大勢の樹と月

夜だというのに全く暗くない。


樹が大勢いるのに森ではない。


何人かの樹がコソコソと我々について話している。


奴が私の前にやってきた。


大勢の樹が板を見せるので、奴も板を俺に見せた。


樹だというのに私を非難する。


奴が大勢いるので森ではない。


奴はまるで酒場の奥で偉そうにしているボスのよう。


私はこっそり抜け出すが、


奴の仲間が待ち伏せる路地の奥。


気を吐いて私を絡めとり、


こっそり私の中に入ってくる。


気が付くと、ナイフのような新月が出ていた。


紫色の夜は全く暗くない。


ただ、星たちがキン、キン、キンと足音を鳴らす。


秋風が冷たい吐息を漏らす。


月が星たちを食べていた。

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