2
「勇者様、行っちゃうの?」
「ゆーしゃさま、ほんとに出かけちゃうの?」
どうやら本格的に懐かれてしまったらしい。
子供達の目はみんな、オレに「行かないで」「此処に居て」と訴えていた。
その気持ち、分からないでもない。
大切な人や好きな人が離れていってしまうのは、寂しい物だ。その人にどんな理由があろうと関係ない。これだけ小さな子供ともなれば尚更、“ずっと遊んでくれたお兄ちゃん”が居なくなってしまうのは寂しいだろう。
でも、だからと言って出発を止める事は出来ない。
いくら穏やかな地で、元気な子供を見ていれば心が安らぐと言っても、オレの胸に燃える復讐は魔王を倒すまで消える事はないんだ。
それに此の村はまだ無事だけど、他の村はどうか分からない。
此の村は無事だけど、魔王が
そんな中、オレが1ヶ所に長い間留まるのは危険だろう。
魔王がオレの気配を嗅ぎ付けて、村ごと滅ぼそうとしてしまう危険性は大いにある。
……村ごと滅ぼされる。
その想像はオレの記憶を否が応でも思い起こさせた。
壊れてしまった、オレの国の事。
「ごめんなー。でもオレは魔王を倒さないといけないんだ。魔王を倒さないと、みんな安心して暮らせないんだぞー?」
「おにーちゃんがいれば、まおーなんて怖くないよ?」
「うん。でも
「……お兄ちゃん、ちゃんと元気でもどってくる?」
おずおずと1人が言った。
それでオレは理解してしまった。此の子たちは幸いまだ、魔王に襲われてはいない。でも魔王の恐怖は伝え聞いているんだ。だから。
だから此の子達は、そんな“恐ろしい魔王”を倒しに行くと言っているオレを、子供なりに心配してくれている。ただ単に“遊んでくれるお兄ちゃん”とのお別れを惜しんでいるワケじゃなかったんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます