一日目③

 午前十時、サクヤとキョウはキャセイパシフィック航空のエアバス機に搭乗した。ダナン直行便がなかったため、まずは香港へ向かう。

 香港を本拠地に展開しているキャセイバシフィックは、『世界で最も良い航空会社』として四回も受賞経験がある航空会社だ。海外の経済紙でも評価が高く、世界最高評価『ファイブスター』を獲得している。

 海外旅行の醍醐味といえば、機内食。

 香港の航空会社なので中華は絶品、と聞いていたサクヤは、まよわず中華を選択した。

 運ばれてきたのは、黄色い蕎麦とご飯、白身魚、インゲンと人参。ロールパンにはバターが添えられ、ラムレーズンクッキー。ウォーターボトル。

 二人して撮影を済ませてから食事する。もはや旅の恒例儀式と化していた。

 サクヤは一瞥し、はじめに黄色い蕎麦を食べていく。


「まーまーかな」


 つづいて、キョウも蕎麦を食べる。


「んー、普通においしいかな」 


 二人は一口、また一口と食べ進めていく。

 機内食に高級中華を求めてはいない。まずくなければまずは合格だ。


「ところでサクヤ、どうしてご飯にパンもついてるの?」

「……なんでだろう。パンが食べたい人のため、とか」

「じゃあさー、どうして蕎麦もついてるの?」

「えっと、ソバヌードルだし、中華っぽいから」

「でも、蕎麦であって中華そばじゃないし」


 キョウが首をひねる仕草を見て、サクヤも首をひねる。


「どういうことなんだろうな」


 答えが出ぬまま二人が食べすすめる間に、飛行機は領空を越えていく。

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