第3話
ステータス
技能
剣技:E 魔力操作:E 算術:E
技
無し
魔法
無し
称号
しがない商家の息子 おじさん
おばさん
◆◇◆
「ぬうぅぉぉおおお!!」
マイティからカードを受け取ったロウは、記されていた内容を目にした途端、俯き、全身をプルプルと震させ奇声を轟かせた。
マイティからは、ロウがどんな表情を浮かべてるかは、俯いてるせいで分からないが、恐らくというのはある。
「おじさん……分かっ──」
「マアァィイテェェィィイ!!」
「えっ!? 何!? 何なの!? って、……うっわ~」
──キッモ~
勢いよく上げたロウの顔は、水という水が溢れた酷い状態で、特に尖らせたクチビルが、マイティに最悪な印象を付ける。
「ありがとぅ!!」
「っ!?」
──ぎょぇええええ!? 寄るな~!! クチビルが!! クチビルだけは!!
マイティに戦慄が走る。
落ち込んでいたかと思えば、ロウがいきなり立ち上り、ハグ&チューを求めて来たからだ。
「ど~、っせい!!」
体を左右に振るフェイントが華麗に決まり、マイティはロウの魔の手を躱すことに成功した。
「
「何だよ、いきなり!! しかも、何なんだよ、ありがとうってさ!?」
「称号だ称号!! 俺はな──」
「称号って、しがない商家の息子のことだろ!? 全然、意味が分かんないよ!!」
「その下だ!! ほれ、
ロウから投げ渡されたカードを、即、確認したマイティは凍りついた。
「……な、な、な、何だよ、コレ!? 何なんだよ、コレ!?」
「良いんだぜ、
「止めろぉぉぉおお!! 何で!? あり得ないんだけど!? 前は無かったじゃん!?
な……お、おじさん?」
「……はぁ」
「…………」
──もう、面倒くせ~。いちいち体操座りでさ、途方に暮れないでくれる?
「ち、違うんだ!! もう一つあったじゃない!? ぼ、僕が驚いてたのはそっちだよ!!」
「……もう一つ?」
クルッ。
「う、うん。おばさん
ムクリ。
マイティは、ロウのお尻の片割れが持ち上がったことを感じ取った。
てか、見えてるし、見えてるから。
何かをスカす時みたいに、お尻を斜めにしているロウの姿を。
「ど、どちらかと言えば、僕はおじさんかな~」
──苦手な方だけど……
シャッキーン!!
「そうかそうか!!
「……そだね」
「勝った!!」
「ははは……」
気を良くしたロウは、引きつるマイティを他所に、立ち上がると高々に拳を突き上げ勝利に酔った。
もう、完全にスーパー勘違い野郎である。
「おじさん! ねえ、おじさんって!!
踊んなくていいから、ステータスをちゃん見てよ!! ほら!!」
「あん? どれどれ……ほぉ!? じゃ、返す」
「えぇ!? それだけ!? ちゃんと見た!?」
「ああ、見たぜ……まあ、見事にオールEだな」
ずっと、知らないふりをしていたのか。
また、知ってても家族だから、ずっと言えずにいたのか。
どちらにせよ、
「はぁ……おじさんさ、僕の先生になったのって、いつだったか覚えてる?」
「ま、まさか!?
「真面目に答えてよ!!」
「忘れる訳が無いだろう!! 六歳からだ!!」
「…………」
「だったら何だ!?──」
「無駄じゃない?」
「あぁ!?」
「こいつにはやる意味が無いって!!
おじさん、九年間もやってさ、今まで本当に思わなかったの!?」
「…………」
──無言、って肯定かよ!? やっぱり無駄だったんじゃないか!?
……だったらさ、もういいだろ!? 惨めな思いなんてしたくないんだ!!
「お前、それでもグリムの息子か!?」
「は!?」
「
「…………」
──何言ってんだこいつ
マイティのステータスカードにはハッキリと記されてある。
称号として、
だからマイティには、ロウが声を張り上げるほど、
「あぁ!? どうなんだ!?」
「…………」
先ほどから、マイティが無言なのは、ロウの言葉の意味を深く捉え、考え込んでいるからではない。
怒っているのだ。
この前読んだ書物の言葉を借りるなら、呆れを通り越して、激しく怒りがプンプンで○。
──お前だって
なんてゲスいんだと、マイティは震えた。
ロウのあの無言は、焦りを意味する。
九年間もみっちり修行をしたにもかかわらず、ランクは最低のE評価。
しかも、技は一つも覚えられていない。
もしかしたら、ロウは本当に自分の体しか見てなかったのかもしれないと、マイティはピンと来た。
まず、ステータスカードを初めて見て、余りにも無能っプリに絶句。
驚きを最小限に抑えたものの、堪らずカードを持主へと即行リバース。
そして、責任を逃れるべく無い頭をフルに使い出すも、疑われ始めた為に声を荒らげ誤魔化したと……
──なんだよ……ビンゴじゃないか
ロウだって、タダで先生をやってた訳じゃないはずだ。
ロウは、無駄に払い続けていたと思われ、九年間分の給金の返済を求められるのを恐れ黙ってるしかない。
だが、マイティはそのことに気づけなかった。
だから、最後の言葉だ。
お前の父親はあんなに偉いのに、何で息子のお前は何も出来ないんだ?
俺は悪くない!! 出来ないお前が悪いんだ!!
完全な開き直りである。
そして、最後には雇い主にはゴマをすることを忘れないという、なんと完璧な終わり方か。
──負けた……
マイティは膝から崩れ落ちた。
──まさか、おじさんに言い負かされる日が来るとは……
「いいか、
マイティは、自ら負けを認めた。
だが、大人げないロウは、マイティに容赦なく追い討ちをかけるのであった。
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