第2話 俺とお前の関係? ②

 夏の暑い日差しが頭部を突き刺す中、チャラ男の純は車の鍵を閉めると、真っ黒いサングラスを外して目の前の建物を見上げた。


「おぉ~。久々に来たなっ! 我が母校――――南高校!!」


「だね~」


 相槌を打つともを当然の如く放置して、俺たちは山の中にある母校――南高等学校の中へと足を踏み入れた。


 実は昨日帰り際に、母校へと行ってみるかということになったのだ。それで、めんどくさがる純の運転のもと来たというわけだ。


 純は見た目とは裏腹に友達思いだからぁ~なんて言ったからぶん殴られるだろうけど――(笑)


 卒業生と言うこともあり、すんなりと中に入る事が出来た。


 どうやら高校も夏休みらしく学校の中には生徒の姿は見られなかった。そして、俺たちはいつの間にか無意識の内に3年次のクラスの前まで来ていた。


「なんか緊張するな……」


 岳がそう大きい体を竦めてそう言った。


「――――ぷぷっ」


「ん? 今、笑ったのは誰かなぁ? ん? んん? 浩太君かなぁ??」


「違うしっ! 智久だよ。――――ぐふふふ」


 あからさまななすりつけを喰らった智久は逃げるようにドアを開け、中へと入って行く。そして、俺たちも釣られて中に足を踏み入れると、そこには不思議な光景が広がっていた。


「誰かこの部屋使ってたのかな?」


 智久がそれを見詰めながら言った。クラスには32脚のイスと机がある。


 そして、その1つ1つの机の上に何故だがチェスの駒が置かれていた。そして、黒板には――――――


「れっつ・ぷれい・あわー・さくせす……?」


「私たちの成功を祈ろう――――か」


「流石英語学科だな。英語は岳に任せるぜぃ……」


「いや、これくらい普通にわかんだろ? まさか純はわからなかったの? ぷぷっ」


「うるせぇ隆生。俺だってそのくらいわかるわっ!」


 俺たちが言い争いをしている間に、智久は以前自分の席だった場所(窓側の後ろから二番目)にいた。


 ちなみに俺の席はその後ろ。純の席は俺の隣で、その前が竜二、そしてその前の2つは岳と浩太の席である。智久は声を上げた。


「ねぇ。何かわっちの席だった場所に紙切れがあるんだけど……?」


「ほんと? なんて書いてるの?」


 竜二はくせである黒縁メガメを手で直しながらそう言った。


「うーんと……まじっく・わーるど? マジック・ワールドって書いてる――」


「あん? 何わけのわかんないこと言ってんだよ??」


「いや、本当に書いてるんだって! ほらっ!!」


 俺たちが近づくと、確かにその掌に治まる程度の紙切れには英語で『Magic World』とパソコン文字で打たれていた。


「ほら? 書かれていたでしょ?」


「――――ふんっ。だから何だっていうんだよっ!」


「そんなぁ~…………」


 自分の机の中を覗き込んでいた竜二が突然声を上げる。


「あっ――――僕の机の中にも入ってた」


「まじで? なんて書いてあるの??」


 こうたが即座に竜二に聞く。


「5つの王国……って書いてるぞ?」


「はっ? わけわかんねぇな。俺のにも入ってっかな――――――おぉ! 入ってた!!」


「まじかよっ! なら俺のもか――――――」


 純の言葉につられて俺、浩太、岳も其々机の上を確認した。すると、案の定机の中には小さな紙切れが入っていたのだった。


 俺の紙切れには――――『闇の世界』。そして、純の紙切れには『光の世界』。浩太の紙切れには『能力』岳の紙切れには『大事な者』と書かれていたのであった。


 俺たちは六枚の紙切れと、其々の白いチェスの駒を1つの机に並べた。


 ちなみに、純の駒は『ナイト』。竜二の駒は『ビショップ』。岳の駒は『ルーク』。智久の駒は『ビショップ』。浩太の駒は『ルーク』。そして俺の駒が――――『キング』。


「はっ!? なんで隆生がキングなんだよっ!! 普通俺だろ?」


「いや、俺だってしらねぇよ。それよりいったいなんだろこれ……?」


「話逸らしやがって――。まぁいいや。どうせ誰かの悪戯だろ?」


 純は既に興味が薄れた感じでそう言った。しかし、俺は何故だが妙な胸騒ぎを覚えた。理由はわからないが――


「あぁ~腹減った。もういいから行こうぜ?」


「一応これ持っていかない?」


 不思議そうに紙を見詰めていた浩太は自分の駒と紙切れを持ってそう言った。


 俺もそのつもりだったので自分のやつを持つと岳、智久、竜二も同様に持つ。


 純は最後までめんどくさそうにしていたが、渋々その紙切れと駒に触れた瞬間――――――――


「なっ、なんだっ!?」


「うおおおおぉぉぉぉぉおおおお」


 純と岳が叫び声を上げる中、突如教室内が眼が眩むほどの光に満ち始める。


 そして、頭を鈍器で殴られたような鈍い衝撃が走ったかと思えば、俺の意識は一気に刈り取られた。



 そして視界は――――――――――――――ブラックアウトした。

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