第十一章

 真奈も統合自衛部隊ジャストで訓練を受けているとは言え、アンドロイドのアンナほど早く走れるわけではない。つかれないようなスピードで森の中をつっきっていく。

 バトル・ステーショ用セントリーは、良心回路こそないものの人間のへの攻撃を回避するようプログラムされてはいる。しかし完璧ではない。

 たとえば攻撃対象と人間がいれば、とっさの判断で攻撃してしまうこともある。

一人で森の中へ入るのは確かに危険すぎる。菅野から、戦闘区域に接近されないよう命令されていたが、きくような女ではない。

「アンナ、セントリーの様子はどうだい」

「一基がわたしの進行方向に回り込もうとしている。距離約二千三百」

「うしろに回りこもうとしているのは」

「左前に二基。まっすぐ北、十二時方向にむかっている。企図は不明」

「………嫌な感じだね。カイザーの動向は」

「不明。セントリーの歩行音に妨害されている」

「そんなにうるさいって……セントリーはみんな、森の北のほうに集まってきてるのかい」

「もっとも遠いもので七時の方向、距離約五千」

「おかしいよアンナ。七基がすべてアンナを目指しているみたいだ。

 ともかくやりすごすしかない。進路をたたれないように急ぎな」

 真奈はアンナの進行方向を目指しつつ、菅野に連絡して状況説明した。

「そいつは妙だな。ロボ・セントリーは総てを攻撃するようにプログラムされているし、共同攻撃はしないはずだ。二体にとっての障害物としてしか、行動しない」

 菅野も妙な気持ちがした。室田社長たち「おれきれき」はベルリン郊外のツェッペリン・ドーム競技場にいる。興奮する十万人を収容する半透明ドームで覆われたアリーナには、巨大な立体映像がいくつも浮かんでいる。

 群集は興奮を高めている。その特別室では、室田社長たちが田巻二等佐官や、ヤシマ側の大神おおみわ秘書などと談笑していた。美しい秘書の目は、笑っていなかったが。

「しかしまさかの二大アンドロイド対決。ここまでくるために、各社とも払った犠牲は大きかったでしょうなあ」

「まあそうやろうけど………なにが幸いするか災いするか。出来ればワシコングあたりとの三つ巴で、ワシコングとカイザーが潰しあって欲しかったですわ。

 でも太平洋予選の不戦勝に続いて、まさかの二大強敵の脱落。アンナには神様がついてはるのかも知れまへんな」

 背の高い秘書の大神おおみわ夢見は、小さくつぶやいた。

「がんばって、アンナ」


「菅野さん、そっちはどうです」

 新日本機工本社工場中央棟医務室の特別室では、新しいロボレッグの最終点検を自分でやっている赤穂技師が、音声だけのヴァーチャル・マイクに話している。大きなペン状の器具を、自分の足のつけねにあてている。まだ培養細胞が間に合わず、接続部は金属がむき出しになっている。

 赤穂の耳元だけに、菅野の声が響く。

「ロボ・セントリーが、カイザーを無視するように動いている。

 カイザーにセントリーのセンサーを潜り抜ける、なんらかの機能があるのかな。または自分をセントリーとして認識させるとか」

「あの誇り高い技術僧兵団ハイルが、そんな姑息な手段を使うとも思えないな。

 むしろ……セントリーになにか細工されたのかしら」

「なに。どんな?」

「七基全部が、アンナだけを攻撃するようにプログラムされているとしたら」

「!大会は連邦軍も厳重に警備している。

 大会運営委員会が汚染されているのか」

「厳重なわが社の警備システムを破って、アンナの基本データを盗んだ連中よ」

 通信を終えた菅野は、かたわらの部下二人に言った。

「偵察衛星に接続。過去三十分のセントリーの動きをモニターしてくれ」

 案の定カイザーには目もくれていない。アンナだけを包囲しようとしている。

「アンナだけをおいつめてるって! やりやがったな」

 真奈はくらい森の中を走っていた。下は泥土や叢であり、走りにくい。息もきれてくる。

「ともかく今はセントリーから逃れるしかない。運営本部にかけあってもらちがあかない。

 奴らも自分たちのミスは認めたくないだろうし、プログラムを書き換えられたと認めたら、大会自体が無効になりかねない」

 菅野は真奈との会話を、本社の赤穂技師にもきかせている。

「運営委員会自体がそんなプログラムをしたって可能性は、ないんすか」

「まずない。セントリーの妙な動きに観客が騒ぎ始めたらことだろう。ツェッペリン・ドーム競技場や世界への中継は適宜編集されている。あたかもアンナ自身が集中攻撃を誘ったように、情報操作をはじめているらしい」

「なんて連中。どいつもこいつも役人根性とメンツかよ」

 真奈は立ち止まり、ユニ・コムでアンナを呼び出した。

「アンナ、聞いていたね」

「状況は理解した。前方十時方向距離二キロにセントリー二基、五時方向に二基、後方十一時方向三キロに一基。残り二基も、三時方向から接近しつつある」

「!それって、囲まれたってことかい」

「そうだ。地形的に言って脱出路開鑿は不可能に近いと推定される。

 十一時方向のセントリーを撃破、脱出するのがもっとも確実と計算される」

「それしかないね。そっちの位置と予定進路をユニ・コムに送って」

「接近しては危険だ。しかしあなたはわたしの警告を無視するだろう」

「だいぶわかってきたね。

 いざとなったらセントリーの前に立ちはだかってやる。良心回路はなくても、安全装置はついているから人間は攻撃できないよ!」

 真奈は無謀にもかけだした。


 アンナめがけて、森の奥から二十ミリの機関銃弾が飛んできた。さすがのアンナでもこの対空機銃弾に直撃されれば、ただではすまない。

 木々のあいだからの射撃は不正確になる。弾丸は細い幹にあたって破裂し、それを吹き飛ばした。アンナはほぼ北へと後退をはじめた。

「メイン電池へ強制送電。予備燃料電池一個放棄」

 腰につるした水筒状の燃料電池が一つ、落ちた。


「カイザーより少佐」

 低くおちついた高地ドイツ語の声が、ミュッツェ帽内臓スピーカーに響く。

 クアドリーガとよばれる装甲二輪車は、ほぼ全自動で動く。防弾風防の中に腰をしずめるファイト少佐は戦闘服ではなく、空軍の紺色の一般勤務服だった。

 ポットにいれた濃いコーヒーを飲んでいる。

「セントリーの動きを解析できたか」

「あきらかにアンナに集中しています」

 少佐はうすら笑いをうかべた。

「やはりな。こう言うことだったか。どんな手を使ったかは知らないがな。

 よろしいカイザー。背後からアンナに接近する」


「アンナより真奈。後方から急速に攻撃型セントリー接近。十一時方向のセントリーを光学確認まで約三分」

 その時アンナの後方から銃声が響いた。二十ミリ機関砲の弾丸がアンナをかすり、木の幹を吹き飛ばす。

「アンナ、今の銃声は」

「こちらの動きをとめるつもりだろう。二十ミリ機関砲の弾丸は各セントリーで百発。三十八口径機関銃は三百発と推定される。脅威はやはり二十ミリだ」

「一発で航空機を撃ち落とすほどだ。パンツァーヘムトにあたってもかなりのダメージだよ。ともかく自分もそちらに行く」

「それは極めて危険だ。真奈は遠ざかることを推奨する。

 前方のセントリー確認。攻撃に移る」

 すばやく走るアンナに、後退しつつあったセントリーは三十八口径の機関銃を乱射した。アンナは右へ左へたくみに走り、木の幹に隠れつつ接近する。

「連射ロケット弾、発射」

 それほど砲弾はない。七基相手だとセーブしなくてはならない。

 アンナは木々のあいだを通り抜けつつロケット砲を発射した。セントリーは両「腕」の機関銃をロケット砲弾めがけて乱射。弾幕をつくった。

 ロケット砲はセントリーの直前で爆発する。

 しかしそのセントリーは破片と爆風でひっくりかえってしまう。アンナはとどめをささずに通り抜けようとするが、倒れたセントリーはそのまま二十ミリ機関砲を連射した。真っ赤な鉢巻をしたアンナの頭を銃弾がかすめる。

 つづいて機関銃も乱射し、アンナは伏せてしまう。倒れたままでは照準がつけられない。それでもセントリーは銃撃を続ける。アンナ前方の木が二本、幹を銃弾で破壊されて倒れてきた。それを転がってよけるアンナ。

 アンナも振り返り機関銃で反撃した。セントリーの胴体に火花が散る。そこへまたアンナの後方から、二十ミリ機銃の弾丸が飛来する。

「アンナ、そっちどう」

「前進をはばまれている。六時方向から二基。距離一キロ。さらに四時方向から三基。あとの動向は不明だが、包囲されつつあるようだ」

「くそっ! アンナ一人をよってたかって。

 これがやつらのワナだったか。汚い真似を」

「やつらとは誰か」

「誰だか知らないよ! ともかく自分が行くから踏ん張ってなっ!」

「あなたにとっては危険すぎる。事態を打開できるとは思えない」

「ともかく戦友を見殺しにできないよ!」

 と森の中を走る。右肩にかついだ旧式小銃が重く感じられた。

 アンナはなんとか起き上がろうとするが、そのたびに脚部を破壊されたセントリーが、横たわったまま機銃、機関砲を発射する。あくまで足止めするつもりだった。その間にも他の六基は確実にアンナを包囲しつつある。

 アンナは横に転がり、匍匐前進してとりあえず倒れ重なった木々の向こう側にまわった。脆弱な遮蔽物だが、仕方なかった。

 アンナは倒木の陰からロケットランチャーを構えた。しかし発射したロケット砲弾はまたしても弾幕に破壊される。

 暗い森の中に爆音が轟き、鳥たちが羽ばたく。


 いくら特殊部隊で鍛えた真奈でも、軽量ヘルメットとパンツァーヘムトをつけて何キロも走れば、かなり疲れる。しかも四キロ近くある九九式短小銃を担いでいるのだ。息があらく、一度とまって水を飲んだ。

 さきのほうで銃声がし、森のかなたで爆発が起こった。

「アンナ、今の状況は」

「囲まれた。横だおしになった一基を含め、七基全部に三方から包囲された。

二基づつ三角形になり、わたしからの距離は約七百から八百メートル」

 真奈のインカムにも激しい銃声が聞こえてくる。

「アンナ!」

 脚部にダメージを受けたセントリーはなんとか立ち上がろうとするたびに、アンナの正確な射撃で脚を撃たれて転んだ。

 アンナを足止めする役目をになったこのセントリーは、ほどなく二十ミリ機関砲と、三銃身電動ガトリング銃の弾丸を使い果たしてしまった。

 残った六基は銃撃を続けつつ、距離をつめる。しかしアンナがまだロケット砲をもち、その機関銃の射撃が恐ろしく正確であることは、熟知している。

 セントリーたちは二十ミリ機関砲で木々をなぎ倒し、倒木を破壊。しだいにアンナの隠れる場所を粉砕しつつ、三十八口径機銃でダメージを与える。

 アンナは伏せたまま射撃するしかなかった。しかし照準があわせにくい。

 木々はふるえ枝葉は散る。セントリーはお互いを撃たないよう、三方向から射線をずらして接近する。

 アンナは地面を転がり、匍匐前進してセントリーが同士討ちする位置をとろうとする。時折セントリーは、仲間の弾丸に火花を散らす。

 すると瞬間、いっせいに銃撃がやむ。そのときアンナの確実な射撃は、もっとも脆弱な頭部の円盤状センサーを射抜いた。

 装甲版はあるが、一点への集中攻撃はかなりのダメージを与える。

 それでも多勢に無勢。アンナの無防備な頭を銃弾がかすり、パンツァーヘムトにくらいつく。


 首都郊外、ツェッペリン・ドームに現れた巨大立体映像を見て、十一万以上の観衆は興奮し始めた。英語とドイツ語を主体としたさまざまな罵声と歓声がとびかう。

「いいぞセントリー、アンナなんてやっちまえ」

「こりゃ八百長だ!」

「ひきょうだぞ!」

 あちこちで小競り合い、プチ暴動がおきかけている。

 南側の特別ブースの一角では、丸いめがねをかけた怪博士が、しぶい表情で目の前の立体モニターを見つめていた。

 やがて杖のさきにあるマイクに話しかける。

「少佐、これをどう見る」

 ファイト少佐は早く走れないカイザーとともに、アンナ包囲網へと近づく。時折、流れ弾が飛来し、クアドリーガの風防に火花を散らす。

「あきらかにカイザーに勝ってもらいたい連中の、仕組んだことですな」

「それで君はアンナにむかっているわけか」

「……戦場での判断は、わたしに一任していただくはずでしたな」

「その約束だ。わがハイルの名誉を傷つけないなら、どんな行動もかまわん」

「わたしも軍の名誉を背負っています」

 やがてクアドリーガは停止した。銃声が近い。

「カイザー。その一番太い木にのぼって、状況を転送してくれ」

 銀色の巨人はロケット砲と機銃を一度はずし、手足をつかって猿かかなにかのように、太い木をのぼりはじめた。

 巨体ゆえ、さすがに大木がゆれ、枝も何本か折れた。しかし乗用車なみの重さを持つ戦闘アンドロイドが、軽々と大木をのぼっていく。

 巨木の半分程度までのぼったとき、一キロさきの戦闘の様子が見えた。アンナは三方から迫られ、進退窮まっている。

「なるほど、完全な危機だな。よしカイザー、降りて来い。戦闘に参加する」


 真奈は九九式短小銃だけをもって、銃声のするほうへと走る。しかし銃は身をまもるためで、使えない。敵対ロボットにむかって発砲すると、マイナス十点となってしまう。

「くそ、どうすれば」

「五百瀬くん、菅野だ」

「もうすぐアンナが見えるよ」

「危険だ。南方一キロ、カイザーが接近している」

「えっ! このうえカイザーまで」

 真奈は立ち尽くしてしまった。六基のロボ・セントリーにくわえて宿敵がアンナを攻撃すれば、もう勝ち目はなかった。

「アンナ、状況は」

「悪化している。六基が銃撃しつつ接近。五百から四百メートルに迫っている。

 銃弾は四十パーセントを消費。ロケット砲弾は七発残っている。すでに二基にダメージを与えたと推測される」

「カイザーがそっちにむかってる。

 いざとなれば自分が盾になるから、踏ん張れ!」

「再度警告、危険すぎる。セントリーはもともと良心回路がない上に、プログラムが書き換えられている。人間でも平気で攻撃する可能性もある」

 当然、聞く耳をもつ真奈ではなかった。

 真奈は低いバイクのような音をきいた。視界の片隅でなにかが動く。電子双眼鏡をつかうと、木々のむこうを銀色の巨人が歩いていく。

 その横に、二輪の装甲偵察車が。

「カイザー!

 くそっ、アンナに止めをさすつもりだね。よってたかってなぶり殺しか」

 真奈の目から涙がこぼれた。息がきれかけていたが、森の中を走り出した。


「前方七百にロボ・セントリー二基確認。

 当方の接近を感知するも、アンナに対する攻撃を続行中」

「よしカイザー。五百まで接近して撃ち方はじめだ」

 アンナも、セントリーのうしろから迫る銀色の巨人を認めていた。

 セントリーの攻撃は激しくなり、遮蔽物になりそうな倒木も岩も二十ミリ機銃で砕かれていく。

 ついにカイザーが接近し、連射迫撃砲を発射した。

 しかしその砲弾は、アンナにむかって銃撃をつづけていたロボ・セントリーの頭部にある、円盤状のセンサー部を破壊したのである。

 すぐ隣でアンナを攻撃していた「同僚」はなにが起こったのか理解できていない。アンナの反撃だと誤解した。

 さらにもう一基、セントリーの頭部が破壊され、火花となって散る。さすがにロボ・セントリーは、背後から攻撃をしかけてくるカイザーにむきはじめた。

「な、なにが、おこってんだい」

「カイザーがロボ・セントリーの二基を倒し、一基の攻撃力を四十パーセントに落とした。こちらも反撃を開始する」

 アンナは立ち上がり、二百メートルに迫ったセントリーの頭部にロケット弾をぶつける。

 円盤状のセンサーの防護板に亀裂が入った。アンナはその部分に三十八口径銃弾を集中させた。ほどなくそのセントリーは頭部から火花を散らし、倒れた。

 薄暗い森の中に重機関銃や支援機関銃のマズルファイアーが光り、火花が華々しくちって下草を焦がす。濛々たる硝煙に交じって、倒れて火を噴いたセントリーからの黒煙が、視界を暗くする。

 まさかのカイザーの攻撃に、不正プログラムされたロボ・セントリーは混乱をはじめた。

 カイザーへの攻撃は避けるように命じられていたのだ。しかし自らを守るためにカイザーを攻撃しなくてはならない。自己保存機能が働きだした。

 カイザーは大木に身を隠し、正確に射撃を続ける。アンナも混乱し、攻撃を躊躇しているセントリーに銃弾とロケット弾を浴びせかける。

「なんでカイザーは、自分に不利な真似を」


「少佐。セントリーを攻撃しているのは君の命令だな」

 クラウス総裁の虚像が、クアドリーガの風防にうつる。座席でゆったりとコーヒーを飲んでいた少佐は、略帽を右手で軽くあげた。

「ええ。不名誉な勝ち方はしたくない。

 ハイルもそうでしょう。セントリーがアンナを打ち負かしてしまったあと、こちらにむかってくる可能性も否定できない。

 そうでなくても、アンナとの直接対決ができなくなる」

「……よろしい。君にまかせよう。名誉なき技術は、悪魔の道具にすぎん」

残ったロボ・セントリーは四基。うち一基は二十ミリ機銃を破壊されている。

 セントリーは「背中」を庇うように距離を置いて立ち、機関銃を構える。アンナとカイザーはその銃列をはさんで、七百メートルほどの距離を置いてむかいあっている。

 その様子は肉眼でも確認できた。少佐は静止衛星や望遠カメラからの映像で、カイザーの位置を確認していた。

「カイザー、セントリーの二十ミリ機銃は危険だ。極力さけろ」


「博士、カイザーはアンナを助けるのですか」

 エーファの虚像が、特別ブース内に立ち上がる。

「助けるわけではない。不正を正すだけだ」

「しかし、このまま放置すればカイザーの勝利は確実なのに」

「世界中の人間が許すと思うか。

 なにものが仕組んだことかは知らぬが、カイザーを作った我々やクライネキーファー重工が黒幕だなどと思われれば、大事だ。

 それに正々堂々と戦っても、カイザーがまけるはずはない」

 フランケンシュタイン博士も、引き下がるしかなかった。


「ファイト少佐も、なかなかやりよる」

 田巻は葉巻をくゆらしつつ、広場に立ち上がった巨大立体映像を見つめる。

「連邦軍の名誉を背負ってるよってな。なるほど、騎士道精神言うやつか」

 長身の大神秘書は呟いた。

「なにものが、厳重にガードされているセントリーのプログラムかきかえを」

「そんなことできるんは……」

 十余万の群集も、映像を見守る数十億の民も興奮していた。

 アンナに賭けたものもカイザーに財産をつぎ込んだ者も、カイザーの「義挙」に拍手を送っていた。


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