第6話 人生はミステリー小説 出題編

たしか、2009年の年末だったと思います。

うちの玄関先に、大家さんが葉牡丹を飾っていました。とても寒く、まだ雪は降っていませんでした。


そんな年末の出来事でした。

2日連続、玄関先に小鳥の死骸が落ちていたのです。



大抵、わたしが住む街は1月になると雪が降り積もります。そうはいっても、1センチ積もれば上等なのですが。

おうちにはまともな暖房器具がなく、まして一軒家なものですから、冷気やら隙間風やらで、とても寒いです。あ、一軒家の弊害のひとつかもしれませんね。


私のひとり暮らししていた旧邸宅は街の小高いところにありました。私がひとり暮らしをはじめた年も雪が降り積もりました。二階の窓からこの街を眺めると、近隣住宅の屋根の雪はすっかり融けていたのに対して、うちの屋根にはしっかり雪が積もっていたのを思い出します。

このお家は雪からも冷気を得ている。そりゃ、寒いわけだ。

どんなにお家を暖かくしても雪が融けなかったので、お湯を屋根にぶちまけて融かしたのを覚えています。

何はともあれ、あの事件の時はまだ雪は降っていませんでした。



事の発端は、玄関掃除でした。

年末には、大家さんがうちの松の木の手入れをしてくれます。おそらくついでに門松をつくるために、松の枝を切るのでしょうね。

しかしながら、大抵玄関の後始末はほったらかしなんです。大家さんはおじいちゃんなので片付けを知らないんです。松の葉や枝が、そこここに散乱していました。


玄関は閂錠だったので、内側からしか鍵をかけることはできません。このため、家の出入りは基本的に通常の鍵で施錠できる裏口からおこなっていました。そういうこともあって、玄関を行き来するような動線はなく、家の前は結構とっちらかってました。

どうせ、うちは三件並びの真ん中のお宅、玄関の目の前は壁でしたし、だれも通らない道だったので、多少玄関先が汚くても、だれも気にしなかったとおもいます。

でもさすがに、新年を迎えるにあたり、福を呼び込むためにも、せめて年末年始休みには毎日玄関掃除をしようと思い、実行していました。



そんなある日の出来事でした。

冒頭にもお話ししたとおり、玄関先で鳥の遺体を発見したのです。

しかも、2日連続。



被害鳥について、1日目はスズメ、2日目は黄色のカナリヤでした。遺体検証の結果、カナリヤに至っては目を潰されていましたが、それ以外の外傷は見られませんでした。

流石に手で触れるのはこわかったので、ちりとりで遺体を回収し、裏山の木に返してあげました。


年が明けて正月のご挨拶周りをした時に、地域のみなさんに相談しました。当時、鳥インフルエンザが猛威をふるっていたので、他の家でもそういうことがあるのか聞いてみたのですが、そんなことはなかったそうです。ニュースでも、わたしたちの地域についてはなんの報道もありませんでした。



要約すると、以下のように考えられます。


2日連続、わたしの家の玄関先にピンポイントで鳥が死んでいて、それは鳥インフルエンザではない。

象の墓場みたく、わたしの家が鳥の墓場ではないと仮定すると、なにものかが意図的に鳥の死骸をうちに投げ込んでいた。

つまりこれは、殺鳥および死体遺棄事件、ということになります。



あはは、ミステリー小説みたいですね。

犯人は誰で、なんの目的があったのでしょうか?


< 解答編へつづく >

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