全滅編 第2話-3
「収穫はこれだけ、か」
長い時間をかけて見つかったのは、三本の長い棒だった。
とりあえず護身用にと淳、留次、十塚の三人がそれぞれ持つことになった。
「やっぱ進むしかないって」
志津子が急かすように告げる。
「そうだよなあ。ここにいても始まらない。最上階に行かないと告発できないんだろ? じゃあ進むに越したことはない」
十塚が同調して志津子に笑う。志津子はなんだか照れたように嬉しげだった。
整った顔立ちの十塚が自分を気に入っているという自負が志津子にはあったからだ。
「反対の人は……いるわけないですね」
蒔苗が周囲を見渡して反対者がいないか確認をした。もっとも反対したところで現状が打開するはずもないと誰もが気づいている。
蒔苗の言葉は同意するかしないかの確認ではなく、自分たちが共同体であるということの確認だった。
「俺が扉を開ける。先生とやらは怯えて使い物にならねぇし」
冗談ではあるが皮肉たっぷりに十塚は告げた。反論する元気もないのか五木はそんな様子を見せない。
肩をすくめたものの気を取り直して十塚はゆっくりと慎重に扉を開ける。
その先には薄暗い廊下が続いていた。
廊下を形成する青いタイルには白線で縦横に何本も引かれていた。壁も同じ造りだ。
「次のエリア間へ移動するときのロード時間を表現しているつもりかな?」
留次がぼそりと呟く。
「おい、これを見てみろ」
先頭を行く十塚が廊下の壁に何かを見つける。
「すげえ気味の悪い人形が置いてあるぜ」
「これって……」
十塚の後ろにいた淳が驚く。十体の人形がそこには置いてあった。
勇者に戦士、魔法使い、僧侶、盗賊、商人、武道家、踊り子、賢者。そして占い師だと一目でわかる造型の人形だった。
魔王を倒しに行く冒険者のパーティーでも表現しているのだろうか、けれどどれもがあくどい顔をしていた。
「これ、あーしたちの服装にそっくりじゃね?」
「悪趣味ね」
蒔苗がぼやき、四葉が悪い予感に吐き気を覚えたのか手で口を覆う。
「九石さんが危ない」
十体の人形のうち、唯一倒れ、首の取れている占い師の人形を見て不安を覚えた淳が走り出そうとする。
「待てよ。単独行動はまずいって」
十塚が淳の往く手を遮り、引き留めた。
「どういうことよ。ねえ、どういうこと?」
「まずはあーしたちに説明しなさいよ」
「さっき言った小説ではひとり死ぬたびにひとつ人形がなくなるんだ」
「え、でも今、人形は十体あるじゃん」
「でも占い師の人形は倒れて顔も取れている。僕たちの服装が人形と対応してるなら、占い師は九石さんだ」
それだけで何を意味しているのか誰もが理解する。
先走った淳を追いかけて全員が走り出す。
「最悪だ……」
ひとり出遅れた五木だけがぼそりと呟いた。
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