6Hの冒険譚

カオス

第1話 俺とお前らの関係?

 人間とは――――――変態である。現在世界には72億人以上の人間がおり、30年後には100億人を突破するという――――――ということはだ。


 今、世界には72億人の変態がいるということだろう? 


 私は変態ではないわよっ! と否定する麗しき女性もいるだろう。


 しかし、それは嘘だ。なぜなら、女性こそ我々男共より変態であることは誰もが知っている事実であろう。これは決して間違った推測ではない。


 なぜなら、我々変態が神の作りし職業だと唄って止まないA○の殆どは女優であり、現在では女優数千に対し、男優は数百しかいないと聞いている。



 さらには近しい女性に聞いてみると、女性は私達男よりはるかに高みの存在にいることがわかるであろう。このように、世界には無数の変態がいるにも関わらず――――――――――――


「――――何故っ、俺は童貞を卒業できないっ!? いったい何がいけないんだっ!?」


 俺の悲しみとアルコールに満ちた声が、薄汚れた居酒屋に響いた。

  

 そんな俺の悲壮感を露にした顔を、余裕綽々の笑みで見詰める4人の人間と真剣に頷く1人の人間。その中でも、二周りほど体のでかい男――――石山 岳(いしやま がく)が声を漏らした。


「まぁ…………いつかできんだろ?」


「――――くそっ。その余裕ぶった顔が無性に腹が立つわっ! 巨根めっ!」


 俺の突然の暴言に普段は怒りを露にする岳も酔っているせいか笑うだけであった。


 そんな姿に腹が立ったのか、唯一の童貞仲間である先ほど頷いた友人――――天然で笑いのつぼが他人と違いすぎる菊川 浩太(きくかわ こうた)が、口を開いた。


「隆生の言うとおりだわっ。まぁ、岳の息子はロケット並だからなぁ~ぐふふふふ」


 隆生とは俺の名前である。ちなみに苗字は佐藤だ――――今普通だと思ったやつ。もぎとるよ? 


「あぁ? いいのか浩太?? あれやるぞ??」


「ふふふ。めんどくさいからいいわ」


 あれとは、岳が浩太に襲い掛かるという単純明快で何もひねりのないもの。


 流石ゴリラ石山と言われるだけはある。脳も単純である。  


 浩太が冷たく突き放すと、岳が自宅にいるノリで襲い掛かった。

 

 壮絶な叫び声が響く中、じゃれ合う2人を放置して、いかにもパーティーピーポーな見た目をしているチャラ男――砂井 純(すない じゅん)が口を開いた。


「おまえらは良いよなぁ。すぐにやれる女がいてよぉ……俺の大学なんてブスしかいねぇよ」


「看護学校なのに1人もいないの? 可愛い子」


 黒縁のメガネをかけたイケメンこと――梅田 竜二(うめだ りゅうじ)が、ハイボールを一口含みながらそう言った。すると純は、手元のビールを一気に飲み干し声を荒げる。


「まったくいねぇよ!! 俺もありさみたいなけつでか女が欲しいなぁ~」


「けつでかって……うひょひょひょ」


「何笑ってんだよ? 粗チン下野? お前はかえでのおっぱいでも吸ってろ!」


 説明を入れとくと、ありさとは竜二の高校からの彼女であり、下野とは俺たちの爽やかド変態イケメンの下野 智久(したの ともひさ)。

 

 そして、かえでとはその智久の彼女である。


 話の会話からわかるように、智久、竜二、それと岳には彼女がいる。そして、俺、純、浩太には彼女がいないというわけだ。


 まぁ、純は彼女はいないが童貞ではない。これは重要なことであるからもう一度言っておく。純は童貞ではない――――ファック!!


 俺は心の底から滲み出てくる怒りを押し殺すようにビールを飲み干すと、一息つくときに俺がいつも飲むコークハイを注文した。


 そして、思い出すように言葉を放つ。


「そういえば、君たちは彼女とはどうなのよ?」


 そう聞くと、3人揃って浮かない表情を零した。


「どうした……?」


「わっち、実は昨日から何故だが連絡がつかないんだよねぇ――――」


「ぇ!? 智久も? 俺もなんだよ昨日から」


「実は俺も…………」


「岳もっ!? 偶然だなぁ――――――」


 どうやら3人とも連絡がつかないらしい。へっ。ざまーねぇなぁ――――とは思っちゃいけないよね?


「なんだよお前ら。だっせぇな~」


 ぁっ。言っちゃったよチャラ男が。


 純の言葉に3人はさらに暗い表情を深めてしまった。そのため、俺は慌てて話を逸らす。


「まっ、まぁ、大丈夫でしょう! それにしても、こうやって集まるのも久々だよなぁ……」


「去年の夏以来だよな?」


何時の間にか元の席に戻った巨根の岳が返答する。ここで現在の状況を話しておこうか。


 俺たちは元々北海道の田舎町で出会った。


歴でいえば小学校から高校までずっと同じという腐れ縁だ。


 そして、今はそれぞれ違う大学に行き、20歳を迎えた夏休みの今、1年ぶりに地元の居酒屋で一杯やっているというところだ。


「そだそだ。それにしてもあの時からみんなかわらんなぁ~」


「あの時からっていうか、高校から全くかわんねぇよ。祖チン下野が彼女できたくらい

だろ? 変わったのは」


 純はそう言ってビールをちびちび飲む智久にがんをつけた。それの何が面白かったのか一生理解出来ないが、浩太が突如気持ち笑い声を上げる。


「ぐふふふふふふ…………はぁ。つまんね」


「ひゃああああああああ! おっっぱい!!」


 死んで欲しいくらい気持ち悪い叫び声を上げる智久に本気の肩パンを食らわす岳と竜二。智久は「あひゃっ」と言いながら崩れ落ち、純は爆笑する。


 皆さんもわかっただろうか? 基本こいつら(俺以外)は頭が可笑しいのだ。ねじが飛んでいる。がはははっ――――ん?俺も可笑しいのか?


「此処は家じゃないんだぞ~。大人しくしろよぉ」


「うるせっ! コークハイばっかり飲みやがって!」


 純は此方を指差しながらそう言った。


「いいだろ。俺は好きなんだから……」


「おんなかっ! お前はか弱い女かっ!」


「――――うぜぇなぁ。お前がそこまで言うならビール飲むよっ!」


「いいねぇ~。それなら早飲み対決だな! 勿論全員参加だぞっ!? そして負けてやつは――――――ともの粗チンをがんみするってことで」


 反論しようとする智久を捻じ伏せ、純は親指を突きたて高らかにそう言い放った。


 そして、皆のビールが運ばれてくる。勿論智久のもだ(笑)


「それじゃいくぞっ!? いっせぇーのぉーでっ!!」


 直後、一気に口元にジョッキを持っていく六人の変態達。


 黄色いシュワシュワの液体は物凄いスピードでなくなり、1番手はゴリラ石山。


 2番手はチャラオの純。3番手は天然のこうた。4番目はこの小説の主人公であり、唯一の常識者である俺だ。


 そして、残るはメガネイケメン竜二と爽やかイケメン智久の一騎打ちというところで――――――――――


 当然の如く純の邪魔が智久に入る。そして、それに気を取られている瞬間に、竜二がフィニッシュしたのだった。


「ぶははははははっ! とものま~け~! おらっ! 早くお前の粗末なち○こをだしやがれっ!」


 ともひさは必死に反論するが、最初からこうなることがわかっていて自分も参加したんだから何も言えまい。


 そこで、俺たちは必死に抵抗する智久を押さえつけ服を脱がそうとする。


 すると背後から熱い視線を感じて振り向くと――――――怒りの形相で此方を見詰める居酒屋の店主。


 その手にはしっかりとフライパンが握られ、俺たちは青い顔をしながら智久を放すのであった。


 それからは皆さんの予想通りである。店主にこっぴどく叱られ、結局は店を追い出されてしまったのである。


 そして、テンションの下がった俺たちはそのままフラフラになりながら家に帰ったことだけは覚えている。


 後、智久が純に途中で脱がされていたことは――――――――――忘れておこう。


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