げられた弁当は結構な量だった。単純計算でステラが6人分、シーナが6人分合計12人分である。しかし、せっかく女の子が作ってくれた弁当を残す訳にはいかない。ましてルークにとっては王女様が、エディにとっては好きな女の子が作った弁当である。とは言え物理的な限界というものは当然訪れる。徐々に口数が少なくなり、食べるペースが落ちてくる。
「ちょっと量が多すぎるわよね。無理して全部食べなくても良いんですよ」
シーナが微笑みかけるが
「いや、せっかく作ってきてくれたんだから。残さずいただくよ」
エディが頬張っていたおにぎりを飲み込んで言うが、その顔には脂汗が浮かんでいる。見かねたステラが提案する。
「とりあえず今のところは残しておいて、後でお腹が空いたらまた食べたら良いんじゃないかしら?」
「そうね。お腹もいっぱいになったことだし、もうひと泳ぎしましょうか」
賛同するミレアに、デイブの一言がチクリと刺さる。
「今日は溺れんなよ。毎回ウンディーネが助けてくれるとは限らんぜ」
「わかってるわよ!」
怒っているのか恥ずかしいのか顔を赤くするミレア。
「じゃあ行こう、シーナ!」
エディが手を差し出すとシーナはちょっと恥ずかしそうな顔をした後、にっこり笑ってその手を取った。
「私たちも行きましょう!」
ステラがルークの腕を取って走り出す。取り残されてしまったデイブとミレア。顔を見合わせると、どちらからともなく笑い出した。
「俺たちも行くか」
「ええ」
デイブが差し出した手をしっかり握るとミレアは駆け出すと、デイブも引っ張られる様に走り出す。二人が水際まで来た時、ミレアは急にくるっと急転回するとデイブの手を思いっきり引っ張った。振り回され、水に足を取られるデイブ。だが、デイブもただでは転ばない。ミレアの手を引っ張って巻き添えにする。二人はもつれ、転がる様に水面に倒れ込んだ。
「ぶはっ」
息と共に水を吐き出しながら立ち上がるデイブ。
「この~やってくれたわね」
凄むミレアにデイブも負けてはいない。
「仕掛けてきたのはお前だろうが」
「………」
「………」
一瞬の沈黙。
「はっはっはっ」
「あはははは……」
二人、顔を見合わせて笑う。そしてミレアはバシャバシャと水をかけだした。
「おっ やるか?」
デイブも負けじと応戦する。
「えいっえいっ」
バシャバシャ
「負けるか!」
バシャバシャ
「このこのっ」
バシャバシャ
……絵に描いた様な馬鹿ップルの姿がそこにあった。
「やっぱり仲が良いんですね」
ステラが言うが、
「腐れ縁よ!」
「腐れ縁だ!」
いつもの様に声を揃えて言う二人。
「まったく、いつになったらみんなの前でも素直になるのかなぁ?」
ルークの言葉にステラが応える。
「これも一種のツンデレじゃないでしょうか?」
楽しい時間は早いもので、そろそろ帰らなければならない頃となった。
「覗いたら殺すからね」
来たときと同じ言葉を残し、タオルと着替えを持って茂みに消えていく三人の女の子たち。ルークとエディも着替え始める。デイブも濡れた海パンを履いて帰るのは嫌だったのだろう、荷物をガサガサ探り、タオルを取り出すと重大なミスを犯した事に気付いた。
「パンツ忘れた……」
行きに服の下に水着を着てきた者のお約束である。
「今日は楽しかったわ。でも、何故いきなり私なんかを誘ってくれたの?」
着替えながらシーナが聞いた。もちろん薄々はわかっているのだろうが、最後の最後に確かめておきたかったのだ。
「またまた~ わかってるくせに」
「エディの態度を見てたら一目瞭然ですよね」
ミレアとステラの言葉に嬉しそうに、照れる様に微笑んだシーナ。
「それであなたたちはエディに協力する為に?」
「うーん、確かにまあ、協力してくれとは言われたんだけど……ねえ?」
あっさり白状したミレア。男からすると酷い話である。
「そうですね。無理にエディを持ち上げて二人をくっつけたところでうまく行くとは思えませんからね。だからみんな普段通りでしたよ。シーナと学園では少し会話をする程度だったけれど、今日一緒に遊んでみたら凄く楽しかったわ」
「そう言うこと。これからは学園でも仲良くしましょうね」
「……うん、ありがとう」
シーナが嬉しそうに言うとミレアが核心に迫ろうとした。
「で、実際のところ、どう?」
「ねえねえ、どうなの?」
ステラも目をキラキラさせている。
「どう……って?」
「エディのコトに決まってるでしょ」
「やっぱりそうなるわよね。今日はみんなエディの為に集まったんだものね」
「あ、勘違いしないでよね。確かにきっかけはエディだけど、メイティが言った通り無理して付き合ってもうまくいくワケ無いもの。断る時はきっぱり断らないとダメよ」
「そうそう。きっかけはともあれ私達はもう友達なんだから。女の子は女の子の味方よ」
美しい女の子の友情。男にとっては迷惑な話である。
その頃、ルーク達野郎共は着替えを終え、帰り仕度もすっかり済ませて女の子たちが着替え終わるのを待ちわびていた。
「アイツ等遅せぇな」
「お待たせ~」
「遅ぇんだよ。着替えるのにいったい何分かかってんだよ」
「女の子にはいろいろあるのよ」
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