八日目⑪

 待つこと三十分。

 四角い白い皿に盛られた半羽分の北京ダッグが運ばれてきた。

 蒸籠で温められた荷葉餅。キュウリとネギと甜麺醤が載る皿。スープと、テーブルにならぶ。ガラス製のティーポットに入れられた烏龍茶はキャンドルウォーマーで温められている。

 儀式の撮影を終えると、


「待ってました、いただきます」


 サクヤは北京流に包んでかぶりついた。

 皮が温かく、噛むとほどよく脂が口の中に広がる。余分な脂を落とし焼き上げているから、皮はさくっと肉もさっぱり食べやすい。タレは甘すぎず、キュウリとネギが辛さを引き締め、さっぱりにしている。いくらでも食べられそうだ。

 ……と、食べはじめた勢いが落ちていく。

 半分ほど食べると、北京ダッグを包む手が止まった。

 前回サクヤがトモと訪れたときはあっさり完食し、物足りなさを憶えた。一人で余裕と思える量でも、食べ過ぎれば脂で胃が重たくなりかねない。烏龍茶を飲めばどうこうなるものでもないのである。

 サクヤは顔の前で手を合わす。


「……ごちそうさまでした」


 店の規模に限らず、満足するまで食べたらあとは持ち帰るのが中国では一般的。サクヤは気兼ねなく残りを包んでもらった。

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