3
あの夜、オレ達は全てを失った。
放たれた炎はオレ達から平穏な日常を奪い、家族を奪い、家を奪い、其れでも飽き足らずに“国が存在していた形跡”さえ搾取していった。
惨劇から暫くの時を経て、オレがかつて国のあった場所へ出向いた理由は、今でも定かでない。
あれ程の惨状を目にしながら「もしかしたら誰かが生きているかも」「あれは幻覚だったのかも」という類の、子供染みた願望を抱いたからか。
せめて誰の物とも知れなくなっていても、骨を拾いたい、灰になってしまっていても埋葬したいという切望からか。
或いはもっと別の理由からなのか。
月並みな言い方ではあるが、その全てだったのかもしれないし、全部違っていたのかもしれない。
はたまた理由なんてなくて、ただ足が向いていただけなのかも。
だけど、理由がなんであれ、理由が有ろうと無かろうと、そんな事は関係なかった。
子供染みた願望は勿論の事、せめてもと望んだ切望さえ、あの夜の炎は根こそぎ吹き飛ばしていたのだ。
だってかつてオレ達が暮らしていた国は、文字通り“跡形も無かった”んだから。
滅ぼされたなら滅ぼされたなりの痕跡が残る物だ。家の残骸。燃え残った何か。誰の物とも分からなくなった骨。
でもオレ達の国だった場所には其れさえ残らず、ただ“何もない荒野”がひたすらに広がっていた。
オレが明確に復讐を誓ったのは、其の時だろう。
あの日、全てが無くなっていた此の場所で、オレは復讐を心に決めた。
オレの国を滅ぼし、国民を、家族を殺した人間に。それの首謀者である勇者に復讐してやる、と。
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