第64話結果報告

「直ぐに追うわよ! 街中での『索敵』の使用を許可します。まだ他の街には逃げてない筈よ、急いで!」


 迷宮前に戻ったエミが直ぐ様号令をかける。


「けどエミさん、アキさん、冒険者組合への報告はどうする? 流石にリーダーが抜けるわけにはいかないだろ?」


 ヒトシが駆け出そうとしていたエミとアキにストップを掛ける。


「そうよ、こっちは私達が追うから、エミとアキはそっちをお願い! 大丈夫絶対逃がさないわ!!」


 サオリがサムズアップしながら影に沈んでいく、その他の女性メンバーも親指を立てながら駆け出す。


「ねえこれ私達も行った方が良いのかしら?」


 メグミが呟くと、アキが、


「メグミちゃんは男陣営でしょ? あなたも監視対象よ! 逃がしませんからね?」


 アキとエミに両側から腕を組んでガッチリホールドされてしまう。


「他の男共も変な動きをしたら容赦しないわよ? 首が飛ぶと思いなさい!!、大丈夫全部終わったら蘇生してあげるわ」


 エミがメグミと腕を組んだまま周りを見回して宣言する。


「分かってますよ、くぅぅ、ナツオ先輩、あんた男だぜ!!」


 ヒトシが最敬礼を虚空に向かってすると、男性陣が横に並んで同じく最敬礼を始める。迷宮入り口付近に居た人達が何事かと遠巻きに眺めている、


「何バカやってるの! 他の人達に迷惑でしょう! ほら仮設本部に報告に向かうわよ!」


「ノリコちゃん達も一緒にこっちに来て、男共が逃げ出したら報告してね、全く男共はっ!! この地域の男共には碌なのが居ないわね!!」


 とアキとエミがそれを見て怒る。メグミがアキとエミに連行されるように仮設本部に向かうと、男性陣がその後に追従し、更にその後をノリコ達が監視するように付いていく。


 仮設本部の受付嬢に話すと、奥にアツヒトが居るので少し待つ様に言われ、その受付嬢は直ぐに仮設本部内に入っていく。その他に2名受付嬢がいるが、その2名がアキとエミに連行されているメグミを見ながら。


「エミさん何事ですか? メグミちゃん何かやらかしましたか?」


「あの初心者なので大目に見てあげてください、悪い子じゃないんですよ?」


 心配そうな顔でオロオロしながら弁護をしてくれる。


「大丈夫よ、まあ色々あったけど、特に問題は無いわ、今は悪戯しないように捕まえているだけよ」


「本当に何でもないわ、ただ逃げそうなので確保してるだけよ」


 エミとアキが説明すると、


「はあ、まあそれなら、また何かやらかしたのかと心配しました」


「良かったです、メグミちゃん、エミさんもアキさんも悪い人じゃないんだから逃げちゃだめよ?」


 安心した様な顔で受付嬢も納得している。


「貴方、有名人なのね、ってまあそうよね、私達でも噂に聞いてた話題のルーキーですものね」


 アキがメグミの方を見ながら言う。


「やあ、アキ、エミ、何かメグミちゃんがやらかしたのかな? 出来れば穏便に済ませてやって欲しいんだけど………何やったんだい、メグミちゃん」


 心配そうな不安そうな顔をしたアツヒトが仮設本部内から出てきて開口一番にそんな事を言う、


「ねえメグミちゃん、貴方問題児なの? ただ捕まえているだけで凄い皆が何かあったの前提で話してるけど?」


「なんででしょうか? 私も何だか問題児扱いされてて凄い不本意なんですけど? ねえアツヒトさん、なんで開口一番がそれなの?」


「ん? あれ? ただ捕まえてるだけ? いや受付の子が大慌てで、エミとアキにメグミちゃんが連行されてるって、何とか取成してあげて欲しいっていうからてっきりやらかしたのかと……」


「日頃の行いの所為よ、メグミちゃん、そして全員が助けようとしてくれているのも日頃の行いの成果ね。落ち込めばいいのか喜んでいいのか複雑なところね」


 嬉しそうにノリコがメグミをフォローしてるのか止めを刺しているのかわからない事を言う。


「まあここじゃなんだ、とにかく奥に入ってくれ、また変な噂が立つのも不本意だろう?」


 扉を開けながらアツヒトが奥に案内する、昼前に打ち合わせをした会議室に入ると『サキュビ69』が既に戻ってきていて、御茶とお菓子を食べながら寛いでいた。


「ん? メグミちゃんじゃないか? どうした何かしでかしたのか? 全く仕方ないなあ! なに大丈夫だ、僕が弁護してあげるから大船に乗った気でいると良い、悪いようにはしないよ」


 やれやれ仕方ないなといった顔でプリムラが声を掛けてくる。


「あのアキさん、エミさん、もうここまで来たんですから、そろそろ拘束を解いてください。変な誤解を一杯生んで凄い凹みます。エミさんの胸の感触は最高ですが、アキさんの方は鎧が硬いだけで余り嬉しくないですし」


「分かったわ、って私だってエミに負けてないんですからね? たまたま鎧だっただけで脱いだら……」


「アキ、変なところで張り合わないで、にしてもメグミちゃん大人しいと思ったら、本当にあなた懲りないのね、まあ良いわ、放してあげる」


「ん? 何だい何かやらかした訳じゃないのか、まあアキもエミも怒って無さそうだし、安心したよ。アカネが血相を変えて飛び込んでくるから何かあったんだと思ったけど、アカネの勘違いだったのかな? まあ何事もなくてよかったよ」


 どうやら最初に対応した受付嬢はアカネと言う名前らしい、


「まあみんな座ったらどううかな? ああ、ソファーはレディーファーストだよ、男の子はそこの折り畳み椅子で頼むよ、ん、僕にも一つその折り畳み椅子をくれないか? ああ、タツオ君ありがとう」


 アツヒトが言うと男性陣がガタガタと椅子を出したりして席に着く、


「えー、みんなの御茶と茶菓子は今準備してもらってるのでちょっと待ってね、先に報告を始めようか?」


「それより、プリムラ様の方は如何だったんですか?」


 そうメグミが聞くと、アツヒトが頭を抱え、アキとエミがなんてことを聞くんだと言った顔でメグミを睨む。


「ん? 地下2階かい? いやーー良い画が結構取れてね、今度の放送やイメージビデオは期待してくれたまえ、ハハハ」


 プリムラはご満悦の様子だ、


「途中で『バーバリアンカウフロッグ』が居たのは幸運でしたね、この時期からあの大きさの個体が既に居るとは、今年は少し暖かいからでしょうか? 良い生育具合でしたね」


 エリンが何やら思い出したのか両手で自分を抱きしめてクネクネしだした、


「確かに、あれは良かったねえ、自然に粘液まみれに成れたからね、あの後の画が映えたねえ」


(どんな画だ? 放送できるのかそれ?)

 とこの場のその他大勢の心の声がシンクロする。


「『アイアンクロウスコーピオン』も良かったですわ、あの巨大な爪に拘束されて毒針でズコズコ突かれて、いい具合でしたわ、はぅ」


 レミリアが頬を赤く染めて悶える。


(ちょっと待て毒針でズコズコってどこをだ?)

 またも心の声がシンクロする。


「あれは良かったよレミリア、良い画が取れたよね、撮影班も大興奮だったよ」


「階層主部屋も良かったですわよ? 『キラーポイズンビー』が毒針を出したり引っ込めたりしながら、お腹をカクカク動かしてズコズコとして、数が多いから色々と捗りますわね、久しぶりに満足しましたわ」


 フランが口に手を添えながらその手をスコスコ動かすが……


(ん? んん? 毒針だよね? エリン様もなんでお尻を押さえてるの?)

 心の声はシンクロしまくりだ。 


「『ポイズンクインビー』をプリムラ様に取られたのは痛恨でしたわ、私が狙ってましたのに! あのぶっといのが欲しかったんですのよ? でもあの場面は良かったですわ、あの巨大なハチに空中で武骨な足の鈎爪に拘束されて後ろから刺し貫かれる小さなプリムラ様、今思い出しても興奮しますわ!」


 ヒカリは祈るようなポーズで顔を赤く染める。


(どこを何で刺し貫かれたんだ?)

 シンクロした心の声でテレパシーだって使えそうな勢いだ。


「何言ってるんだいヒカリ、君だって6匹位に散々刺し貫かれて嬉しそうにしてたじゃないか」


「でも私、もう少し太い方が良かったんです、それにあの子たち少し体力が有りませんわ、途中で動かなくなるんですもの、もう一寸なのに焦らされて、思わず握りつぶしてしまいましたわ」


「まあ良いじゃないか? 替わりは一杯居たじゃないか? こっちはアイツが休憩しながらするから中々辛かったんだよ? 他のハチはアイツが寄せ付けないし、大きさじゃないよ、やっぱり元気が良いのが激しく動いてくれた方が良いよ」


「なら私に代わってくだされば良かったんですわ」


「仕方ないだろ? 替わる前にアイツ死んじゃうんだから、本当にもう少し体力が有れば良かったよね」


「プリムラ様達は順調だったようで何よりだよね、どうやら何も異常が無かったらしいんだよ。それよりアキ、エミ、そちらの報告をお願いできるかな?」


 アツヒトが冷や汗を流しながらプリムラ達の会話を遮る。階層主の討伐にパーティの応援が要ると言っていたが、全く必要なかった様だ。流石は上級、低階層の階層主など雑魚なのだろう。調査の筈がサクサクと殲滅している、しかも攻撃せずに。


 アキが報告し、エミが補足しながら階層主に魔道具が取り付けられていたこと、それによって狂化していたこと。更に『ツリー』が木の根で攻撃してきたこと、魔道具にこの街の魔獣改造の技術が使用されていたこと、アイアンゴーレムが出現したこと、相手の目的と手段など聞きだした情報を報告していく。


「ふむ、『聖光騎士団』厄介な相手だね、それに『狂化』を使ってくるとはね、その『狂化』された『ツリー』の攻撃の動画は取っていないのかい? あれ? そういえばナツオ達が居ないね? 彼なら必ず動画を撮影する筈だけど、居ないのかい? 此方に来ていただろう?」


「なんでナツオさんなら動画を撮影している筈なんですか?」


 メグミが質問すると、


「ん? ああ、ナツオは動画を3D撮影出来るようにする装置、3台の撮影魔道具をドローンの様に浮かべてね撮影する魔道具なんだが、それの開発者なんだ、立体的に動画が撮影できるからね、研究資料としての価値も高い。あの装置のそれこそ生みの親でエキスパートなんだよ。彼なら必ず撮影していると思ったんだけどね」


「ああ、あの装置ってそんな機能があったんですね、通りで………」


 そこまで言ったところで左右からメグミの口はエミとアキに押えられた。


「メグミちゃん!!」


「くぅ、もう手遅れかもよアキ」


「ねえ、アキ、エミ、どう言うことかな? なんでメグミちゃんがあの装置を知ってるんだい? あれはそんなに数のある装置じゃない。メグミちゃんが知ってるはずが無いんだ、ナツオはやっぱり撮影してるんじゃないかな? 何を隠してるんだい?」


「コラッ、アツヒト、君は鈍いなあ、今の話を聞けばわかるだろ? まだわからないのかい?」


「どういうことですか? プリムラ様」


「『ツリー』は木の根で攻撃してきて、その魔物の装置にこの街の魔物改造の装置が使われていたのなら、その木の根は触手の様な動きをしただろうね。ならその触手にアキやエミ達は捕まったんだろう? 油断だねえ、まだまだ甘いよアキ、エミ! 中級なんだからもう少ししっかりしないとね」


「はい。反省してます」


「申し訳ありません、プリムラ様」


「まあ反省はしているようだし、話を進めようか? でだ、その触手、この街の改造魔物の装置なら当然プログラム通りに卑猥に動くわけだ、まあねアキやエミの気持ちはよくわかるよ、サキュバスなら武勇伝だけど、一般の女性にはその動画の存在は辛いだろうね、でも男共はそれを喜んでいるし、ナツオもその動画を死守しようとしてるんだろ?」


「そういうことですか、ふむ、ではこちらも提出は無理強いは出来ませんか?」


「当たり前だろう、君、アツヒト今自分も見て観たいと想像したね? ダメだよそんなんだからセクハラ親父って嫌われるんだよ。君も責任ある立場になったんだから少しは押さえるようにしないとダメだよ。発散したいならうちに来ればいいだろ?」


「うぅ、はい了解しました、でメグミちゃんはなんで? ってまさか?」


「そうだろうね、メグミちゃんはガチで更に欲望に忠実だ、そうなんだろ? メグミちゃん、君は男側についたんだね?」


「ううぅ、鋭いですね、プリムラさん」


「伊達に長生きはしてないさ、それでアキとエミに拘束されてたのか、まあナツオと動画は他の子たちが追ってるんだろ? 今回は提出の必要はないよ、僕から命じておくよ、良いねアツヒト、何か問題があるかい?」


「しかし、今後の攻略はどうしますか? 少し厄介ですよプリムラ様、資料的な価値は高いと思いますが」


「むう、粘るねえアツヒト、そんなに見たいのかい? ならこの後ゴーレムの破壊と一緒に装置を付けた『ツリー』に瘴気を注入して実験してみよう。撮影機材と装置はこちらで用意しよう、直ぐに連絡するよ?」


「え? プリムラさん装置を用意できるんですか? 敵の奴は私が壊しちゃいましたよ?」


「ん? メグミちゃん、報告ではこの街の制御装置と瘴気の発生装置を遠隔で操ってただけだろ? 瘴気の発生は僕が代わりに行うよ、制御装置はこの街の物だし、娼館にもあるからね直ぐに用意が出来る、何も問題ないさ。撮影機材もさっきまで使ってたからね、もう一度呼び出すだけさ、また良い画が取れそうじゃないか? 喜んで協力してくれるさ」


「え? プリムラさん瘴気とか作り出せるんですか?」


「まあね、魔素に変換せずに固めて瘴気にすれば良いだけだからね、若い子には難しいけど、僕はサキュバスでも古参組だからさ、こう見えても長く生きてるんだ、色々小技が使えるのさ」


「サキュバスって生気と精気を吸うだけじゃないんですか?」


「そうだね、若い子はそれしかできないね、僕たちも別にそれだけでも生きて行けるんだけど、やろうと思えば負の感情を食べて魔素にも出来るし、負の感情を固めて瘴気だって作れるんだよ」


「腐っても魔族なんですのよサキュバスは、プリムラ様達古参組は少し普通のサキュバスとは次元が違いますの」


 レミリアが補足する。


「レミリアさんも出来るんですか?」


「私はまだ中堅、若いんですのよ? まあこの中ではプリムラ様の次に年上ですけど、まだまだ私なんて足元にも及ばないのよ」


「ねえ君達、僕を年寄り扱いしないで欲しいな、まだまだ僕だってピチピチだよ? メグミちゃんだって知ってるだろ?」


「ねえ本当に幾つなんですか? プリムラ様」


「メグミちゃん、僕だって怒るときは怒るんだよ? 乙女に年なんか聞くものじゃないよ、まあ『長』の言い方を真似れば永遠の10歳さ、それで良いじゃないか?」


(良くねえだろっ!!!)

 この場のその他大勢の心の声が再びシンクロする。


「まあそこは置いておきましょうか、では『ツリー』と動画は良いでしょう。ゴーレムはどうしますか? 破壊しますか?」


「構わないだろ? ただデカいだけのアイアンゴーレムだ? ちょいと僕が砕くよ。僕としてはそんなゴミの様なゴーレムよりそこの人間そっくりな人形の方が気になるねえ、それ古代帝国のゴーレムよりヤバそうな匂いがプンプンするんだけど、誰か説明して欲しいな?」


 全員の視線が『カナ』に集中する。『カナ』はメグミがアキとエミに挟まれているため、ノリコとサアヤの間に大人しく座っていた。


「ん? もしかして、この子が以前に報告のあったメグミちゃんのゴーレムかい? 見かけない子が居るなと不思議だったんだ、僕が女性を見忘れるなんてあり得ないんだけど、顔に見覚えが無いし……本当にゴーレムなのかい? 確か登録の書類だとD級ゴーレムだよね? 人間にしか見えないんだけど、もしかして愛玩用かい?」


「アツヒト、君にはそれが愛玩用に見えるのかい? まあ確かに愛玩用としても良い出来だね、本当に日本人の拘り、技術は凄まじいね、見た目だけなら過去の古代帝国のどのゴーレムより優れている、保証しても良い。

 けどこれ見た目だけじゃあないね? B級に近いだろ? なんだいこれは? メグミちゃんが造ったのかい?」


「そうですよ、私が『カナ』を造りました、いいでしょ?」


 プリムラはじっとメグミの目を見てから、


「ふむ、まあ良いよ、今回はメグミちゃん達は不問にしよう。ノリコちゃんやサアヤちゃんの視線も痛いしね。 ただちょっと質問を『カナ』にしても良いかな? メグミちゃん」


「構いませんよ、『カナ』プリムラさんの質問に答えなさい」


《イエス、マイマスター》


「喋るのか……いやプリムラ様すいません、続けてください」


 呟いたアツヒトをプリムラが睨むと、アツヒトが謝罪する、


「では『カナ』、質問だ、今回のアイアンゴーレムあれが万全の状態、床も十分に硬いと仮定しよう、君なら破壊できるかい? その場合の確率はどの位だい?」


《98%の確率で破壊できます。残りの2%の内、想定外の方法で対象ゴーレムが進化する可能性が1%、その他の排除不可能な敵の出現の可能性が1%となります》


 メグミ以外の今回の討伐に参加した一同に沈黙が訪れる、『サキュビ69』の他のメンバーはニヤニヤと笑っている。


「ではメグミちゃんに質問だ、同じ条件で君ならどの位の時間で今回のアイアンゴーレムを破壊できる?」


「2分くらいでしょうか? 手足を切り刻んでダルマにして、あの作りだと胸部の装甲が胸の左右を切り飛ばせば開きそうなんですよね、で開けば核が剥き出しでしょうからそれを切れば終了です。多分余程予定外の事が無ければその位で破壊できます」


「ふむ、では『カナ』先ほどの質問の破壊方法とその所要時間は?」


《マスターと同じく手足を切り飛ばします、その後胴体を切り削る予定でした、胸部中心部に核が存在すると想定しておよそ5分で切り削れる予定、全体で7分を予定しています》


「どちらもアイアンゴーレムを切ることには変わりないわけだ……本当に君たちは似ているねえ、そして金属の塊を、恐らくは魔鋼だろう? 切れないとは欠片も思ってない訳だ。

 ねえ『カナ』メグミちゃんの言ってる、胸部装甲が開くようになってるとしてそれを考慮に入れた場合の破壊完了までの時間は?」


《おそよ4分に短縮できるものと推定します》


「エミ、アキ、君たちはどの位で破壊できる?」


「申し訳ありませんプリムラ様、私では不可能です」


「同じく単身であれを相手に戦いを挑むこと自体不可能です」


「では条件を替えよう、あれが簡単に切れる剣を渡そう、そう君たちが使い慣れた同じ武器と一緒の形状だ、どの位で破壊できる」


「答えは変わりません」


「同じく一緒です」


「後は何が足りないと思う?」


「スピードが足りません。あれの攻撃を避けてから攻撃し、その後直ぐに攻撃範囲外に退避するスピードが足りません」


「同じくスピードが足りません。理由も一緒です」


「ふむ、メグミちゃんはアレの手足を切り刻むんだよね? どうするつもりだった?」


「突っ込んで行って足を切り飛ばして、そのまま体勢の崩れたゴーレムのもう片足も切り飛ばします。多分腕で攻撃してきますから腕の攻撃を避けたらその手も切り飛ばします、その頃にはどちらかに転倒するでしょうからその後もう片方の手も切り飛ばします、後は先に説明した通りです」


「攻撃を避けるために引かないのかい?」


「あの程度なら少し躱せば避けれます、それに足を切り飛ばせば攻撃頻度は各段に下がります、あのバランスで回転攻撃以外の攻撃は大した脅威にはなりません。一気に足を奪うのがコツです」


「足を攻撃する時に、攻撃されないかな? それこそ回転攻撃をされるんじゃないかな?」


「あのスピードなら回転攻撃中に足を切り飛ばすことは難しくありません、そのままバランスを崩して倒れ掛かってきても躱せますし、問題有りません」


「ではエミ、アキもう一度質問だ、今のメグミちゃんの話を聞いてどう思う?」


「無茶苦茶です、私では同じスピードを手に入れても真似は出来ません」


「同じく、私では真似は不可能です」


「何故だい?」


「万が一敵の攻撃が掠るだけでミンチです、とても正気の戦法ではありません危険過ぎます」


「全く安全性が確保されていません。この戦法を試そうとするものが居るなら全力で止めます」


「では『カナ』メグミちゃんの戦法は如何だい? 君はどうしようとしていた?」


《マスターの戦法はマスターであれば可能です、私は先ず片足を切り飛ばした後一旦そのまま駆け抜けて退避、その後もう片足もタイミングを見て破壊、その後はマスターと同一の戦法を予定しています》


「ふむ、それはメグミちゃんよりも攻撃回避の見切りが未熟と言うことかな? 少しスピードに劣るのかい?」


《肯定、マスターと比して回避行動の最適化とそのスピードに劣ります》


「ふっふっふ、面白い、実に面白いね」


「プリムラ様、なんです? このやり取りはなんなんですか?」


「アツヒトは分からないのかい? いいかいメグミちゃんは中級の冒険者でも優秀な二人が無謀と断じる戦法を平気で選択する、『カナ』でさえ少し能力が足らなければ回避する戦法だ。いいかい? あのゴーレムをこの初心者は単身で破壊してみせるとそう言っているわけだ。

 アツヒト? 君たちは何を育てているんだい? 君たちは間違っている! この状態はダメだ! このままメグミちゃんを如何する気なんだい? 一寸幹部連中を集めてくれるかな? 少し話がある。 

 いいかいアツヒト今すぐだ!! 行け!!」

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