全滅編 第16話

 四葉の消失に合わせて出現していた突起物が消え、後ろから徐々に消えていたはずの道にも明かりが灯った。

 犠牲者が出たことで罠が停止したのだとしたらなんとも憎たらしい話だ。

 それでもまた作動しないとも限らないので四人は急いで階段まで向かった。

「こんなに近かったの?」

 ふと後ろを向いた七種が下に続く階段が意外と近くにあることに驚く。

 おそらく五十メートルもない。

 それ以上の距離をずっと走っていたはずだが、どうやら迷いの森のように同じ場所を何度も通っていたらしい。

「先に進むぞ」

 ボサッとしているように見えたのか十塚が促し、七種も三人のあとに続いて階段を昇っていく。

「人形が減ってる……くそっ!!」

 中腹にある壁に埋まったショーケースの人形は四つになり、商人の人形が消えていた。

 やるせなくなって十塚は壁を叩く。

「それより、これ……」

「そんなことってあるの……」

 ショーケースの横には恐るべきメッセージが残されていた。

 それを既に読んだ十塚たちは言葉を失っていた。

「マジかよ……」

「こんなんないっしょ」

 書かれていたメッセージは魔女のヒントだった。


『魔女のうちひとりはとっくに死んでいる』


 そのヒントはあまりにも理不尽のように思えた。

「まるで【そして誰もいなくなった】そのものだね……」

「どういうこと?」

「犯人は死を偽装するんだ。だから魔女もそうしているってことだろう」

「確かにそう考えると四葉さんが転んだ障害物が出現したのも、一宮さんを海中に落としたワイヤーも魔女が見て操作していたからこそできる絶妙なタイミングな気がするね」

「つかじゃあ無理ゲーじゃね?」

「でも考えようによってはこの中に一人、死者に一人だから考えやすくもなったように思える」

「はあ? 難しくなってるって。つかヒントなさすぎ」

「確かに普通なら一人ぐらいは特定できても良さそうね」

「特定させる気なんてあんの? 魔女はあーしら全員殺すつもりなら、生きてるほうの魔女は最後までぜってぇ分からないようにしてるし」

「それはそんな気がするな」

 十塚が苦笑いをする。

「それでも誰かが最上階までは行けそうな気はするね。魔女狩りっていうゲームである以上、そこはフェアだと思う」

「けど全員じゃねぇーから」

「そこは頑張って全員にするんだよ」

 励ますように淳が言うが

「淳ってそんなキャラだっけ? なんか大学生になって鬱陶しくね?」

「ぼくだって変わるさ。みんなだって水出さんの自殺で何か変わったはずだよ」

「……変わってねぇーし」

 思い当たる節でもあったのか、苛立つように杏は言い返した。

 気まずくなる前に十塚が手を叩く。

「よし。とりあえず階段で留まっていも意味がない。上を目指そう」

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