全滅編 第11話-2

「なんだろうあれ……?」

 道中、石が不自然に開かれた場所を四葉が見つける。行くときはモンスターに必死で気づかなかったのか、最初はなかったのか、六人には見当もつかなかった。それでも怪しいには違いない。

 近づいて覗く。

 露出した地面には、石板が嵌まっていた。そこには魔女の手がかりが彫られていた。

 初めてのヒントだ。

 けれどそれは同時に、疑惑が芽吹く瞬間でもあった。


 『魔女は十人の中にいる』


 見えぬ魔女が二人、どこかに潜んでいると思っていたもののほうが多数だろう。

 とはいえ生存者のなかには半ば予感めいてそうだろうと感じていたものもいたのかもしれない。

 その手がかりはもしかしたら嘘なのかもしれない。そういう罠なのかもしれない。

 生存者の中にはそう思いたいものもいた。

 けれど手がかりとしてその言葉が現れた以上、疑惑が芽吹いてしまうのは仕方のないことだった。

 生き残っている全員が、全員を見渡す。誰が魔女なのかと吟味してしまう。

「とりあえずは宿屋に向かおう」

 しかし誰が魔女なんて分からない。当初の予定を覆すことなく全員が宿屋へと向かった。

 一言二言喋ったかもしれないが、全員が全員に疑惑の目を向け一挙一動に注意していてほぼ無言だった。

 道中に展示されていた人形は、踊り子が欠け六体になっていた。

 志津子を部屋に安置して、全員が自分の個室へと戻る。

 まだ夜でもないが、魔女がこの建物の中ではなく、十人の中にいると分かったこの日はもう動く気になれなかった。

 がちり。誰もが何も言わずとも部屋に鍵をかけた。

 その日、蒔苗は寝る前にメモを書いていた。

 スマホは奪われたのに、自前の手帳だけはなぜか奪われていなかった。

 その手帳の一ページを破いて蒔苗は今まであったことを書き記していた。

 書き終えたメモをずっと持っていても良かったが、何か予感めいたものに身震いをして、この部屋にメモを隠しておくことに決めた。

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