第3話:アルコール

居心地がよくて私は美術部に通うようになった。


2人の先輩は資料(写真集)を見るために図書室に行ったり、景色の写真を撮るからと言って帰り支度をして公園や浜辺を散歩してそのまま家に帰るとか自由で新鮮だった。


2人と会話をしていると物の見方が違うことに驚く、空を見ても藍の濃さを感じたり夕日を見て茜の色を赤、橙、桃、紫で見える色が違うとか、自然に見た物を感じるらしい。


この人たちには世界がどんな風に見えているのだろうか・・・とそんな興味を持った。


ユウキさんはよく空を見上げる癖があるらしく、流れ星を何度かみたことがあるとか、どうでもいいことのようで、とてもうらやましく思えた。


金曜日の夜


リビングのソファーで本を読んでいると母が帰宅した。


母「ただいま」


私「おかえり」(顔が少し赤い、飲んで来たんだろうな。)


そのまま私の横に肩が触れる距離で座る。


私(?めずらしく近いな・・・母の体温を感じたのは・・・何年振りだろうか・・・?)


母の顔をみると笑顔でこちらを見ている、恥ずかしくて前を向く。


私(・・・アルコールの匂いだな・・・)


母「どう?部活は」


私「・・・うん、思っていたより楽しい、先輩がいいひとでさ」


母「そう、よかった、何か描いたの?」


私「う~ん、描いてるけど・・・ヘタだよ」


母「今度見せてね」


私「・・・どうかな」


少しの沈黙のあと


母「この前、あなたが読んでいた本あったじゃない?」


私「え?ああ」(・・・貸してっていったやつかな)


母「あれね、私が大学の頃によんだ本なの・・・それを見たらね、ああ、もうこの子も大人なんだなって思ったの、対等に接していいんだなって」


私「・・・」


母「私はね、よほど間違っていない限り、子供にあれこれいうものじゃないなって思うの、あなたって問題ない子供だったから・・・」


私「・・・」


母「ほんとのことを言うとね、子供の接し方がよくわからなくなって・・・昔は自分も子供だったのに・・・不思議なものよね・・・」


私「・・・」


母「ごめん、ちょっと酔ってるかな・・・」


私「うん」


母「・・・」


肩が重くなったのを感じて母の方を向いたら・・・寝ているようだ・・・


寝顔を見ていたら、私の顔はこの人に似たんだな・・・と、改めて思ってしまった・・・鏡でいつも見る顔と似たようなか顔がそこにある・・・


そっとソファーに寝かせて、布団をかけて、自分の部屋に戻った。


何だろう・・・くすぐったいような・・・うれしいような、恥ずかしいような、・・・


今までこんなに感じたり思ったりしていなかった気がするな・・・


窓の外を見たら月の色が濃く見えて・・・赤みをおびたベージュ・・・かな・・・月は黄色のイメージだからな・・・こういうことなのかな?


空気の密度や湿度で色が変わってみえるらしいけれど・・・理屈なんてどうでもいいってカズハさんは言っていたな・・・確かに感じたものが全てなのかも・・・


その後、寝付けなくて・・・音楽をききながらいつの間にか寝ていたようです。

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