空気の色

Iris

第1話:香水(01/05)

母「また本を読んでいるの?」


私「・・・うん」


母「それ、おもしろい?」


私「まあまあかな」


母「そう終わったら貸して」


私「うん」


母「本ばかり読むなとは言わないけど・・・ほかのこともしてみたら?」


私「たとえば?」


母「・・・あなたは運動は向いてないわよね・・・音楽とか絵を描くとか」


私「音楽をきくのはすきだけど・・・演奏は・・・オンチだし・・・」


母「週末美術館にいかない?今絵の展覧会をやっているらしいの」


私「絵か・・・どうしたの急に?」


母「今まであなたの相手をしていなかったと思って」


私「いまさら?」


母「親孝行だと思ってつきあいなさいよ」


私「・・・うん」


私の父と母は2人とも仕事が好きな人だった、小学校の4年生くらいからは家にいつも一人でいたような気がする・・・、本と好きなCDとTVが友達、そんな子供だった。


友達はいなかったわけではないけれど、人とのコミュニケーションよりも本を読んでいるのが、音楽をきいているのが、スキだった・・・


どちらかといえば、苦手なんですよね、人のにおいが・・・


高校に入って部活の選択に困っていた週末、母からの提案でした。


電車で移動中


私「お母さんって絵わかるの?」


母「は?ぜんぜん」


私「ん?」


母「素人が見ていいものはいいし、素人に伝わらないならその程度の絵ってことよ」


私「そうなんだ」(すごい上から目線な素人だな・・・)


母「そういうものよ、わかる人にわかればいいなんて、能力のない人間のセリフよ、どうせなら、みんなに感じてもらいる物をつくらないとさびしいじゃない」


私「うん、そういわれると、説得力はあるけど・・・」


母「でも、万人受けするものってすぐに飽きられるからクリエイターって大変よね」


私「それって、矛盾してない?」


母「わかる?」


私「・・・」(つかみどころのない人だな・・・)


美術館に入ってゆっくり歩きながら見て回りました。


母「なにかやりたい部活でもあるの?」


私「・・・とくにないかな、文芸部に登録だけしようかと思ってた」


母「じゃあ、美術部でもいいじゃない?」


私「・・・なんで」


母「新しいことを始めると違う世界が見えるかもよ」


私「・・・うん」


横にいるとほのかにかおる母の香水のにおい、変わらないな・・・「アイリス」の香っていっていた記憶があるけれど・・・いいなこのにおい・・・


風景画の前に来た時


母「きれいねこの絵」


私「うん、どうやったらこんな風に描けるんだろう?」


母「あなた書いて私に見せてよ」


私「・・・ムリだと思う」


その絵には光と影がとても綺麗に描かれていいました。


光が本当に光っているように見える不思議な絵です。


私「でも・・・描けたらすごいよね」


母「他にやりたいことがなかったら、チャレンジしてみたら時間はたくさんあるんだから」


私「・・・そうだね」


そんな経緯で私は美術部に入部することにしました。

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