第10話 今回は水着回! 但し絵が無いので想像でお楽しみ下さい ~湖畔でバーベキュー1~
ルークとステラ、いや、メイティが魔法学園に転入して早一ヶ月。なんとかクラスにも馴染み、特にデイブやエディ、ミレアとはすっかり仲良くなった頃、暑い夏がやってきた。
「暑いなー」
「暑いね」
「暑いわね」
顔を合わせる度に口から出る言葉。
「今度の休みに湖でバーベキューやろうぜ」
デイブがいきなり言い出した。
「あら、良いわね」
「行こう行こう!」
即座に賛成するミレアとエディ。
「湖でバーベキューって?」
キョトンとした顔のルーク。
「湖の畔で肉とか野菜とか焼いて食べるんだよ。ルフトじゃ誰もしてなかったのか?」
当たり前の事を当たり前に説明するデイブ。もちろんルフトでも行われてはいたが、王子であったルークには経験が無かった。
「うん、ボクはやった事無いや」
「そっか。ま、大丈夫だ。楽しい事は保証するぜ」
「そうよ。もちろんメイティも行くわよね」
もちろん王女のステラもバーベキューの経験など無い。
「う、うん。楽しみよね」
とりあえず笑って応えるしか無かった。
「あっ、湖行くんだから……」
ミレアが何か思い出した様に言い出した。
「水着持って行かなくっちゃね」
そして休日。バーベキュー日和としては最高だが、湖までは徒歩である。朝早く集合し、炎天下の中汗だくになって歩かなければならない。特にお嬢様育ちのステラには厳しい道のりだった。
「この辺で良いだろ」
湖畔に着いた時には太陽がすっかり高い位置にあった。荷物を下ろし、レジャーシートを敷く。
「それにしても、本当暑いわねー」
ミレアの一言にデイブが
「まったくだ。まず泳ごうぜ!」
と言ったと思うとその場で服を脱ぎ出した。
「ちょ、ちょっとあんた! なにいきなり服脱いでんのよ!」
「服着たまんまじゃ水に入れないじゃねぇか」
「だからって、女の子の前で脱ぎ出す事は無いでしょ。この変態!」
「大丈夫。下にはちゃんと海パン履いてっからよ」
ズボンを下げてアピールするデイブ。
「小学生みたいな事してるんじゃ無いわよ。メイティは水着持って来たの?」
「ええ。でも、着替える場所が無いんですね」
キョロキョロしながら困った顔のステラ。ミレアはあっさりと言い切った。
「向こうの茂みで着替えるしか無いわね」
「えっ 茂みで……?」
茂みの中とは言え野外で着替えるなんて考えた事も無かった。しかも水着に着替えるという事は、下着まで脱がなければならないのだ。恥ずかしそうなステラに気を使ってか、ミレアがドスの効いた声で警告する。
「あんた達、覗いたら殺すからね」
「お待たせ~」
水着に着替えたステラとミレアが茂みから出て来た。ステラは白のワンピース、ミレアは赤のセパレーツと対照的な水着だが、二人共なかなかのプロポーションの持ち主である。
二人が着替えている間にルークとエディも着替えを済ませていた。
「じゃあ行くわよ~って、あれ? デイブは?」
デイブはみんなが着替えるのを待ちきれず、一人で既に水に浸かって涼しげな顔をしていた。
「おー、お前等も早く来いよ。気持ち良いぞ」
呑気に手を振るデイブ。
「アイツ~ みんな、行くわよ!」
ミレアがダッシュで水に向かう。
「あっ ミレア、水に入る前は準備体操を……」
ステラが声をかける間も無くミレアは水に飛び込んだ。と言うか、デイブに飛びかかった。
「甘いわ!」
デイブは踏ん張ってミレアを受け止める。
「きゃっ ドコ触ってんのよ、エッチ!」
脇の下に手を差し込まれたミレアが叫ぶが、デイブは耳を貸さず、子供に『高い高い』をしてあげるかの様にそのまま持ち上げる。
「自分から飛びかかって来ておいて、何を寝ぼけた事を」
ニヤリと笑うデイブ
「こうなるのはわかってただろうが!」
大声と共にミレアを水に投げ捨てる。派手な水音と水飛沫、そしてデイブの笑い声。しかし思わぬ伏兵がデイブを襲う。
「隙あり!」
エディがデイブの足を掛け、引き倒そうとするが、倒れる寸前デイブはエディにしがみつき二人はもつれながら水中へ姿を消した。二人がガボガボ言いながら立ち上がろうとするところに、投げられたダメージから回復したミレアがまたもや飛びかかる。今度は三人同時に水の中へ消えた。
数秒後、ほぼ同時に水中から顔をだすと顔を見合わせて大笑いする三人。ルークとステラはあっけにとられて見ているしかなかった。
「おーい、ルーク 何やってんだ」
「メイティも早く来なさいよ。楽しいわよ!」
二人を呼ぶ声が飛ぶ。
「メイティ、行こうか」
「はい、行きましょう!」
三人のところへ駆け出す二人。もちろんルークがこの後水中に沈められる事になるのは言うまでもない。
「あれっ 上手く火が点かないな」
散々水遊びを楽しんだ後、バーベキューの準備で火を起こそうとするデイブ。だが、なかなか上手くいかない。拾ってきた木の枝に燐寸で火を点けるが乾燥してない為か、なかなか上手くいかないのだ。そうこうしているうちに燐寸の数が残り少なくなってきた。
「どうすんのよ、火が点けられなくちゃバーベキューにならないわよ」
「そんな事言ってもよー」
「ダメね、アウトドアに弱い男って」
「ならお前がやってみろよ」
「それは男の仕事でしょ」
文句を言うミレアにデイブが言い返すが、相手にされない。
「男女平等の精神はドコに行ったんだよ……」
「まあまあ二人共……」
見かねたルークが割って入り、燐寸に火を点け、枝に火を移そうとするが、結果は同じ。
「うーん、上手くいかないなぁ」
「どうする?」
「腹減ったぞ」
「野菜だけでも生で食べる?」
エディの差し出すキャベツをデイブが一口齧った時、聞き覚えのある声がした。
「俺にまかせな」
「うん、頼むよって、ええっ?」
声の主はサラマンダーだった。前回は声だけだったが、今回はその姿、赤い竜の子供の様な姿がはっきり見える。
「坊や、ちょっと退いてな」
サラマンダーはルークを下げさせると、口から火を噴き出した。一瞬にして木の枝が炎に包まれる。
「うわっ 凄い!」
「ま、こんなモンだ」
「ありがとうサラマンダー」
「ば、バカ野郎、お前等があんまり鈍臭いから見てられなかっただけだ」
捨て台詞を残して消えたサラマンダー。彼は所謂『ツンデレ』なのだろうか?
「珍しくお優しい事で」
人間から見えない所、聞こえない声でノームがサラマンダーをからかう様に言う。
「うっせぇな。なんか、アイツ等気になるって言うか、ほっとけないんだよ」
「奇遇ね。私もよ」
ウンディーネがサラマンダーに同調する。
「何か面白そうな子達だからね」
シルフも言うと、ノームが驚いた様子。
「お前さん等が揃ってご執心とはな。ま、そう言う儂も興味はあるんじゃがな。あの坊や達がどう化けるか見物だわい」
「うわっ熱い!」
サラマンダーが点けてくれた火で肉を焼こうとしたエディが手を引っ込める。
「さすがはサラマンダー。凄い火力ね」
「これでもかなり抑えたんだろうけどね」
「バーベキューってよりキャンプファイヤーだな」
などと言いながら串に刺した肉や野菜を炙るデイブ。焼けた串から肉を外して皿に取り分けるミレア。
「凄い手際が良いんだね。やっぱり息ピッタリだよ」
冷やかすルーク。
「腐れ縁だ!」
「腐れ縁よ!」
同時に返すデイブとミレア。
「本当に息ピッタリですね」
にこやかに言いながらも、少し羨ましそうなステラだった。
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