家出お姉さんと少年
「あの、そこで何してるんですか?」
「家出してます」
「そういう君こそ、こんな時間に何を?」
「俺は小腹が空いたのでそこのコンビニに」
「そうですか」
「あの、なんで家出?」
「何ででしょうね」
「…うち来ます?」
「へ?」
「今夜泊まるところがないなら俺んち来ます?一人暮らしですし」
「えっと…?」
「…すいません、変なこと言いました」
「迷惑でなければ…」
「え?」
「え?」
「あっ…と、迷惑ではないです」
「あの、お名前は」
「言ってませんでしたっけ?」
「言ってません、聞いてません」
「これは失礼しました、沼口美夜と申します」
「みよさん、坂田誠です」
「まことくん」
「はい」
「お世話になります」
「いえ」
「予備で置いてた布団ですが」
「ありがたいです」
「おやすみなさい」
「おやすみなさい」
「おはようございます」
「おはようございます」
「朝ごはん作らせてもらいました」
「え、冷蔵庫の中にご飯の材料ありましたか?」
「買ってきましたよ。一泊の恩義です」
「…ありがとうございます。いただきます」
「こちらこそ。召し上がれ」
「泊めていただいてありがとうございました」
「いえ。家に帰るんですか?」
「はい、自宅に戻ります」
「それで、あの、なんで家出していたんですか?」
「同居人とケンカしまして」
「…そうですか」
「なにか?」
「いや、大人なのに家出するんだなと思いまして」
「出て行けなんて言われたので実行したまでですよ」
「……そうですか」
「そうですよ。でも私に非がなかったわけではないので、それだけは謝りにいかないと」
「仲なおりできたらいいですね」
「まことくん、学校は大丈夫ですか?」
「え?あ、やべっ」
「ご縁があったらまた会いましょう」
「はい、みよさん、お元気で」
「てことがあった」
「うわ、お前なにやってんの」
「なんであんなことしたんだろ」
「本当にな。その人が変な女じゃなくてよかったよ」
「うん」
「今日まことの家に泊まってく」
「いいよ」
「ゲームしようぜ」
「いいけど、お前弱いからなぁ」
「まことが強すぎるだけだから…なんだあれ?」
「パトカーだな」
「救急車もいるぞ」
「すげぇ怒鳴ってんな」
「うわ、今出てきた女の人ボコボコじゃん」
「ん?どの人?」
「ほら、警察に支えられてる…」
「…みよさん」
「え?」
「昨日泊めた人…」
「は?嘘だろおい」
「みよさん!」
「ちょ、まこと!」
「虐待だったんだって?」
「うん」
「相手は母親の再婚相手か…」
「うん」
「なんでまことが落ち込んでんだよ」
「誰も気がつかなかったんだなって思って」
「…しかたねえよ」
「みよさんは俺らの2歳しか違わないのに大人なんだな」
「どうした急に」
「なんとなくそう思っただけだよ」
「ふーん」
「18と20なんてたった2歳の差なのにでかいよな」
「大人でも今まで助けられなかったんだ、俺らじゃもっと無理だよ」
「うん」
「友だちになったんだろ?また会いに行ったらいいじゃん」
「一緒に来てください」
「あーはいはい」
「私は馴れ初めを聞いたはずなんだけど」
「だから、それが馴れ初め」
「わけわかんない」
「そういうと思った」
「普通初対面の異性自分ちに泊める?」
「前置きしたじゃん、普通じゃないよって」
「言ったけどさぁ、ここまでとは思わなくて。その後の事件で再会して友だちスタートで?」
「そうそう」
「出会って7年交際期間3年で結婚しますって?信じらんない」
「うふふ」
「幸せそうね…」
「うん」
「ただいま」
「おかえり」
「やっほーまことくん、おじゃましてます」
「ゆっくりしていってください」
「お言葉に甘えまーす。みよもついに姉さん女房になるのか…」
「なるよー」
「くっそー!幸せになれよこのヤロウ!」
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