第23話 エロとファンタジーは大好物
[隆生side]
賑やかな声を上げながら商売を営む者。子どもを連れて、帰路に発つ夫婦。そんな彼らを見て、俺はふと思うことがあった。
この世界は女性の差別が酷かったりするが、案外この国にはなんら代わらぬ夫婦として過ごしている人たちもいるんだよな。
正直。まだこの世界の事を知らなすぎ、て感情で動いているようとしか思わない時がたまにある。
俺は他の仲間のように、真剣にこの世界の女性たちを救いたいと思っているのだろうか。――――わからない。
結局はみんな他人だし、俺は智久のように女性が好きで好きでたまらないというわけでもない。
浩太のように心の底から優しい奴でもない。岳のように目の前に存在する不平等に立ち向かう覚悟もあまりない。
竜二のように俺たちのことまで考えて行動できるやつでもない。
そして純のようにこの世界の女性を救うために命をかける勇気も――――ない。
俺は今を精一杯生きているだけだ。明確な目的や、強く心を揺さぶる目的があるわけでもない。それでもいいのだろうか。目的は自ずと見つかるのだろうか
ふと純の去り際に言っていた言葉がフラッシュバックする。
『――――――俺は強くなる。この世界の誰よりもずっと強くなる……。それまでは――――――――1週間留守にする。お前らもせいぜい頑張れよ』
「強くなる…………か――――」
あいつのあんな真剣な表情久しぶりに見たな……それだけ本気ってことか。まぁ、俺は肉体的強さが全てだとは思わないけど。そんなことより――
「――――――ってことでやって来ましたぁ~情報の宝庫である書物倉庫へ~」
おっと、黙れファッキュウという視線が身体を突き刺さしているぜぇ――――すみません。まじすみません皆さん……
先ほどのテンションは捨て去り、俺はいそいそと書物倉庫の中へと足を踏み入れるのであった。
此処に来た理由としては、純が一週間いないということもあって俺たちにも自由時間が出来たのだ。
そのため、どうせなら色々な情報でも集めようかな――と思った次第だ。
ちなみに、俺以外の奴らも今頃はそれぞれ自由に行動しているだろう。智久と浩太なんかは何故かテンション上がっていたが――
俺の背の2倍はあるであろう本棚がずらりと並ぶ書物倉庫。現実世界で言うならば図書室と同じ役割だが、此方の方が規制された本などがないため情報量は多いと感じる。
なんせ、俺たちの国なら国家機密に値するであろう情報が記された本も、適正な審査を受ければ拝読することが出来るようだからねぇ。
四方にせわしなく目を動かしながら、興味のそそられる本を探す俺。ふと窓際に本棚の列に、あった1つの本が目に入る。
その本の名は――――『世界の歴史』
「おぉ。これは面白そうだな……どれどれ見てみますか~」
辞書のように分厚いその本を開く、とんでもない量の目次が最初に現れる。目次だけで数十ページは使っているだろう。
なんじゃこりゃっ? めちゃくちゃあるな……
全部は見ることが時間的にも厳しいと察した俺は、適当にピックアップして見ることに決める。
まずは――――――――――
『魔物の来訪』
遥か昔、世界が幾つもの大陸に分かれ、数多の国によって治められた時代。世の中は血塗られた歴史によって動いていた。幾たびも人間たちは大規模戦争を起し、疫病が蔓延した。
そんな中、世界を変革させる1つの事件が起きた。人間だけであった世界に、異世界からの怪物――――「魔物」が来訪した。
「ぇっ? 魔物って最初からいたんじゃないの?」
俺たちの現実世界以外にも、異世界が存在するのか……まぁ、普通に考えればそうかもな。
はいっつぎ~――――――――
『大魔王アレクサンドローザス』
第一次魔族侵攻戦争。大魔王「アレクサンドローザス」の命の元、闇の世界から此方に進攻を始めた魔族軍。当時の連合国は、特級緊急防衛令を出し、全兵力を持って迎え撃った。
凄まじい攻防の末、勇者「アデム」によって大魔王は倒され、世界に平和が戻った。その戦争の死者は数百万に及んだ。
「あれくさんどろーざすって……ずいぶんと呼びづらい名前だねぇ。大魔王とかまじでRPGじゃないですかー。てかやっぱり、異世界の歴史は面白いっ」
横文字ばっかで読みづらいけど――嫌いじゃないっ。日本史より世界史派の私には十分楽しめますねっ!
それではネクストっ。行って見ましょうかあぁぁ!!
『珠玉の竜神』
第1魔族侵攻戦において、圧倒的に人間と魔物の双方を苦しめたのは竜族。その圧倒的強さと、自己の強さにより、大魔王ですらも手に余ったと言われている。
それゆえ竜の出陣は一級の緊急事態に属するため、一時、魔物と人間が双方協力してドラゴンを討伐したとの伝説もある。
現在も世界には数多くの生物の中でも頂点に立つのが――「竜神」である。
「――――かっけぇぇぇ! 竜神とかめっちゃ会いたいわーーっ。会ったら絶対殺されるだろうけど……」
そう言えば、シェルはパーティーでだがドラゴンを討伐したって言ってたよな……やばくね? あいつ頭おかしいですっねっ!
次で最後にしましょうかね~。ネクストコナ○~ズヒ~ントっ!!
『勇者アデム』
第1魔族侵攻戦争において、英雄となった男。農民の出でであるが、人間で唯一魔王に対抗しうる力を所持していた人間。
彼の愛用していた聖剣は今でも、何処かで存在しているとの伝説がある。
「ほほぉ。最後は勇者ですか。アデムとか勇者で良いのか? まさか死因は林檎を食べた――とかじゃないよねっ? おにいさん、それなら悪いけど――――爆笑しちゃうよ?」
まぁ、そんな冗談は置いといてこの本はもういいかね。面白い歴史も見れたし、後はもっと実用的な情報の詰まった本を探しますか
『世界の歴史』と言う本を元の棚に戻し、俺は再度本の海にダイブを決め込むのであった。
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