第3話

 マハトマ・ガンジーは「死は救済である」と言った。


 死とは、生物共通のイベントだ。

 死とは恐れるべきものであり、忌むべきもの。

 死とは意識の消失、不可逆的な生命活動の停止。

 人が死んだら、多かれ少なかれ周りの人は悲しむし、落ち込むだろう。


 ではなぜ、ガンジーは死を救済だなんて言ったのだろう。


 死というものを当人の側から考えてみる。

 もしその人が誰にも知られず、こころに大きな苦しみを味わっていたとしたら。


 治療法が確立されていない全身に痛みが走る病気に罹っていたら。


 意識はあるのに身体を動かせず他人と意思の疎通が取れなかったら。


 愛しい人を亡くして広大な世界で独りきりになってしまったら。



 多分わかりやすく言うとこういうことで、この世界で生きているだけで苦しい思いをしている人間にとって、生の先にある死は苦しみを取り去ってくれる唯一の救いなのだ。


「死は生における最大の救済」


 私はガンジーの言葉をそう解釈した。

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