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「こんな所に1人なんて、随分と無用心なんだな?魔王様!!」
奮い立たせた勇気と内心でずっと抱いていた復讐心で、オレは叫ぶ様に言葉を投げ掛けた。
そんなオレに対する魔王の反応は、
「こんな所、か」
ただオレの言葉を短く復唱しただけ。
魔王お決まりの「よく来たな勇者」「我の配下に就けば世界の半分をやろう」といった台詞もなければ、いかにも“悪人です”と宣言している様な高笑いもない。
魔王を倒すべくやってきた勇者がオレみたいに子供だから油断してるんだろうか。拍子抜けだった?
もしそうだとしたらあんまりだ。
オレだってまだ本格的な勇者じゃない。修行を積んで、魔王の弱点を学んでと、そうした“見習い”の身の上が許されている年頃だ。
でもそんな年齢で魔王を倒す役割が回ってきたのは、全部魔王の所為だというのに。
あの日、
恐怖なんてもう何処にも無かった。
オレの中にあるのは長年其処に居座っていた復讐心と、今の態度で爆発して勢いを増した怒りだけ。
「罪のない人々に危害を加えた!オレの故郷を滅茶苦茶にした!お前のその行為を許さない!オレは今此処でお前を討つ!!こんな何もない荒野で滅びる魔王なんていないだろうけど、城に
「何もない荒野。城に籠ってなかった失策、ね。……そうさせたのはお前等だろう!!!」
オレの発言の、何が切っ掛けだったかなんて分からない。
ただ魔王は突然咆哮すると、腰から掲げていた仰々しい剣を抜いた。
魔王との決戦の地。ついに訪れた復讐を果たす場。
そんな状況であまりに不似合いで、間抜けだけど、オレは言葉の意味が分からずに困惑さえした。
魔王は一体何を言ってるんだろう?何を、当たり前の事を。
「は?何言ってんだよ。第一魔王の城なんて滅ぼされて当然だろうが。オレの故郷の建物を全壊させたし、他の国の建物を壊してるのはお前だろ?食料だって半分以上を奪ってる。糾弾されて当たり前だし、滅ぼされるべき存在だ!!」
「そうだな。人間はみんなそう言うよ。魔王に家を壊された。魔王に最愛の人を奪われた。魔王に立ち向かった家族が志半ばで倒れた。その復讐だ、ってな。そうして魔王を討った人間は讃えられ、膨大な富を得るんだ」
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