二日目③

 午前八時、料理教室ツアー参加者が、ホテル前に集まる。

 ワンレンズ型のサングラスを掛けたサクヤは、迎えに来たガイドのお姉さんと一緒に大型タクシーが停まっている場所へ移動する。


「Everyone, please ride.(みんな、乗って下さい)」


 言われるままサクヤも乗車し、参加者に目を向ける。サクヤ以外、白人系だった。昨晩、通りを歩いたときも白人観光客が多いと気づいていた。ここでは非英語圏者は珍しいのだろうか。


「へくしっ」


 不意に出たくしゃみに、


「Bless you.」


 前に座っていた白人から声をかけられた。

 サクヤは小さく笑みを返す。


「Thank you.」


 稀有な体験に、内心びびってしまった。

 隣にトモがいたら「ほんまに言うんやー」と笑い合えただろう。

 思い浮かぶ妄想を振り払うように、サクヤは首を横に振る。

 群れると一人が寂しい、と錯覚してしまう。単独行動できないのは依存心の現れにすぎないのだから。言い聞かせるのではなく、サクヤは自分に他の選択肢を与えた。


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