赤い糸(その3)
男の目はギラリとマスターを睨み、遠くから見ても怒っているのが分かるようだ。
私は男の言葉にビックリしてマスターの方を向いた。
「マスター!どういうことですか!」
私は机を叩き前のめりになる。
「ま、待ってください。僕には身に覚えがありません」
マスターは落ち着いてと言うように手を前に出した。
「嘘つくんじゃねーよ!!」
男も身体をマスターの方へ傾けて怒鳴った。
私は男の怒鳴り声にビクンッと肩を揺らした。人の怒ってる声は怖い。男性ならもっと怖い。私は少し震えた。けど今はそんなことより話を聞くのが先だ。
「二人とも待って下さい。まずは落ち着いて話し合いましょう」
マスターは手をイスの方へ向けて言う。
「まずはイスに座って深呼吸です」
私たちは言われるままイスに座り深呼吸をした。男の方も深呼吸して落ち着いたのか肩で息をしなくなった。
「まずは事情を話してください」
マスターは男の方を見ながら言う。
男はもう一度、深呼吸をしてマスターを見つめゆっくりと話し出した。
―俺には一つ年下の彼女が居る。俺は高三で彼女は高二だ。出会ったのは一年前、DVD屋さんで出会ったのが始まりだった。俺は見たかったヤツを借りようとした時、ちょうど彼女も借りようとしていた。マニアックな映画だったから俺は趣味が合うなと思った。最初は話さず終わった。次は本屋に、映画館、喫茶店と色々な所で会うようになって、俺はつい話しかけてしまった。彼女も俺と話したかったようで、俺たちはそこから仲良くなっていった。
趣味も性格も合うと分かった俺は運命的だと思った。二人で「運命の人」なんて笑いあって気づいたら付き合っていた。
学校は違うかったけど休日は二人で色々な所行ったりして幸せだった。
最近、俺は遠くの大学に行くって話をすると彼女が泣き出した。遠距離は嫌だと。でも俺は進路を変える気が無くて、喧嘩する回数と彼女を慰める回数が増えていった。
でも昨日、あれだけ嫌がってた彼女が笑顔で大丈夫と言い出した。俺は突然過ぎて理由を聞くと喫茶店のカッコいい人に相談したら楽になったと答えて俺はビックリした。俺が慰めても意味が無かったのに他の、しかもイケメンに話して楽になったってホレたからだろ?だから俺はこの喫茶店を探した。―
男はここに来た経緯を話すとマスターを鋭く睨んだ。
「お前がマスターだろ?」
マスターは何も言わずただ男を見つめる。
この話、マスターは悪く無い気が?でも彼女さんが悪いわけでもないし?あれ?と私は頭で考えるがよく分からなくなってこんがらがってきた。これはどうやって話を終わらすのだろう?この場に彼女さんが居れば良いのかな?でもそれじゃあ、男の人はもっと怒ってしまう気が....
私は頭を抱えてムゥ…と唸る。
無言が続くなか口を開いたのはマスターだった。
「はぁ....話すしかありませんね」
マスターは頭をかきながら困った顔でそう言った。
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