八日目⑬

 香港に来たら北京ダックこそ食べねばならない料理と断言したが、あれは嘘で、やはり去る前にぜひ食べたいものはシャコしかない。サクヤの心の叫びが、空港へ行くにはまだ早いと決断させ、男人街へと向かわせた。


「シャコシャコシャコシャコ、シャコーシャコッ、あ~いして~る。シャコシャコシャコシャコ、シャコーシャコッ、食~べおさ~め」


 鼻歌を歌いながら、サクヤは赤い門をくぐっていく。北京ダックでお腹がいっぱいになった、と嘯いたのも自らを欺く嘘である。お持ち帰りを前提に食事制限をしていたのだ。すべては、シャコのために!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る