成る人

kana

第1話


「診断結果が出た方からこちらへ

お並びください。診断書の発行をさせていただきます。」


アナウンスが聞こえて私は席を立つ。

今日も大人になることはできなかった。


定期的に行われる診断によって

「大人」と「子供」を判別するこの国では

年齢や外見は一切関係ない。

ある一定の条件を満たせば

大人と認められ、子供と判断された人は

その度合いによって

色々なものを制限される。


診断書を受け取った私は

その制限内容が

前と変わらないことを確認して

ため息をついた。


「はやく大人になりたい。」


今年23歳にして、私はまだ子供である。

先月、5歳下の弟は大人になった。


できることが多ければ「大人」か。

我慢や同調を覚えれば「大人」か。


そんなことを考えていても

自分がどうすれば大人になれるのかなど

わからなかった。


子供と判断された人でも一応

職に就くことは出来るが、任される仕事は

限られる。選べる職種も少ないし

給料だって大人と比べれば大分低い。

バイトみたいなものだ。


飲酒も禁止されているから

飲みの席では話を聞くことが仕事となる。

「この前の会議で俺は〜…」

大人たちの会話を茶と共に腹の底へ流す。

自慢話と悪口と、そんな言葉ばかりが

飛び交って、どんどん黒くなる。


「こんなのが大人だって言うなら

まだ子供の方がマシだわ。」



次の診断結果で、

私は「大人」と認められた。


診断書に「おめでとうございます。」

と少し掠れた文字で祝福された。

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成る人 kana @OoaoO

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