八日目⑫
世界三大夜景で、かならず名前があがる香港。二〇〇三年から毎晩八時より十三分間ほど開催しているナイトイベントがある。
幻彩詠香江(シンフォニー・オブ・ライツ)だ。
香港島と九龍半島の主要な高層ビルから放たれる、色とりどりのレーザーが加わる香港の夜景。二〇〇五年には『世界最大の永続的な光と音のショー』として、ギネス認定されている。
サクヤはハーバーシティのオーシャン・ターミナルの屋上駐車場にいた。
家族連れと思われる人たちが数組、対岸にみえるビル群をみている。
オーシャン・ターミナルは、一九五〇年代には汽船の発着をしており、一九五九年にブルース・リーがサンフランシスコへ旅立った港であり、戻ってから撮影した映画のロケ地でもある。
ビクトリア湾に面したこの場所は、夜景スポットのひとつ。年末カウントダウンと国慶節にビクトリア湾で打ち上げられる花火の時期は入場制限されるほど大混雑する。
二十時になると、十三分間の音と光のショーがはじまった。
ビクトリア湾沿岸のオフィスビルを含む四十箇所からカラフルなサーチライトやレーザービームが、辺りに鳴り響く派手な音楽と連動して放たれる。
男性と女性の声で交互にビルが紹介されると、曲が変わり、それに合わせてライトの点灯も変化する。
音楽と光の点滅を変えながら『覚醒』、『エネルギー』、『伝統』、『パートナーシップ』、『セレブレーション』の五つのテーマを表現していく。
この夜景は、百万ドルの夜景といわれたこともある。百万ドルとは、一晩に使用する電気代を意味するが、現在は五百万ドルから一千万ドルもかかっている話もあり、真偽の程はわからない。
サクヤは京娘である。ワールドワイドな雅なトリッパーだ。
「大文字焼きは風情があるけど、さすが香港の夜景。きれいにしてはるなあ」
ショーが終わると、夜景を見ていた人たちから拍手があがる。
サクヤも小さく手を叩き、この場を離れた。
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