第15話 エディの気になるあの子はスク水 ~エディの告白1~

 精霊祭が終わり、翌日の終業式は退屈だった。デイブとミレア、そしてエディにとって唯一の救いはメイティが元気に姿を現した事だった。

「あらっ、デイブとミレア、雰囲気変わったわね。もしかして……」

 王女と言っても女の子。二人の空気を敏感に察知した。

「ま、まあな。でも、何があろうと俺達は俺達だ」

「なにがあっても私達は私達よ」

 デイブとミレアが同時に言う。

「やっぱり最高のコンビネーションだね」

 ルークが言うと、やはりほぼ同時に二人が言う。

「腐れ縁だ!」

「腐れ縁よ!」

「やっぱりデイブとミレアはそうでなくちゃね」

 ステラは笑いながらも、その瞳の奥には二人が羨ましい、ルークに自分を思い出して欲しいという気持ちが潜んでいた。

「それよりエディ、ちょっとこっち来い」

 デイブがエディを教室の済に誘う。

「わかってんな。俺はビシっと決めたぞ。次はお前の番だ」


 終業式が終わり、エディがクラスの女の娘に声をかけに行った。

「おっ、相手はシーナか。良い趣味してんじゃねぇか」

 こっそり観察するデイブをミレアが嗜める。

「覗き見は趣味が悪いわよ」

「だって、気になるじゃんかよぉ」

「はいはい、行くわよ」

 ミレアに引きずられる様にその場を離れるデイブ。


 数分後、エディはニコニコしながら戻ってきた。

「おっけーだって」

「そっか、良かったな!」

「ええっ、いきなりおっけーもらったの?」

「うん、明日みんなで湖に行こうって誘ったらバッチリだったよ」

「おい、ちょっと待て。もう一回言ってくれ」

「だから、明日、みんなで湖に遊びに行こうって」

「みんなって?」

「もちろんデイブとミレア、ルークとメイティ、そしてボクとシーナだよ」

「なるほど、いきなり二人っきりじゃなくてグループで遊ぶ事から始めようって作戦ねって……って、明日?」

「そうなんだ。みんな協力してくれるよね」

「はいはい、わかったわよ。湖には行くつもりだったしね」

「そうだな、それが明日になっただけの話だからな」

 エディの真剣な顔にデイブもミレアも断れる訳が無かった。もちろんステラも応援する。

「そうね。エディ、頑張ってね」

「ありがとう。メイティも頑張ってね」

「えっ、 私?」

 ルークに聞こえない様エディがステラに耳打ちした。

「うん。ルークとうまくいくと良いね」


 そして翌日、夏休みの初日である。朝から夏の日差しが肌を刺す。集合時間は九時。待ち合わせ場所に一番に着いたのはもちろん気合の入りまくっているディ……では無かった。

「シーナ!」

「あら、おはようエディ」

 現在時刻は八時四十分。

「随分早いね」

「みんなを待たせちゃったら悪いと思って。せっかく誘ってもらったんだもの」

 やっぱり良い子だな、と思うエディに微笑みながらシーナは言った。

「エディも随分早いのね。早く来ておいて良かったわ」

 その微笑みにすっかりやらてしまったエディ。何か話したくても言葉が出て来ない。待ち望んだ時間だというのに……もじもじしているうちに聞き覚えのある声が聞こえた。 

「お~っす エディにシーナ、早いな~」

「おはよう、待たせちゃったかしら?」

 デイブとミレアがやって来た。そして時間ギリギリになって

「ごめんごめん、遅くなっちゃった」

 ルークとステラが小走りで現れた。

「ごめんなさい。お弁当作ってたら遅くなっちゃって」

 謝るステラ。

「時間ぴったりだ。謝る事無いぜ」

「そうよ。お弁当作ってきてくれたんでしょ?」

「うん、たくさん作ってきたから遠慮無く食べてね」

「おう、楽しみだぜ」

「じゃあ行きましょうか」

 例によって湖まで長い道のりを歩く。先刻の失態を取り戻すべくエディはシーナに一生懸命話しかけた。正直うっとおしいぐらいに。だが、それに嫌な顔どころか笑顔で聞き、時には相槌を、時には笑顔を見せて応えるシーナ。エディにとって夢の様な時間だった。

 やがて湖に到着。ステラにとっては長い道のりだったが、エディにとってはあっという間の道のりだった。


「あんた達、覗いたら殺すからね」

 水着に着替える為、ミレア・ステラ・シーナが茂みへ消える。デイブは今回も水着を着込ん

で来たらしい。

「デイブ、毎回毎回暑くないの?」

 水着に着替えながらルークが聞く。

「この暑さ、蒸れ具合こそ夏の醍醐味ってヤツよ」

「また訳のわからない事を……」

 呆れ顔のエディ。

「まぁ良いじゃねぇか。楽しんだ者勝ちってコトよ。んじゃ、先行くぜ!」

 満面の笑顔で湖に飛び込むデイブ。

「やれやれ…… ミレアを待つって考えはまったく無いみたいだね」

「長い付き合いだからね。でも、今は恋仲なんだから、少しは考えてあげないとダメだよね」

 ルークとエディが着替えを済ませ、そんな話をしていると

「おっ待たせ~」

 テンションの高いミレアの声と共に水着に着替えた三人の女の子が茂みから出て来た。

 ステラは白のワンピース、ミレアは赤のセパレーツ。これらは以前、五人で来た時と同じものだった。そしてエディの目を釘付けにしたのはシーナの水着。それは紺色のローレグタイプのワンピース。しかも、胸のところには名前が書かれた白い布が縫い付けられている。所謂スク水というモノだった。かわいい水着のステラとミレアの少し後ろを恥ずかしそうに歩くシーナ。

「シーナは真面目なんだな。今日は学園の行事じゃ無いんだから学園指定の水着じゃなくてもよかったんだぜ」

 肩まで水に浸かりながらデイブが言うと

「アンタたち相手には学園の水着で十分ってコトよ」

 ミレアが悪づく。

「でも、シーナが着るとかわいいよ」

 エディの言葉にミレアが絡む。

「じゃあ何? 私が着るとかわいく無いっての?」

「いや……そういう事じゃ無いけど……」

 言葉に困るエディにルークが助け舟を出す。

「そんな事無いよ。ミレアだってかわいいよ」

「じゃあ、私は?」

 ステラまでもが話に乗っかってきた。

「も、もちろんメイティもかわいいよ」

 焦って答えるルーク。

「はっはっはっ 女は怖ぇな。まあいいから早く来いよ。気持ち良いぜ」

 デイブが幸せそうにバチャバチャと水飛沫を上げて誘う。

「そうね、行きましょうか」

「うん、いこう!」

 五人は湖に向かって駆け出した。


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