一日目⑧

 川沿いの建物や道路に明かりが灯り、川面に光が反射する。

 ダナン中央には、川幅の大きなハン川が南北に流れている。この川は市街地を分断しているため、かつては不便だったが、現在は五つの橋がかけられている。

 北から順番にトゥアンフォック橋、ソンハン橋、ドラゴン橋、チャンティリー橋、ティエンソン橋と名付けられている。

 サクヤたちを乗せたシャトルバスは、四つ目のチャンティリー橋を渡る。全長七百三十一メートル。主塔からケーブルを張り、帆船のイメージがされた斜張橋もきれいにライトアップされていた。

 渡り終えて南へとひた走ること一時間。目的の街、ホイアンに到着した。


 系列店のビンフン2ホテルにてチェックインしたサクヤとキョウは、フロントで両替とレストランの予約をしてもらった。

 宿泊施設までは、ホテル手配の自転車タクシーのシクロに乗って移動する。シクロとは、自転車の前方に人や荷物をのせるシートがあり、人力によりドライバーが運転する、リアカーと自転車を合体させた感じのベトナム名物の乗り物だ。

 透明な夜に包まれるホイアンの町を、サクヤたちを乗せてシクロは疾走する。

 二人が初めて訪れた町は、ぬくもりのあるランタンで彩られていた。

 トゥボン川の河口に位置するホイアンは一九九九年、『ホイアンの古い町並み』として世界文化遺産に登録された。古い町並みの残る旧市街地は歴史保護地区に指定され、自動車やバイクの乗り入れが禁止されている。

 旧家に暮らす人々は自由に改築や修繕ができない、と悩むのはどこも似ている。

 政府援助で存続させているが、毎年襲ってくる洪水災害による老朽化から、数十年後も存続できているのか危ぶまれている。


 十五分ほどして、歴史保護地区内のチャンフー通りにある、ビンフンヘリテージホテル(旧ビンフン1)に到着した。築後、およそ二百年経過している中国家屋を利用して造られたホテルである。

 時刻は午後七時を過ぎていた。

 建物の中に入ると、外の喧騒とは違う空気が流れていた。ランタンの灯るロビーを通り、一階で靴を脱いで階段を上がる。サクヤはニヤリと笑って満足げにうなずく。脱ぎ履きが楽なスニーカーを選んで正解だった。

 部屋へ荷物を運んだ二人は、予約を入れたレストランへと出かけた。

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