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どうして俺が山の上で朝日を拝んでいたのかと言うと、それは昨日の開店時間の少し前まで遡る。
ミクリさんと一緒に詐欺占い師をおまわりさんに預けて、制服に着替え終わったと同時に、不躾に勝手口がガチャリと開いた。
『明日暇?』
突然扉を開いたかと思ったら『明日暇?』ってなんだよ。まず挨拶してから入ってこいよ。親しき仲にも、ってやつがあるだろ。
『なに、急に』
『即答しないところを見ると、暇なのね』
『いや忙しいけど』
『絶対嘘』
『大掃除とか、あるだろ』
『どうせあんたの事だから日頃から綺麗にしてるんでしょ。今更大掃除なんて必要ないって』
お前は俺の家の何を知ってんだ。
『えーなんか面倒臭そうだし』
『そんなことないって! 絶対楽しいから! 話だけでも聞いて』
『なに』
『山登り!』
『ヤダ』
『即答かー、うん、予想してたけど。はなちゃん、行くわよ』
『行かない』
『ミクリさんが連れてけって』
『何の話』
『なんか厄除けで、一緒に連れて行ってあげた方が良いって』
その後、仕事を終えて仮眠を取った後、山に登った訳で。
ちなみにミケが山登りをしようと言い出したのは、ミケの趣味が山登りだからだ。俺は違う。山に登ったのは今日が初めてで、装備は全部されるがままだ。
あんなに眠かったのに、今はそんなこともどこかへ飛んでいってしまった。
「なんだか山の上から見る朝日って、特別でしょう? なんか、洗われているって感じで」
「ん」
なんとなく、だけど分かる気がする。浄化? みたいな?
ミクリさんに言われたから来たってこともあるけど、心地いい疲れと気持ちが良い空気で、なぜかとても身体が軽くなった気がした。
「あー、良い日だ」
「えぇ、そうね」
この最高の景色を目蓋に焼き付けるられるように、じぃっとただただ見つめた。
明日の筋肉痛の事は、今は考えないでおこう。
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