第6話異世界驚異のテクノロジー

(同性に嫌われない明るい飾らないタイプのナツコさんが女子担当、年下男子の扱に慣れた、適度な色気とスキンシップで男子を手玉に取るタイプのアミさんが男子担当なのね、確かにこれなら不満や不安が有っても担当者に食って掛かりようが無いわね) 


 そんな事を思いながらメグミはナツコから籠を受け取り、着替えと靴のサイズタグと着替えの枚数を、ナツコと共に確認しながら受け取った籠に入れていく。


 上着は……ジャージだった。品の良いピンクに白のストライプが体の横に入ってるジャージ。何度見ても普通に日本で売ってるようなジャージ、生地の肌触りが可成り良く、メグミが体育の授業で使ってる、学校指定のジャージより高級そうだ。


(化繊じゃあないよね? なんだろこの生地……伸縮性も高いし肌触りが凄く良い……でもなんで異世界なのにジャージ? まあ動きやすくていいけど、パジャマも兼ねてるのかな?)


 白いTシャツも用意されており、こちらもとても滑らかで肌触りが良い、明らかに綿のTシャツではなさそうだ。下着はやや薄いベージュ色、厚めの生地であったがこちらも伸縮性、肌触り共に抜群だった。


(なんだろう……異世界にきて着替えとか、もっと素朴なものが出てくると思ったのに、日本の物より質が良いんだけど……)


 靴は底にコルク? とゴムの中間の様な柔らかいものがソールとして縫いつけられた柔らかい革製で、足の甲で紐で縛って止めるようにできていた。中敷きまで備え付けられており履き心地は良さそうだ。


 それに普通にソックスまで出てきた……白い無地の生地はやや厚めで伸縮性に富んでおり、こちらも日本の物より質が良さそうに見える。


(ちょっと待って!! 剣と魔法の世界とか、中世ヨーロッパ風の建物とかで、日本より遅れた文化の異世界だと思ってたけど……もしかして日本より進んでる?)


 おかしい……何か変だ……そう思うメグミではあるが……


「枚数とサイズは問題ないみたいねぇー、まあ、着て何か問題があったらまた降りてきてね、では着替えてらっしゃい」


 ナツコに明るく送り出されてメグミは何か納得できない物を感じつつ階段に向かう。

 色々疑問は有るが後ろにも人が並んでいる。メグミだけで時間を取るわけにもいかない。


(こういった所が私も日本人ってところなのかしら? 同じ境遇の人に迷惑はかけられないのよね)


 ちらっとタツオの方をみると、タツオもその渡された着替えに違和感があるのか、


「ん?! んんんっ? 日本……じゃないんだよな??」


 そう小声で呟いているのが聞こえる。しかし気にしても仕方がないというか、もう直ぐ、今着ている服が分解する方がメグミは気になって居たため、テクテク階段を上る。


(花も恥じらう乙女が人前で真っ裸とか自殺してしまう、恥ずかしさで)


 気持ち急いで部屋を探す、メグミの部屋番号は6番が渡されており、2階の部屋の扉を見ていく……


(これも普通に不思議だよね? なんでアラビア数字? まあ、異世界の数字で渡されても困るけどね……読めないし)


順番通りに並んでいたため6番目の部屋の扉の札に6の大きな文字が書いてあった。早速扉の取っ手にカードを翳すと、ほのかに魔法陣のような物がカードに浮かびあがり、


 カチャリッ


 鍵の開く音がする。


(これが魔法ってやつ? 便利ーー)


 ちょっと感動しつつ、取っ手を捻って開き戸を引けば軽く扉は開く。部屋の中は真っ暗であったが、右の壁にスイッチらしき物がぼんやり光っている。取り合えずスイッチを押してみると、部屋に明かりが灯った。一目見た瞬間、


「ホテルの部屋みたい……ここは日本?」


思わずメグミは呟いた。

 明るくなって良く見えるようになった部屋は、1メートル程の幅の廊下の両壁には右に開き戸、左に引き戸が付いており、その廊下を抜けた先にシングルベットが置いてある。そのベットには白い寝具がセットしてあり、ベットメイキングも完璧。更にその先の石壁にある窓の手前には、ソファーまで置いてあった。窓は腰の高さより上にあり、若干小さいが、ガラスの引き戸が嵌っており、カーテンが両脇で束ねられている。


(何だろう普通にホテルの部屋っぽいぞ??)


 奥に進んで廊下の左右の扉を見れば、右手の開き戸には『toilet』っとおしゃれな文字で書かれた金属の札が、木のトビラに張り付けられており。反対側の引き戸には何も表示がなかった。


(こっちはなんじゃろな?)


 っと引き戸を引けば、少しほの暗いが廊下の明かりが差し込んで中が確認できた。どうやらそこは洗面所とお風呂の脱衣所を兼ねた部屋になっており、左手にお風呂の扉らしき曇りガラスの引き戸が見える。

 洗面台は正面にあり洗面台の上に大きな鏡が取り付けられていた。右手の壁にはタオル掛けがあり白いタオルが掛けられていて、入り口付近にスイッチが4つ並んでいる。

 左手のお風呂の扉の手前には木製の棚が置かれていて、上の段に白い大きなバスタオルや小さなタオルが畳んで置かれていた。中の段は空きスペースになっており、下の段には大きな空の籠が置かれていた。


 メグミは手前の壁のスイッチを全部入れてみた。明かりが灯り一気に部屋が明るくなる。お風呂の方からも曇りガラスから光が漏れ、どれかがお風呂の明かりのスイッチらしい。そして、ブォーー、と換気扇らしき音まで聞こえてきた。


(換気扇まで付いてるの? ……何この異世界、まるっきり日本じゃん)


 明かりをつけて、良く見えるようになった鏡を見ると、見慣れた自分の顔がやや驚愕しているような様子で見える。

 それをじっくりと眺める、特に傷もなく肌の色つやも問題ない、髪型も乱れてなく、普段通りの見慣れた自分の顔だ。顔を左右に傾け、鏡を見つめてみたが特に問題なさそうだ。棚の中の段に持ってきた籠を置くと、トイレに行きたくなった……


(ちょっと前まで寒いところに居たから仕方ないよね……うん)


 着替えの前にトイレを済ますことにして、トイレの扉の横の2つのスイッチを押すと、明かりが付き、換気扇が回る。


(流石にもう驚かないよ、この程度じゃあ)


 トイレを開ける。中には普通の『洋式トイレ』があった。後ろにタンクもあり『水洗式トイレ』であるようだ。よく見れば便座の横にもスイッチが付いていて……メグミは大慌てでスイッチと便座の確認をする。便座は……暖かかった。ほんのりと良い温度だ……冬なのに。便座の横のスイッチには日本で良く見慣れたマークが並んでいた。


「『洗浄機能付き温熱便座』っだと……なにこれ?! この異世界どうなってんの?」


 メグミは思わず叫んでいた……よくよく見れば便座は陶器のような材質で、良くあるプラスチックではない。スイッチ類にも一切プラスチックは使われていない。しかし、そこにあるのは日本でも最近急速に普及し、もうこれなしではトイレに行けないとまで言われているアレである。

 横を見ればトイレットペーパーが端を折られてセットしてあり、その横には予備のトイレットペーパーまでセットされている。



 メグミはトイレから出てきた、当然用は済ませた。お尻のシャワーは温水であった、立ち上がって水を流そうとしたら自動で流れた……メグミは思う……


(一度、異世界って思いこみを捨てた方がいいのかしら?)


 洗面所に戻り洗面台を見ると、アメニティグッズがきちんと整えられて整列しているのに気が付いた。先ほどは鏡が気になってそこまで見切れていなかったが、よく見るとドライヤーらしき物まである。


「とりあえずシャワーでも浴びよう……」


 メグミは手早く服を脱ぎ、棚の下の段の籠に服を放り込んでお風呂の引き戸を開ける。


もう驚かない……普通にお風呂があった。


 タイル張りの洗い場と壁、陶器のバスタブ。手前に洗い場があり最新の、『レバー式温度調節機能付きシャワー切り替え型の混合栓』が右の壁の湯舟と洗い場の境についており。

 その手前の洗い場の右壁には鏡と、『シャンプー』『リンス』『ボディーソープ』と書かれたポンプタンクまで置かれていた。

 切り替えがシャワーになって居ることを確認し、温度調整を40っと書かれているマークの位置にセットしようとすると、カチっっと止まった…この赤いボタンを押しながら回すと、もっと高い温度までセットできるのであろう、60まで数字が刻んである。

 メグミはちょっとレバーを操作し、シャワーから出てくる水がお湯になるのを確認してから、シャワーを浴びた。


(何なんだろうこの世界……)


 シャワーを浴びつつ陶器の湯舟をみると何やら見慣れない物が付いていた。バスタブの底に水抜き穴とは別に水晶の様な大きめの玉が一個セットされていて、バスタブ上の奥のタイルの壁にも水晶の様な大きめの玉が一個セットされているのである。

 何かな? と壁の玉に手を伸ばすと、玉が光だし、手前に立体映像が浮かび上がる。その立体映像には日本語で給湯、とか温度調整の操作のできそうなスイッチが配置されており、メグミは驚きつつも安心した。


(あああ……良かったやっぱり異世界だ、こんな操作できる立体映像装置とか日本どころか地球にないわぁ)

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