第27話 リベンジ

「よっしゃ!じゃ、リベンジや。いこか」


 センタがそう言った時


「あの、私達も一緒に連れて行ってもらえませんか」


 と、エルフが言った。


「ああ、そうか。君たちは飛べないんだね。じゃ、一人づつ手をつなごうか」


 あつしが言って、それぞれが手をつなぎ魔物のいる場所に飛んできた。


「あれ?あのふわふわの奴、また湧いとるな」


 センタが言った。


「牛みたいな奴とセットになってるんだろうな。両方倒さないと、リセットされるみたいだ」


「なるほど。じゃ、凪沙さん、またお願いね」


「うん。まかせて」


 凪沙は腕を伸ばし、手のひらを魔物に向けた。


 魔物は一瞬で凍りつき、次の瞬間、粉々に砕けて消えた。


 そのあと凪沙はすぐに、センタと、そして自分とあつしをベールで包んだ。


 ローブをまとったエルフも、同じ様に自分達をベールで包んだ。


 そして魔物の消えた場所を見ていると、そこが陽炎のように揺らぎ、牛のような魔物が現れた。


 吠え叫ぶ魔物を見ながらセンタは思っていた。


 あいつのそばに飛べたら楽やのになぁ・・・


 ん?まてよ。出来るんちゃうか?


 よしっ!やってみよう。


 センタはそう思い、魔物の肩に乗っている自分を思い浮かべた。


 次の瞬間、センタは魔物の肩に乗っていた。


 おおっ!これ、便利やん。


 魔物は、いきなり肩に現れたセンタを手で振り払おうとした。


 その時、センタは既に魔物の右側の地面に飛んでいた。


 魔物はあたりを見回し、センタを見つけると口から毒液を吐き出した。


 センタは今度は、魔物の反対側にいた。


 あいつ、何を遊んでいるんだ?


 あつしは、さっきから魔物の心臓の辺りに狙いを絞っていたが、センタがどこに現れるか分からないので矢を放てないでいた。


「センタ!いい加減に決めようぜ!」


「おお、わるいわるい。じゃ、いくで」


 センタはそう言って魔物の右肩に飛び、そこから斜め後ろに飛び上がり、刀を振りかぶり、落ちながら気合を込めて刀を振り下ろした。


 と同時にあつしも矢を放ち、その矢が太い鉄の矢となって魔物の心臓に突き刺さると同時に、センタも魔物を切り終えていた。


 心臓を射抜かれ、センタに切り割られた魔物は


「グオォォォ・・・」


 と一声吠えたあと、ばったりと倒れ消えていった。


 センタはすぐに、凪沙とあつしの所へ飛んで戻ってきた。


 センタたちとエルフ達は、そのあとを固唾を呑んで見ていた。


 しばらくしてセンタが


「ん?これだけ?」


 と言った。


「うむ。そうみたいだな」


「なんや、呆気ないな。次のが出てくるんとちゃうんかいな」


 念の為、ベールはそのままでしばらく様子を見ていたが、次のが湧いてくる気配はない。


「あれで終わりか。凪沙さん、もうええで」


 凪沙は、うんと言って、ベールを消した。


「いや、見事なもんですな」


 エルフがセンタたちに近寄って来て言ったあと


「どうされます?今日はもうこのくらいにされますか?」


 と言った。


「いや、遺跡の場所まで連れて行ってもらえませんか。その後は、また明日に続きをやりますので」


「わかりました。では、遺跡のところまでご案内しましょう」


 そして、エルフはセンタたちを遺跡の所へ連れてきた。


「これが、ボスのいる遺跡だということです。私達も来るのは初めてですが」


 そこは、切り立った断崖に入口があり、入口の周りの断崖には、古代ペルシャの様な装飾が彫られていた。


「なるほど。ではまた明日来ます」


 あつしがそう言って、三人はその場所の風景を頭に入れた。


 そして、エルフたちと一緒に村に戻ってきた。


 エルフ達が部屋を出ていったあと、あつしはセンタに言った。


「最初キミが遊んでいるもんだから、ヒヤヒヤしたぜ」


「いやー、すまない。でもあれ、魔物と戦うときは有利やで」


「どうやったんだい?ただ、思い浮かべるだけでいいのかい?」


「うん、そや。行きたい所にいる自分を思い浮かべたら行けるんや」


「なるほど・・・じゃ、俺は帰るよ」


 あつしはそう言って、チラリと凪沙とセンタを見て部屋から消えていった。


 あとには、センタと凪沙が残った。


「センタくん、段々と強くなっていくね」


「なに言うてんの。凪沙さんだって凄い強なってるやん。毒だって消せるし」


「あれね。夢中だったのよ」


「ほんま、助かったわ。命の恩人や」


「ね。センタくんって彼女いるの?」


「そんなもん、おらへんわ。剣道の練習やら何やらで忙しいからな」


「ふーん、そうなんだ」


 凪沙はそう言ってから、センタに何事か耳元で囁いた。


「えっ!ほんま?」


 それを聞いたセンタはみるみるうちに、喜色満面の笑顔になった。


「よっしゃ!やったるで!」


「うん。頑張って」


 凪沙はセンタをじっと見つめて、センタに顔を寄せ、キスをした。


「凪沙さん・・・」


 二人はもう一度、今度は長いキスをした。


 そして、唇が離れたあと抱き合った。


 センタの胸に顔をうずめた凪沙が言った。


「センタくん、大好き・・・」


「オレも。凪沙さんが好きや」


 二人はまた、キスをした。

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