解決編 第10話-2
「一宮蒔苗は自分のためにトイレで善良子に水をかけ続けた。風邪で期末試験を休んだ善良子の成績がこれからの人生にどれほど影響を与えるのか軽視してはいけない。死んでよし。
二ヶ瀬留次はたかだかお菓子を持ってきたことを注意されただけで弁当を盗み続けた。昼ごはんが食べれない善良子がどれだけ空腹に喘いだか分かるか。親に迷惑をかけないようにどれほど小遣いを捻出したか分かるか。死んでよし。
三条志津子は遅刻を告げ口しただけで友達の輪から省いた。自分が利用するために友人に加えておいて、自分の悪さを咎められたらすぐに捨てる。友達は使い捨てじゃない。死んでよし。
有川四葉は自分が自分が足を引っ張ったくせにそれを咎められるのを拒んで善良子に罪をなすりつけた。そのせいで善良子はそれを引きずり人生の可能性のひとつを失った。死んでよし。
五木裕規は二ヶ瀬類似と三条志津子の仕打ちを――イジメの内情を知っておきながら簡単に事を済ませた。その後、罰を受けていたとしても罰し足りない。死んでよし。
六鎗杏は善良子の支えとなっていた彼氏を奪い、その彼氏をも簡単に捨てた。全ては善良子を傷つけるためにそんな暴挙に出たのだ。死んでよし!
七種奈々緒は善良子の身体に火傷の跡を作った。自分の怠慢で自分の居場所を失ったというのに。奪われたと善良子に八つ当たりして。死んでよし。
八月朔日淳は六鎗に言われて偽彼氏になって、六鎗が奪った彼氏を捨てるタイミングで善良子を捨てた。苦渋の決断だったと言い訳していたが、ならば最初から苦渋の決断とやらをして六鎗から逃れればよかった。死んでよし。
九石風香は善良子が自殺したいと言ったとき、親が勤める病院から睡眠薬を盗み出し、善良子に渡した。それがなければ善良子は死ななかったかもしれない。親友なのに助けなかった。死んでよし。
十塚剣は悪質だ。ナンパ失敗の腹いせに道路に善良子を突き飛ばした。突き飛ばされた善良子は意識不明の重体になり、立ち直ったが精神的に危うい状態だった。死んでよし。
聞いて分かっただろう。どいつもこいつも善良子を苦しめた最低最悪の死んでいい人間だ。
だからこそ殺してやるのだ。
もう分かっていると思うが、僕が魔女狩りを計画したわけじゃない。
魔女狩りを計画したのは善良子の父親、峰内十三氏とそれに加担することにした八月朔日淳と九石風香の三人だ。
峰内十三は有名なゲームの開発者で今回の魔女狩りの舞台は彼が用意した。VRゴーグルと仮想現実空間を利用して現実には見えない殺人鬼を作り出し、ひとりひとりを殺す計画だ。
それを実行するのが八月朔日淳と九石風香。八月朔日は偽彼氏のくせに、偽彼氏として日々を過ごすうちに本当に善良子を好きになった。でも自殺を止められなかったから、十三氏に力を貸したらしい。九石は親友だったのに止められなかったからだ。これだけを聞くとふたりにはすごい後悔があったように見えるだろう。
けれど八月朔日は単に六鎗に逆らえなかっただけで、九石が善良子の自殺を本気で止めようとしなかったのは自分が好きな八月朔日が善良子を振ってもなお、善良子が好きだと分かって嫉妬していたからというのを僕は知っている。
ふたりはそれでも峰内十三を手伝って、罪を償おうとしていた。なんだそれ。そんなことで償えるとでも? 償えるわけないだろう。しかも八月朔日も九石も今回の計画で死のうとは思っていなかったらしい。もちろん、開発者である峰内十三もだ。ふざけるな、大いにふざけるな。
自分たちに罪がないとでも思っているのか。峰内十三だって、善良子がいじめられている期間、何の手助けもしなかった。何日も家に帰らずゲーム開発に没頭していたくせに、善良子が死んで、それがきっかけで離婚して後悔して復讐して、それでなお生きていようとするなんておこがましいにもほどがある。
だから僕が魔女狩りを乗っ取った。なんでお前がそんなことを? なんて問わないよな。
ここを見つけた時点で僕が何者であり、どんな関係性か知っているものな。ああ、けどそうか。
水出善良子と僕との関係性についてはそういえば、教えてなかったね。そろそろ発表しよう。
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