幼き悪魔と始めるダンジョン攻略

トラ

第1話 パートナー選択

 ―ダンジョン攻略。

 それは自分の知らない新たなダンジョンを、自分の手で切り開くこと。それは勇者の中で1番の憧れであり、1人だけで成し遂げる事はまず不可能。だからみな、パートナーを選びお互いの力を合わせ、弱い部分を助け合いながら攻略を進める。

 そして今日は俺の出番。

 俺の名前はライカ。

 実力、年齢が共に儀式を受けるに値すると認められ、今日俺はこうして儀式を受けることとなった。

 パートナーを選ぶ為にはまず、俺が生まれ育ったこの『コルト村』の伝統の儀に参加しなければならない。

 そして儀式の中でパートナーを選び、村長に報告、その場で村長から許可を貰い、儀式内で集まった村人に公開する。

 その儀式が今から始まろうとしている。

 コルト村は年々人口が減少の傾向にあり、今回儀式を受けるのは俺1人。

 参加人数が俺1名となると村の人々の目が一斉に俺に刺さる。

 そして儀式が始まった―


 まず器に入った村の泉の聖水を飲み干し、その器を前方にある壇上に持っていく。

 そして壇上に器を置き、あらかじめ用意しておいた自分の望むパートナーが記された書物を器の上にかざす。

 普通ならこの後に村長に報告をして村人に公開するのだが、俺1人なので村人、村長が見ている前で書物をかざすことになる。

 もちろん、俺が望むのは花の香りが体から漂い、スタイル抜群、装備はところどころ透けている若い女性の魔法使い!

 決していやらしい意味ではなく、ダンジョンで敵に油断させる為だ!

 別に俺が得をする為ではない!目の保養等ではない!

 常に勇者とはダンジョンの事を1番に考えているからこそ若き女性の透け透け魔法使いを選んだ。


「さぁ、俺が望む魔法使いよ!姿を現せ!」


 掲げた書物が光り輝く。

 目の前の光に俺は反射的にまぶたを閉じた。


 そして目を開いた俺の前に、これからのそのパートナーが姿を現した。


「ふぁー、よく寝たぞ。ん、お前、誰だ?」


 俺の目の前に横たわっているのはいい香りの透け透け装備の若い魔法使い…ではなく、黒く短い羽をパタパタさせ、2本の角、少し長い鉤爪、目元には何やら怪しげな紋章がついた黒髪の男の悪魔。そして驚くべきはその身長。

 上から下までを何度見渡してもたったの130cmしかない。


「あ、あれ、おかしいな。なんで悪魔のガキがいるんだよ。」


「ガ、ガキとはなんだ!!お前、失礼だぞ!そもそも俺様を呼んだのはお前だろ!」


 なんとも幼い声。まだ声変わりなど知らないであろう声が俺の鼓膜を揺らす。


 こいつ今、呼んだのはって言ったよな。

 俺が呼んだのはまず使で悪魔なんかじゃない。

 なんでこんな悪魔のガキが俺のパートナーなんだよ!


「そ、村長!!こいつ、こいつ違うんです!こいつはパートナーなんかじゃなくて…」


 村長は俺の声に聞く耳を持たなかった。


「勇者ライカのパートナーを、この悪魔『ノーラルド・サタン16世』とする。」


 は!?お、おい嘘だろ!?

 俺のパートナーが悪魔!?

 なんでそんな種族と一緒にダンジョン攻略しなきゃならないんだよ!


「俺の名はノーラルド・サタン16世!ノーラルって呼んでくれ!よろしくな!」


 小さな悪魔は尻尾をパタつかせながら宙に浮き、俺にそう告げる。


 夢であってくれ。頼む!

 いくら願っても目の前の現実は変わることはない。

 俺はこれからこのノーラルと名乗る幼い悪魔とダンジョンに入らなきゃならないのか…

 俺の魔法使いは、花の香りは、透け透けの装備でスタイル抜群の若い魔法使いはどこにいったんだ!!!!

 村人の声援に囲まれた俺はこれからのダンジョン攻略の雲行きが怪しくなるのを感じた。

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