迷子のマイゴ(その6)
一階での買い物が終わり私たちは先に車に荷物を置きに戻り今はエレベーターに乗って上に向かっていた。
「本屋さんは何階なんですか?」
「三階です。確か映画館とは真逆の端っこにあったと思います」
エレベーターで三回まで上がると目の前にあった店はショッピングモールの端の位置していて中は黒くお客さんがレジにたくさん並んでいる。壁に付いているテレビにはもうすぐ公開する映画の予告が流れていた。
「マスター....」
「あぁ、まさに逆方向に上がってきてしまいましたね」
私たちは映画館を前に何とも表せない気持ちを抱えていた。
「まぁ、歩けばすぐですよ」
マスターが腕を伸ばし見えない本屋を指差して言う。
「この道を真っ直ぐ歩くだけですし」
「そうですね。行きましょう」
私は自分に言い聞かせるように元気に声を出した。
マスターとのんびり端から端に歩いた。
三階は映画館、フードコート、ゲームセンターなど後は雑貨屋さんがある。けど店の数的にはやっぱり服屋がたくさんあった。
「一階もそうでしたけど三階も人が多いですね」
辺りを見渡すといろんな店に人がたくさん入っている。
「休日ですしいつもよりも多いと思いますよ」
「なるほど。店の人たちは大変ですけど儲かりますね」
フードコートではたくさんの人がご飯を食べていて座る場所がほとんど無い。それでも店の前では人が並んでいる。
「飲食店は本当に大変ですね」
私は埋め尽くされたフードコートエリアを見てスゴいと思った。と同時にウチの店ではありえないだろうと思ってしまった。
「僕の店ではありえない光景ですね」
マスターはなに食わぬ顔で見ている。
私はまさかマスターからそんな言葉が出るとは思わず一瞬戸惑ってしまった。否定しようと言葉を考えるが今までを考えると否定できなかった。
「えっと、あの、」
「気にしなくていいですよ。分かってますから」
マスターは悲しい顔もせずいつものように笑っていた。
「あ、見えてきましたね。本屋さん」
私は話題を変えるために周りを見ると目の先には本屋が見えていた。
「そうですね。行きましょう」
私とマスターは早足で向かった。
本屋に着いた時だった。ふと横を見ると通路の端に泣きながら座っている女の子を見つけた。
「マスター先に買っといて下さい。私あの子を見てきます」
「え? 何って…」
マスターは聞き返そうと後ろを振り返ったが誰も居なくなっていた。
「あれ? 朱音ちゃん?」
私はゆっくりと女の子の方へ近づいていく。見た目は五歳ぐらいだろうか。
「ねぇ、迷子?」
私はしゃがんで女の子と同じ目線に合わせた。女の子は頭を下げたまま泣いている。
「お姉ちゃんと一緒にママを探そうか」
女の子の顔がゆっくりと上がってくる。
「ほんとう....?」
「うん!行こ」
私は腕を伸ばして立ち上がった。女の子も私の腕を掴み立ち上がる。
「どこらへんで迷子になったの?」
「あっちー!」
女の子が指差す方向に私たちは歩いた。
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