一日目⑤

 午後四時五十分。

 サクヤたちを乗せたキャセイドラゴン航空の飛行機は、目的地のダナンへ向けて滑走路から離陸した。

 二時間のフライトにも関わらず、機内食であるホットミールが出される。

 サクヤが選ぶのは当然、中華の一択だった。

 儀式の撮影を終えると、サクヤは目を見開く。


「む、むむむむ」


 運ばれてきたのは、蓮の葉包みチマキと焼売、フカヒレ餃子やエビ餃子などの点心セットに、カットフルーツと水のボトルがついていた。

 香港行きの機内食にくらべたら、より中華らしい。


「おー、良かったねサクヤ。今度こそ中華だ」

「点心か。さて、肝心の味は」


 箸でエビ餃子をつまむサクヤは、じっと見つめる。


「サクヤ、顔が怖いよ」

「では、いただきます」


 口に入れたサクヤは、よく噛んで味わった。


「これはっ」

「まずい?」

「うまい。全線これにしたらいい、いや、するべき」


 ほほほ、と笑ってしまう。座席に座ってなければ小躍りしたかもしれない。


「サクヤが言うなら、そうだね」

「うむ、わたしの味覚に間違いはないのだ」


 心だけでなく食べる者の顔を丸くさせるおいしさが、この機内食にはあった。

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