少女は鳥になった

「何でそんなに袋いっぱい、抱えてるの?」

「空き缶と、空き瓶。」

「それ、集めたの?」

「ああ、一日中拾ってまわった。」

「集めてどうするの?」

「あそこで、金に換えるんだ。」

「ふーん、幾らくらい貰えるの?」

「さあな、これ位だったら15ドルくらいかな?」

「えー!一日中集めまわって、たった15ドルなの?」

「ああ、それでも何も無かった所から、金がうまれるんだ、いいじゃねえか。」

「おっさん、ホームレスなの?」

「まあな。」

「何でホームレスになったの?」

「嫌になって、何もかも捨てちまいたくなって、家を出たんだ。」

「家出したの?みんな捨てちゃったの?」

「ああ、つれとむすめが二人いた。」

「連絡はとってないの?」

「とれねーよ。捨てちまったからな。」

「うちのとーちゃんも家出したよ。でもね、ホームレスにならずに、女の家に転がり込んだ。」

「よわっちーな、お前のとーちゃん。」

「ははは、そうだね。弱っちいし、くずで、情けないし、かわいそう。」

「かーちゃんは、どうしてる?」

「いつも怒ってばかり。」

「兄弟は?」

「妹が一人いるんだけど、ぐれちゃってる。」

「ひでー家庭環境だな。」

「そうかな?もっとひどい環境の人は、沢山いるよ。」

「おっさん、寂しくない?」

「そうだな、人ごみに一人、誰からも気にされずに、たまに時間が止まったように感じることがある。その時がちょっと寂しいな。」

「私もそんなとき、あるな。」

「わかるのか?おまえに?」

「わかるよ!だって多感な十代の乙女なんだよ、これでも。」

「はっ、はっ、は!多感な乙女か、こりゃ参った。」

「おっさん、鳥になりたいって思ったことある?」

「鳥かあ、お前、飛びたいのか?」

「おっさん、飛んだら自由になれると思う?」

「さあな、鳥にも悩みはあるだろ?」

「おっさん、見てて!」

「!おい!!」

「あーれま、本当に飛んじまった。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る