一日目⑥

 機首を下げたことに気づいたサクヤは、窓の外に目を向ける。

 夕暮れに包まれるベトナムの海岸線が見えてきた。海岸沿いの道路には、等間隔に照明灯が光っている。

 上空を旋回し、飛行機は空港へのライディングを開始する。


 午後五時五十分。飛行機は無事にダナン国際空港に着陸した。夏の暑さが漂い、コートの必要はなかった。

 空港は、日本の地方空港並みの広さがあった。

 入国審査が終わり、カウンターの奥にあるバゲージクレームに移動して二人は待つも、荷物がなかなか出てこない。


「ねーサクヤ。まさか、届いてないとか」


 サクヤは、ちらりとキョウを見た。


「グランドハンドリングのスタッフが手間取ってるんじゃね」


 どれほど待っただろうか。ようやく動き出したターンテーブルに乗せられて、預けられていたキャリーバッグがゆったりと流れだす。

 疲れた顔をしているキョウは、小さく息を吐いた。


「のんびりしてるね」

「そのうち届くさ」


 機内食に満足していたサクヤは、微笑みながら腕を組んだ。

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