不確かな未来(その4)


「さて、春樹くんは何がしたいですか?」

 マスターは腰を低くして春樹くんを見る。

 春樹くんは舞彩さんの後ろに隠れながらもマスターが持ってきたカバンに興味があるのか背中を持ったまま覗き込むように見ている。

「そんな隠れて見てないで前に出て見ればいいでしょ」

 舞彩さんは春樹くんを後ろから押して前に押し出した。

 春樹くんはやや前に倒れそうになるが踏み止まった。マスターと目が合い固まる。助けを求めるようにチラチラ舞彩さんの方を見るけど舞彩さんは澄まし顔で拒否している。

 

私には馴れてくれたから大丈夫って思ってたけどダメらしい。

多分私にはもう馴れたはず、だって来る途中普通にお話してたし! うん! そう信じてる!。


「別に遊具で遊んでもいいんだよ?」

 マスターも迂闊に話せないし、舞彩さんは息子を崖に突き放す親のような感じで居て、春樹くんはオロオロしてる。そんな状態を放置するわけにもいかず私が口を挟む。

 春樹くんは私を見ると顔を明るくさせ公園にある遊具とカバンに入ってる物を見返す。

「ブランコ....」

 ボソリと春樹くんが呟く。

「じゃあ、ブランコ乗りに行こっか」

「うん」

 笑顔で聞くと大きな声で返事してくれた。

 春樹くんは走ってブランコの方へ向かっていく。

 私も春樹くんの走った後を歩いて追いかける。

 そんな二人を立って見ている舞彩さんとしゃがんで見ているマスターは多分同じ顔をしているのだろう。 

「それじゃ、僕たちも久しぶりに乗りますか?」

 舞彩さんに尋ねると微笑した。

「さすがに子どもが遊ぶ遊具に私たちじゃ乗れないでしょ」

「あれ見て言えます?」

 マスターはブランコの方へ視線を向け舞彩さんも同じ方向を見る。

 そこには立ちながらブランコに乗る春樹くんと横でゆっくりと乗っている私がいた。

 舞彩さんとマスターは顔を見合わせ笑った。

「二人とも来ないんですかー?」  

 私は乗りながら大きな声で二人に聞く。

「今行きます!」

 マスターは立ち上がりながら返事をした。

「ほら行きますよ」

「はーい」

 マスターと一緒に舞彩さんもブランコへ歩いて行く。

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