第2話:カーボン

放課後、入部届けを顧問の先生に渡して、美術室へ移動しました。


顧問の先生は若い女性の先生でした。


美術室につくと2人の生徒がスケッチブックを開いて会話をしていました。


あ、美術室の・・・絵の具の匂い・・・


先生「ユウキ、カズハちょっっといい?新入部員の新居さん、めんどうみてあげてくれる?・・・よね、じゃぁ、後よろしく」


カズハ「はぁ~」


先生はそのまま部屋を後にしました。


私「・・・え?」


ユウキ「新居さんよろしくね」


カズハ「まあ、よろしく」


私「よろしくお願いします。1年の新居です。・・・先生って絵の指導をしてくれたりは・・・」


カズハ「ん?・・・ないね」


ユウキ「うん、ありえないね」


私「え?・・・そうなんですか?」


カズハ「だって、あの人、絵描けないもの」


ユウキ「この前、試しに描いた絵は得体のしれないものになり果てていたよね・・・」


私「てっきり絵の描きかたから教えてもらえるものだと・・・」


ユウキ「あの人は形だけの顧問だから・・・絵かいたことないの?」


私「・・・はい、授業で描くくらいしか・・・」


カズハ「それで美術部に入って活動しようって子も珍しいよね」


私「ですよね~ははは」


ユウキ「スケッチブックは何冊か残ってたよね・・・」


カズハ「うん、あると思う・・・」


ユウキ「あ、あった、はい」


私「あ、ありがとうございます・・・」


ユウキ「何かかいてみようよ、はい鉛筆」


私「・・・はい、何がいいですかね・・・」(なつかしいな・・・鉛筆の匂い)


カズハ「とりあえず石こうの像でいいんじゃない?」


私「あ、あれですかね」


カズハ「うん・・・どうしようか?3人で同じの描いてみる?」


ユウキ「それも、いいかもね」


3人で並んで同じ石こうの像を描くことになって・・・


何から描いていいかわからなくて輪郭を描き始めたら


カズハ「そっか・・・そこからか・・・」


ユウキ「う~ん、一度描かせた方がいいのか、セオリーを教えた方がいいのか・・・悩むね・・・」


私「できれば、デモンストレーション的に最初から教えてもらえると・・・」


ユウキ「じゃぁ、カズハほうがいいかな?」


カズハ「なにいってるの?ユウキのほうがデッサンはうまいじゃない?」


ユウキ「・・・そうかな、まあいいや・・・えっとね」


そういって私の横にきて話ながら書き方を見せてくれます。


用紙を分割してどこに何を描くのかイメージしてから薄い線でレイアウトを組んでから


私(・・・近いな・・・あ、この人きれいな横顔だな・・・鼻高いし・・・なんだろう、いい匂いがする・・・)


ユウキさんがこちらを振り向きながら・・・


ユウキ「じゃ、描いてみて、うわ、近っ・・・ごめん」


私「あ、いえ、ごめんなさい」


それを見てカズハさんはケタケタ笑っています。


2人共30min程度で簡単に書き上げて私が描きあがったのはそれから60min後


出来も残念な・・・何だろう?絵を見ても何を描いたのかわからない・・・


窓の外が茜色に染まりだして


カズハ「そろそろ終わりにしようか?」


ユウキ「そうだね」


私「あ、はい。ありがとうございました、おつかれさまです。」


ユウキ/カズハ「・・・?」


・・・困惑されてしまった・・・


ユウキ「ああ、部活の挨拶だね」


カズハ「ははは、そういうのないからね、おつかれ」


ユウキ「後は片づけておくから、先に帰っていいよ」


私「はい、失礼します。」


廊下を歩きながら


私(・・・楽しいかもな・・・こういうの)

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