迷子のマイゴ(その4)


マスターにこの連休のことを聞かれて私は一から十まで説明した。

その時のことを思い出しながら楽しく話した。


「へぇ~、やっぱり高校生は元気ですね」

 マスターは話を聞き終えた最初の感想がこれだった。

「そうですか?」

 私は普通だと思っている。

「僕なんて三日間も連続で遊べないですよ。さすがに疲れます」

 マスターは恥ずかしそうに苦笑いをした。

「そんなことないですって!マスターと私なんてそんなに歳変わらないじゃないですか!」

「いえいえ、六歳差は結構だと思うのですけど....」

「そうですか?そんなに変わらない気がするんですけど」

「う~ん。朱音ちゃんは今の小学校高学年の子たちを見たら元気に思えるでしょう?」

 マスターは分かりやすいように例えを持ち出した。

「はい。確かにたまに見かけますけど元気だと思いますよ。」

 私はつい納得してしまった。

「まさにその気持ちが今の僕です」

 マスターは深く頷いた。

「えぇ!それはちょっと違うんじゃ....」

「いえいえ、一緒です」

 マスターは頑なに一緒にしたがる。

 確かに言いたいことは間違ってはいないけど誰だって子どもと比べたらそうなるんじゃ.....

「マスターそれってただ単に自分の運動不足を否定したいからとかじゃ無いですよね?」

 私は自分の中で目覚めた疑問を口に出す。

「そ、そんなことは....」

 マスターの目が泳いで私から視線が外れる。

 私は有無を言わさぬ目でマスターを見る。

「違うんです!元々スタミナが僕には無いんです。決して運動が苦手なわけじゃない!むしろ好きです。けどする時間が無いんです!」

 マスターは珍しくアツくなっている。

「だから徐々に衰えが....」

 マスターは腕を前に倒し悔しそうに話す。

「た、確かに喫茶店はあんまり動かないですもんね」

 私はスゴく申し訳ない気持ちになった。

「どこか出掛けましょうか」

 唐突に落ち込んでいたマスターが顔をあげるなりそう言った。

「ぇ....?」

 私は突然のことでよく分からなかった。

「話を聞いていたら外に出掛けたくなりまして、たまには二人でどうですか?」

「えっと....」

 私は目をパチクリさせる。まだ脳がこの状況についていけてない。

「あ、嫌ならいいんです。また今度一人でいきますから!」

 マスターは手を前に出して慌てた。

「あ!いえ嫌とかじゃないです。出掛けたいです!」

 私はマスターの言葉に即答した。



そして現在はマスターの車に乗り、ドライブ中。

あまり遠くに行くのはダメとマスターが言い近くのショッピングモールに行くことにした。私はてっきり運動する所に行くのかなと思ったけれどマスターが買い物したいからと決まった。私はどこでも良かったので私たちはショッピングモールを目指した。

私はマスターが車の免許を持っていたことと車があることに驚きを隠せなかった。

まさか喫茶店の裏に止めてるとは思わなかったから。

私は助手席に乗りマスターと他愛ない会話をしながら目的地を目指した。



「さぁ、着きましたね」

 マスターが駐車場に入るなり呟く。

「そうですね。そういえばマスターの買い物って何なんですか?」

 私はマスターの買い物が何なのか聞いていなく聞いてみた。

「食器とマグカップを買いたいのと後は本ですかね」

「へぇ~。漫画とかですか?」

「いえ、小説を一、二冊ほど欲しくて」

 車を止めて私たちは出た。

「平日の暇な時にたまに読んでるんですけどもう全部読んでしまってストックが切れたんです」

 マスターが笑いながらいう。

「あぁ、確かに読んでそうです」

 私は妙に納得してしまった。

「朱音ちゃんは読まないんですか?」

「本自体そんなに読まないですね」

 マスターは少し不思議そうな顔をして相づちを打った。


私とマスターは自動ドアを潜りショッピングモールの中に入って行った。


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