五日目⑨
チェックインした昼間の閑散具合と違い、ラウンジは宿泊客で賑わっていた。
ラウンジ内にはかなりの席数があり、屋外シートも豊富に用意されている。
お酒は無料で、モヒートや紅茶カクテルなど作ってくれるほか、ジンやウォッカ、ワインなどのアルコール類がセットされていた。
終日無料提供されているお茶やジュースなども利用できる。冷蔵庫には、チーズに前菜とドリンク類、白ワインとスパークリングが用意されていた。
大きなテーブルにはパンやサンドイッチ、その奥にバナナやリンゴ、青いパパイヤ。ピクルス類、大きめのガラスにはサラダスティックが用意されている。デザートにはパンナコッタなどのほか、ベトナムのお菓子もある。
無料軽食のわりには量、品揃い共によかった。
サクヤたちは、ラウンジ外のテーブル席で食べることにした。
「ベトナムに来て、フォーをよく食べてる」
食べながら呟くキョウの言葉に、
「そうだね」
同意するカコの声を聞き、サクヤは思い出す。
「ホイアンで参加した料理教室で教えてくれた人が、『ベトナムは麺類が有名だけど、主食は炊いた米。麺は忙しい人が食べるもの』って言ってた」
「日本と似てるのね。フォーは蕎麦やうどんみたいなものなんだ。コシがないけど」
トモの言い回しにサクヤは噴き出してしまう。
海風を感じながら笑うサクヤたちは、ビアラルーを酌み交わした。
キョウがタブレットで、デジカメで撮影した五行山の画像をサクヤたちに見せる。
画面には、薄暗い中を不気味な白い巨像が立ち並んでいる画像や洞窟を抜けた先の明るい光景、山の上からみえる四つの山、塔や石階段、狭い洞窟に安置された仏像や寺などなどが映し出されていく。
カコの話によれば、チケット購入後、階段ではなくエレベーターを使ったそうな。
「エレベーターの入口手前の洞窟にキョウちゃんが入っていくから、ついていったら、そんなに古くない石像が十体並んでたんだけど、地獄世界が表現されてて。天秤のとこには閻魔大王までいたし、やけにリアルで怖かったんですよ」
エレベーターで上がった先が頂上、ではなく、歩いて階段を上っていく登山道があった。
「リンウン寺、サーロイ舎利塔と呼ばれている七重塔、展望台からはダナンが一望できたよ。次の課像が、最高のパワースポット、ヒュエンコン洞窟です。天井から放射状に差し込む光はまさに荘厳で、浄化された感じでした」
カコの説明を聞きながら、トモがタブレットの画面を撫でるように画像を切り替えていくと、サクヤの目にとまる画像があった。
「崖を登っていいの?」
サクヤは、ビアラルーを飲むキョウに訊ねた。
「五行山でロッククライミング体験もできるみたい。面白そうだったから撮ってみた」
「へえ、そんなこともできるのか」
「パワースポットだけでなく、ボルタリングもできるアクティビティに富んだ場所だったのね」
トモが微笑むと、サクヤは感心してうなずいた。
「ところで二人は、なにをして過ごしてたの」
カコの問いに、サクヤは迷わず「のんびりしてた」と笑顔で答えた。
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