第6話 昔 ”産後うつ” になりまして ①

母親業 超初心者のころ、数時間の プチ家出をしました。


当時3か月ほどの、第1子をおいて、


主人が もうすぐ出勤時間という、平日の午前7時。


「もう、無理~~!!!!」


と、叫んで 1人 自宅をとびだしました。


もう無理。


子供が、昼夜問わず 30分以上眠らない。


「オレが抱くと、泣くんだもん!無理だよ」って・・・あなた、父親じゃない。私だって・・・。


子育てが、こんなに大変だなんて。孤独だなんて。


頭の中で、そんなことがグルグル回り、気付いたら 新幹線の切符売り場に。


最高に眺めが良くて、広いベッドとお風呂、美味しい食事つきの 高級旅館ってやつに行ってやる!!


そこで、ゆ~っくり ゆ~っくり 休むんだ!!


携帯は、電源切ってやった!


お金も、ふんだくってきた!


私は、今 自由だぁ~~!!


平日だから、きっと、高級旅館も 1部屋くらい空いているはず!


さぁ、どこへ行こう? 西?東?


そう思って、路線図を眺め、眺め、眺め・・・。


行きたくて、行きたくて、たまらなかったのに。


いくら眺めても、行き先が決まりません。


少し気持ちを落ち着けようと、近くのカフェに入り、妊娠前に飲んだきりの コーヒーを飲みながら 外を眺めていました。


しばらく ”育児” という牢獄にいる間に、シャバは こんなことになっていたか(・・・というほど、ホントは変わってないが)


シャバの空気は、最高だぁぁ。


そうして、長いこと 平日の朝の街を見ていました。


妊娠中から続いた 禁欲生活。


母親は 健康第一、ストレスをためるな。


食事は 野菜中心。


適度な 運動をせよ。


テレビも ネットも オススメしない。


家事も しっかり。


生まれた子供は 清潔に。


お腹を 空かせぬように。


病気を させぬように・・・。


初めての母親業に どこかで目にしたこと、他人様から言われたことは、できる限りやった。


もし、少しでも怠ったら、この非力な我が子は 死んでしまうのではないか。病気になってしまうのではないか。


全ては 子供の為。


いい母親になりたい。ならなければ。


そう思って、頑張って、頑張って・・・


その結果が 子供をおいて、家出かい!?


何だ、コレ!?


私の何がいけなかったのだろう?


何が?


時間が経つにつれ 冷静になり始めると、悲しいかな、高級旅館はナリをひそめ、代わりに現実が次々と 頭の中を覆いました。


主人は、怒っているだろうな。


子供は、泣いているだろうか。


結局、昼過ぎに、家に戻りました。


玄関のドアを開けたら、耳に携帯をはさみながら、号泣する子供を抱く 主人がいました。


「携帯の電源は切られると、困るよ」 とだけ言って、主人は、会社に向かいました。


その後、現在に至るまで その日のことを、主人は私に何も言わないでいます。

それは、とても感謝しています。私が逆の立場なら文句をかなり言っていたでしょう。


そのプチ家出から、私は、近所の児童施設に、子供を連れて ほぼ毎日 3年間通いました。


児童施設に通うくらいなら、本当は 1分でも寝ていたい。


でも、どうせ寝られないし、精神状態ボロボロだし。


とにかく、この状態を 脱出しなければ ”産後うつ” で事件を起こすのは、時間の問題だ。


こうなったら、ヤケクソで 児童施設にすがって、すがって、すがりついてやる!!


待っていろよ!近所の児童施設!


これが、家出して 私が出した結論でした。


そんな、迷惑な母親を受け入れてくれた、児童施設でのことは また、次回に書こうと思います。

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