第2話 秘められた力
宿に帰った俺は村の木でできた手作りのイスに座って目の前にいる
えっと、念願のパートナーが悪魔でしかもガキ。名前はノーラルと言って、それ以外にどこで生まれたのか、好きな食べ物は何か、どれ程の力を持っているのか等の詳しい情報は何も無い。
そしてこれから俺はこいつとダンジョンを攻略していかなければならない。と…
まずノーラルの事を詳しく知る必要がありそうだ。
「お、おいノーラル?」
「ん、なんだ?」
「お前の好きな食べ物ってなんだ?」
とりあえず簡単そうな質問から。
「好きな食べ物はハチミツキャンディーだ!」
…こいつ本当に悪魔なのだろうか。
甘いもの好きなただのガキじゃないのか?
「お前はどこで生まれたんだ?」
「どこ?知らないよそんなの。まっ暗いところにいて、ものすごく眠くて気がついたらここにいた。」
いったい何を言っているんだ…
あ、でも確かにノーラルが姿を現した時によく寝たとか言ってたっけ。
まっ暗いところとはどこだろう。俺が知るべき世界じゃない…のかな。
「なぁ、お前は自分の力がどれくらいかわかっているのか?」
「え、うん。そりゃもちろん。俺にはすーっごい力があるんだぞ!」
「じゃあ、その外にある練習場でちょっと力を見せてくれよ」
宿の外には勇者に必要な力を上げるための練習場がある。
俺はここで日々ダンジョンに入ってモンスターに倒されない為に練習をしている。
「んじゃあの数メートル先にある的を、どんな方法を使ってもいいから2つに破壊してくれ。」
「おう、わかった!!」
そう言うと、ノーラルは何かブツブツと呪文を唱えるように呟き出した。
するとノーラルの周りから空気の色が変わるのを感じた。今までとは違う、ガキとは違った目つきに真剣な表情。そして悪魔と名乗るだけあるオーラが彼の身を纏う。
「クレゾ・バーン…」
ノーラルがそう唱えた瞬間に彼の組まれた腕から、一直線に伸びる黒い光が見えた。それは本当に一瞬の出来事で、それでいてその光は俺の目に残り続けた。
伸びた黒き光は的の真ん中を射抜き、的は真っ二つどころか跡形も無く消し飛んでいた。
こいつはただのガキじゃない…
俺はその力を前に恐怖さえ感じた。その力が自分に向いてしまえば俺にはもうどうする事もできないだろう。
「わ、悪いライカ!的がなくなっちった。」
ノーラルは二ヒヒと笑顔を見せる。
普通にしているとほんとただのガキなのに。
なんて力なんだ…
「あ、ありがとうノーラル。お前、すごい力を持ってるんだな。びっくりしたよ。」
「えへへ、そうか?そんな言われるとちょっと照れるなぁ〜」
これだけの力があれば俺らはどんなダンジョンでも攻略出来るんじゃないか?というか俺必要ないんじゃないか?
そう考えながら、俺は部屋に戻って晩飯の支度を始めた。
「ノーラル、今日のご飯は何がいい?」
「俺が好きなのを作ってくれるのか!?」
「あ、あぁ、まぁ下手だけどなんか作ってやるよ。」
「ほんとか!なら俺は今ハンバーグが食べたい!」
「わかった、ハンバーグな。」
俺は儀式の帰りに市場で手にいれた肉を使ってハンバーグを作り、ノーラルにご馳走した。
「ライカ!このハンバーグすごく美味しいぞ!!」
なんだよ、嬉しい事言ってくれるな。悪魔のくせに。
そして俺はノーラルがご飯を食べている間にお風呂をすませ、今度はノーラルがお風呂に入った頃に皿を洗う。
宿には俺しか住んでいないのでもちろんベッドは1つだけ。どちらかはベッドで寝れない。か、または2人でベッドに…いやそれはさすがに無理かな。
結局、ノーラルにベッドは取られた。
俺はしばらくのうち来客用の布団で寝ることになりそうだ。
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