第2話いざ異世界へ

今朝目がさめてからずっと気分が悪い。もはや黄色い胃液しか出ることはない。

窓の外では強い風が病院に直撃している。桜の木は大いに揺れに揺れて僅かな花を散らす。

専属医たちがどうにか手を尽くそうとする。病の器であるぼくではなくてもわかるほどにぼくは衰弱していた。

この世界と境を異にするというのにさほど未練はなかった。思えばろくなものではなかったからだ。好きなことはなにもできずただひたすらに同じ天井を見ていただけだった。

最終的には多くの人に見捨てられてしまったがそれまでぼくはずっとその人たちの援助で生き延びることができた。その恩を返すことは難しそうだ。

もし、生まれ変わることができるのなら人を助けることのできる人間になりたい……そう願った。





優しい風に吹かれてぼくは目を覚ました。どこまでも果てしなく広がる草原の真ん中でぼくは寝転がっていた。天さえ貫いてしまいそうな山々に囲まれ、豪勢な王宮らしきものも霞んで見える。

ぼくは突如おかれたこの状況を理解することができなかった。ここがどこなのか、なぜここにいるのか……。

そして。

「あれ?」

なぜ体が言うことを聞くようになったのか……。

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