第2話
マンションに帰ると風呂に入り、コンビニで買った420円の弁当を食べた後、以前借りていてまだ見終わっていないDVDを、二本立て続けに観た。両方ともかなり深刻な筋立てのホラーで、全て見終わった後、ぐったりとカーペットの上で横になった。
時間は9時……。
ガラステーブルの上には、今日ビデオ屋の店主が、お礼に、と貸してくれたDVDがある。
冷蔵庫から缶ビールを出してきて
開けると一気に飲み干し、意を決したようにその白いパッケージを開けDVDを取り出して、プレーヤーにセットした。再生ボタンを押す。32インチの液晶画面は、しばらく暗闇を映し出していた。それは結構長くて、首を傾げていると、画面が乱れだし、忽然となにかの景色が現れてきた。
それは、どこかの街並みや、彼方で連なっている山々の様子を、高いところから撮っているようなのだが、ハンディカメラなのか、画面が小刻みにぶれている。
画面はゆっくりと手前に移動すると、今度は、鬱蒼と生い茂る木立や公園、そこから連なる高層マンション群を映し出す。
それを見た瞬間、私は、この光景をどこかで見たような気がした。いや、それどころか、これは、私が今暮らしている街の様子では
ないのか?
画面を凝視する。
画面はマンション敷地内の駐車場や植え込みを、かなり上の方から映し出していた。
─間違いない、これは、私が住んでいるマンションの敷地だ!
すると、突然ガクンと画面が不自然に上下に揺れると、駐車場や植え込みがゆっくりと回転しながら、近づいてきた。
そして、灰色のアスファルトの白線がはっきり見えたかと思ったら、プツンと画面は真っ暗になった。
それからは再び、暗闇が続いた。
5分くらい見続けたが、何も映ってこない。どうやら、これで終わりのようだった。
─何だ、これは……。
店主はいかにも勿体ぶって、このDVDを私に貸してくれた。私もかなり期待して、観た。
─だがこれは、何なんだ?
もしかしたら、本来渡すべきものと間違えて、違うものを貸してしまったのではないだろうか。
私はそのDVDをプレーヤーから取り出すと、白いパッケージに入れた。
翌日、ビデオ屋に行った。
一直線にレジカウンターまで歩き、店主に、昨日借りたDVDと以前の分をまとめて返した。
店主はいつものにやけた顔で、
「どうでした、昨日のは?」と聞いてきた。
私はニコリともせずに、「別に……」と答える。
「あれ?喜んでくれると、思ったんだけどなあ」
と、いかにも残念そうにしていたので、
「あんなのは、ホラーでもなんでもないよ」
と言ってやった。
「そうですか……これはダメでしたか」
と寂しそうに白いパッケージをじっと見ている。
すると、何かを思い出したように顔を上げ、カウンター奥のカーテンを開けると、また、真っ白いパッケージを持ってきた。
「昨日のがダメだったら、これだったら絶対に気に入ってくれる、と思いますよ」
そう言いながら袋に入れ、今度は押し付けるように、私に手渡した。
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