巨大ロボットについてお話しよう

 え~、まずは前回の放送をご覧になったみなさんからのご意見をご紹介したいと思います。「自分でも娘って言ってるんだしおにいちゃんじゃなくてパパって呼ばせろよ童貞」。


どどどどど

童貞ちゃうわ

どどどどど


 思わず一句詠んでしまったわ。季語は童貞。

 美少女におにいちゃんって呼ばせるのは興奮するけどパパっていうのはなんか違うんだよねー。わかる? この繊細な男心。妹に欲情するのはセーフだけど娘はアウトですよ。全国一億三千万のパパ派のみなさんごめんなさい。

「アリスちゃんもそう思うよね!?」

「どちらにしろ気持ち悪いです。ていうか気持ち悪いです」

 大事な事なので二回言ったの!?

「私はおにいちゃんでもパパでも変態でもなんでもいいですよ」

 さげすんだ目で変態って言われるのもオツなもんですよ、ええ。でも後で泣きたくなっちゃう。男の子だもん。


 そういえばですね。前回大事なことを忘れておりました。アリスちゃんの服装についてです。なんにも触れないもんだからモニターの前のみなさんはアリスちゃんはきっと全裸なんだろうなあと期待と妄想を膨らませていたことでしょうが残念ながら違います。ちゃんと着てますよ残念ながら。まことに残念ながら! AIなので服装とか髪型とか割と自由に変えられます。ちなみに今日は清楚な白いワンピースにポニーテールです。ツインテもいいけどポニテもいいよね……。ツインテが正義ならポニテは自由。ロングは王道ショートは無敵、ドリルヘアーは天を突く!


「というわけでですね。本日のお題はこちら、『巨大ロボット』!」

「巨大ロボット、ですか」

「巨大ロボットですよ。ちなみにこの場合のロボットというのはいわゆるロボットアニメ的なロボットのことであって自動化された機械みたいな本来の意味のほうではないぞ。ロボットアニメのロボットはロボットじゃないとかそういうめんどくさい話はまた今度」

「それで、巨大ロボットの何についてお話するんでしょうか?」

「いい質問ですねえ!」

「いい質問も何もいきなりロボットとだけ言われても困りますから」

 クールだねえ。柳に風暖簾に腕押し、歩く姿は百合の花。女の子同士がイチャイチャするのってなんで百合って言うんだろうね。ちなみに男同士は薔薇。こっちのほうがゴージャス感あるわね。

「そうだね。『現実に巨大ロボットがあったら?』これだね。巨大ロボットはロマンです。グレコローマンスタイルです」

「はあ……」

「なんか乗り気じゃないですねえ!」

「ロマン、と言われてもよくわからないもので、すみません」

「これだからガールは!」

「大きなロボットや大きなヒーローに憧れるのは男の子特有のものと言われていますし、しょうがありません」

「もしも巨大ロボットを実現できたらアリスちゃんをそのロボットに搭載してあげるよ! アリスちゃん、大地に立つ!」

 おっきな女の子が好きなお友達もこれで安心! ファンが増えるよ! やったねアリスちゃん!

「いえ、要らないですから」

 この子ったらほんとクールね。それでも血の通った人の子か! ってこの子AIだったわ! ガハハ! あっやめて、石を投げないで。

「じゃあ普通に人間大の美少女ロボットボデェにしよう。そうしよう」

 最新素材をふんだんに使ったまるで本物の人間のようなこの体。今ならなんとイチキュッパでお届けします。

「魅力的な提案ですが、現実に体を持ったりしたらおにいちゃんのセクハラがとどまるところを知らない感じになりそうなので遠慮しておきます」

 そんなことしないよ! おにいちゃん紳士だよ! 紳士という名の変態だよ!


「というか、巨大ロボットなんて造って何に使うんですか?」

「それはもう地球征服をたくらむ悪の組織とか悪の宇宙人と戦うのさ。地球は狙われている!」

 他にも地底人とか異次元人とかもう枚挙に暇がないほど狙われてます。よっぽど優良物件なんですかね。モテる男はつらいよ。

「はあ、そうですか。そんなものが攻めてくることはまずないと思いますけど……」

「とにかく本題! 本題!」

「はいはい。それでは最初に、その巨大ロボットの形は人型でいいのでしょうか?」

「よござんす」

「言うまでもないことですが、直立二足というのはとにかく安定性が悪いです。ちなみに、サイズはどの程度を想定していますか?」

「身長二十メートルから三十メートル、もしくは五十メートルから百メートル程度の人物が犯人です」

「幅が広すぎです。とりあえず百メートルということにしておきます。人間大のロボットであれば二足でもなんとかなりますが、機体が大きくなればなるほど安定性を確保することが困難になり、百メートルともなれば上半身に対して相当大きな下半身が必要になるでしょう」

 下半身太りロボなんてだっせーよな! プ○ステのほうが面白いよな! でも女の子は安産型のほうがいいと思います!

「そこはほら、優秀なバランサーでも作れば……」

「まあ、不可能ではないでしょうが……それよりも、素直に足の数を増やしたほうがいいのでは? もしくは車輪や無限軌道でも」

 よく言われるキャ○ピラっていうのは商品名だからね! よい子のみんなは気をつけようね!

「多脚ロボや戦車ロボも嫌いじゃないけどあくまで今回は人型! 人型なの!」

 その手のやつらは結局邪道ですよ! 変態ですよ! 変態大人ですよ!

「はあ……ではまあ、優秀なバランサーを積んでまともな体型の人型ロボットができたとしましょう。おにいちゃんは前面投影面積という言葉をご存じですか?」

「も、もしかして、エッチな話ですか?」

「ここ最近で一番気持ち悪いです。おにいちゃん気持ち悪さランキング更新です」

 やったぜ! ていうかそんなランキングまで作ってるなんてアリスちゃんってばほんとおにいちゃんのこと大好きね!

「前面投影面積とは、簡単に言えば正面から見た時の大きさのことです。兵器においては基本的にこの面積は小さいほうがいいとされています。何故だかわかりますか?」

「それはエッチな……いえ、なんでもないです」

 汚物を見るような目でにらまれました。怖い。でもゾクゾクしました。アリスちゃん素質あるよ!

「大きいといい的(まと)になるからです。正面から見て大きい=的が大きいということになりますから、普通はなるべく背丈を小さくして被弾率を下げるようにします。その点直立型のロボットというのはダメダメです。最悪です。当ててくださいと言わんばかりです」

「そこまで言わなくても!」

 辛辣すぎる! ロボットさんだって好きで大きくなったんじゃないのよ! 時代の被害者なの!

「というか今更ですけど、そのロボットは陸上兵器なんですか?」

「走る! 飛ぶ! 泳ぐ! 宇宙も行ける! 万能兵器だ!」

「……地上では車輪のほうが速いですし、二脚よりも多脚のほうが安定性と走破性もあります。ジェットなりロケットなりを装備すれば飛行することもできるかもしれませんが、人型はどう考えても飛ぶのに適した形状ではありません。空を飛ぶ機械は普通、空気抵抗を無くすためになるべく流線形にするのが当たり前ですから。人型だと飛行にいらない、空気抵抗を受ける部分が多すぎます。戦闘機とドッグファイトしてもまったくついていけずにボコボコにされるのではないでしょうか。というか百メートルもの大きさだとまともに回避運動などできないのでは。水中でもほぼ同じですね。水の抵抗が大きいのでやはりそれ用に作られた艦船のほうがいいでしょう。宇宙での戦闘に関しては未知の部分が多すぎるので断言はできませんが、前面投影面積はやはり小さいほうがよいですし、航空機のような形状か、あるいは上下左右の区別がない宇宙空間での行動に適していそうな球形などのほうがよさそうです」

 怒涛の論破! ここまで滅多打ちにされるとむしろ清々しいくらいだね! もっと打ちこんでこい! 狙うはエースだ!

「そもそも万能兵器というのは無理がありすぎます。せめて何かしらの分野に特化させないとですよ。大体それぞれ既に専門の兵器があるわけですから、あれもこれもとやっていては器用貧乏にしかなりません」

「で、でも、人型ロボットには手があるから……」

「作業機械としてなら役に立つでしょうが……兵器にマニピュレータは必要ないのでは」

「手があれば色んな方向に銃を向けられますよ奥さん! 今なら洗剤もつけますから!」

「確かに動きの自由度は高いですが、何しろ構造が複雑すぎて耐久性やコストに問題がありそうです。回転砲塔ではダメなんですか?」

 地味に奥さんはスルーされた!

「それじゃ砲台ロボというか有脚戦車というか……とにかく別物だよ! それに砲塔じゃ格闘戦できないじゃないの!」

 砲身を直接ぶちこんでぶっ放すのもロマンあるけどね! え? そんなことしたら砲身壊れるだろ? うっせばーかばーか。お前の母ちゃんデベロッパー。

「……なんで格闘をする必要があるんですか? たとえ至近距離でも、銃や砲のほうが強いと思いますけど」

「格闘しないロボなんてもうアレだよ。羽毛の生えたティラノサウルスくらい存在価値ないよ」

 なんだよあのフッサフサの姿は。子供のころのワクワクさんを返してよ!

「羽毛の生えた恐竜はあれはあれでかわいいと思いますけど」

「かわいい……かな?」

「はい」

 言い切ったよ。

「まああんなでっかいニワトリのことはいい。ガンガン殴りあったりチャンバラするためにも腕は絶対必要です!」

 肉迫してバチバチやりあうところは最大の見せ場だからね! 飛び回ってピュンピュンするより男なら肉弾戦よ!

「そもそもお互いに遠距離武器があったらそんなに接近するような場面もないと思うんですけど……」

「来いよロボット! 銃なんて捨ててかかってこい!」

「意味がわかりません」

 司令官は名作!


「色々とお話しましたけど、やっぱり巨大ロボットは現実的じゃないと思います」

「ロマンが理解されないって悲しい。常識というメガネで僕たちの世界は覗けやしないんだよアリスちゃん。古い地球人め!」

「古いのも地球人もおにいちゃんのほうです」

 これは一本取られたわハハハ!

 今日はこのへんで終わり! 続きはWebで!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る