終結の行く末
少しだけ強力な炎魔法を放てば、魔王の死体は跡形も無く綺麗に消滅した。
一応、魔“王”という立場なのに装飾品も一切身に付けていなかったから、死体が骨も灰も残さず燃えた事で戦利品を呼べる物が残らなかったのは残念だけど。
でも、これで魔王が村の家を壊してまわる事はないし、誰かが怪我をさせられる事もない。
オレの胸の中でずっと燃え盛っていた復讐の炎も鎮まった。
子供達と指切した約束も、これで果たせただろう。
父さんの怪我も大分回復していて、そろそろ全快するらしい。
父さんの快気祝いに、魔王消滅。それも討伐したのはオレ。良い事尽くめだ。近々村をあげてのお祝いかな?
唯一不満な点があるとすれば。
オレは周囲に視線を巡らせた。魔王が滅んでからって周囲の景色が変わる事はない。オレが此処に辿り着いた時と同じ、なんにもない荒野が広がっている。
……魔王との決戦の地が、オレが華々しく勝利した地が、こんな何もない荒野だっていうのは、少し締まらないかもしれない。その1点だけ。
でもそんな不満は今オレが成し遂げた事に対する興奮に比べれば、小さな事だ。
何て言ってもオレは名誉の復讐を果たし、国の平和と安息を取り戻したんだから。
「其れに魔王の滅んだ地としては、却ってこういう荒野の方がお似合いだしな」
ざまあみろ!
叫びながらオレは足元に転がっていた剣を思い切り蹴飛ばした。胸の中に生まれた嬉しさはどうにも隠せなくて、ついつい顔が緩んでしまう。
こんな荒野に誰かが来るとは思えないし、持ち帰っても何にもならない、触るのも不愉快な剣なんて、きっと錆びて朽ち果ててしまうだろう。正に万々歳ってこういう事なんだと思う。
帰路に着くオレの足取りは、当然の事ながら軽かった。だって魔王を倒したんだからね!
うきうきと自然高鳴ってしまうオレの胸は、遠い昔の、懐かしい感情を思い出させた。初めて魔族を倒した時の記憶だ。あの時は「流石ね」とか「将来は立派な勇者になる」とか口々に言ってもらえて。まだ小さな、居ても居なくても変わらない様な魔族ではあったんだけど、それでも嬉しかったし、達成感があったんだ。
そんな感情に、何処か、ちょっとだけ似てた。
勿論、居ても居なくても変わらない様な、詳しくは覚えていない小さな魔族と、全ての元凶である魔王。
レベルも達成感も、違うんだけどね!
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