第3話

 薄暗い闇の中に、小さな白い灯りが見えてきた。玲子はさらに目をこらす。それは、どこかの天井の裸の蛍光灯だった。どこからともなくヒソヒソと、人の話し声が聞こえてくる。


─凄く寒い……

なぜだか下着だけで横たわっていて、毛布を一枚だけ被せられているようだ。


─ここはどこ?

そっと薄目で、辺りを見回す。

横の方に、崇が横たわっていた。

同じように、毛布を被せられている。全く動かない。

どうやらどこかの小屋の中みたいだ。


─とどめさしとかんで大丈夫か?目、覚まさんかの?……

男の声が聞こえる。


─大丈夫じゃあ、きつい薬仕込んどったからの……

あの老婆の声だ。


すると突然、


─チュイイイイ………ン!

けたたましい金属系の機械音が鳴りだした。


─え?何?

玲子は驚き、音の鳴る方を見た。


小屋の入口辺りに、二人の男と、あの老婆が立っていた。

男の一人は、スキンヘッドで顔中ヒゲだらけの中年で、

もう一人は、リーゼントで色白の若い男だ。

二人とも、黒っぽい作業服の上から、肉屋がするような前掛けをしており、リーゼントがナタを、スキンヘッドがチェーンソーを持っており、鳴り響いているのは、チェーンソーの音のようだ。

老婆がひょこひょこと、崇の寝ているところまで歩き、毛布をはぎ取る。トランクス一枚だった。


─ちょっと、何をするつもり?……

玲子の心臓が早鐘のように鳴り出す。

スキンヘッドがチェーンソーを構えて、ゆっくりと崇に近づいていく。


─止めて!

玲子は体を起こそうとするが、金縛りのように動かない。声も出なかった。


─崇!目を覚まして!

心の中で必死に叫ぶ。


無駄だった……。

スキンヘッドは全く躊躇することなく、振動するチェーンソーの刃を、崇の体に突き立てた。

シャリシャリという音とともに、

細かい肉片や血が、男の前掛けに飛び散る。しばらくしてチェーンソーの音が止むと、リーゼントがナタを使い、片方の足を引っ張ってもぎ取った。


─ヒ!……

玲子は耐えきれず、目を瞑った。


「こいつは、わしの分じゃ。

この間は『腕』じゃったからの」

リーゼントは得意気に、崇の「足」を両手で持ち、得意げに高く掲げる。


「分かっとるわ。それじゃあ、わしは『腕』をいただこうかの」

そう言うとスキンヘッドがチェーンソーの紐を素早く引っ張った。


─チュイイイイ………ン!

再びあのけたたましい金属音が鳴り響くと、シャリシャリという音とともに、血しぶきと肉片が飛び散る。しばらくして音が止むと、

リーゼントがナタを振り上げる。

そして、血まみれの「腕」を取り上げ「ほれ」と言って、スキンヘッドに手渡した。


─誰か、助けて……

玲子はグッと体に力を込めた。すると、さっきとは違い、普通に手の指が動く。


─体が動く!

彼女はガバッと上半身を起こし、

その場に立ち上がった。



















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